無縁遺骨の記事が続きましたが、本日の日経にはおりしも安い直葬が急増という記事が出ていました。アンケートでは葬儀の中で直葬が14年度には14%を占めていたという報告もあります。引き取り手がない、費用がない、といった理由のほかに、葬儀に意義を見出せないという方もおられるようです。日本人の死生観が問われています。
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日経新聞2017年09月25日

 

 浜松市北区にある無縁納骨堂。天井まで届くスチール棚に677の骨つぼが並んでいた。孤独死して引き取り手がない遺骨のほか、コインロッカーや高速道路のサービスエリアに放置されていた骨つぼも含まれる。

 引き取り手がなく、自治体が保管する遺骨が全国で増えている。浜松市もこうした遺骨の扱いに悩む自治体の一つ。


 納骨堂にたどり着く遺骨は2006年度に48柱、10~14年度は70~93柱と増加。15年度には累計1000柱になった。
 

 市の福祉総務課の伊藤和之さん(47)は「納骨堂に入りきらなくなる恐れもあった」と振り返る。15年、安置後5年が経過した508の骨つぼからそれぞれ一片を取り出して2つの骨つぼにまとめ、残りの大半は処理業者を通じて大阪府の霊園に納めた。
 

 しかし、16年度には持ち込まれる遺骨が100柱を超え、あと2~3年で再び「処分」しなくてはならないという。
 

 死後、自分の遺体を医学の研究のために提供する献体。日本篤志献体協会常務理事の松村譲児・杏林大医学部教授(64)は「遺骨の引き取り拒否がここ数年で増えている」。

解剖後は火葬して遺族に返すのが決まりだが、杏林大では年間10柱前後が遺族の元に帰れない。「墓がない」「葬式を出す金がない」といった理由がほとんどだ。


 「やさしい信仰史」などの著書がある、ジェイアール東海エージェンシーの佐々木和歌子さん(44)は

「遺骨をまつるには、お金と墓の継続的な守り手、そして故人への思いが必要。地域の結びつき、家族関係が希薄になった現代ではそのいずれもが不足している」

と、行き場を失う遺骨が増えた要因を分析する。
 

 異変は葬儀の形にも。通夜も告別式も行わず、火葬場の炉の前で僧侶が読経するだけの「直葬」と呼ばれるスタイルが急増中だという。
 

 葬儀の総合情報サイトを運営する鎌倉新書(東京・中央)が国内約200社の葬儀社を対象に葬儀の形態を調査したところ、10年ほど前までほとんどなかったとみられる直葬が14年には16%を占めていた。費用は10万円台が中心。通夜、告別式をする場合の2~3割で済む。
 

 佐々木さんは「世間体が重視されるあまり、葬儀が肥大化してきた面がある。身の丈にあったやり方を選べる時代になったともいえる」。
 

 東京都江戸川区の証大寺は都内の葬儀社から月2~3回ほど直葬の依頼を受ける。費用面だけではなく「葬儀に意義を見いだせない」と直葬を選ぶ人も目立つようになったという

同寺の井上城治住職(44)が憂う。「葬儀は死を受け入れる大切な場。火葬して終わりでは遺体処理と変わらず、大切な人の死を悼む心まで失われてしまう」