第六話 ② | 小説・混雨 【まじりあめ】

小説・混雨 【まじりあめ】

学生時代に制作した映画の小説。カナダ・バンクーバーを舞台にしたストーリー。

「甘いな、これ、、」


初めて頼んだカフェモカの甘さに少々失敗したと思いながらも、オープンカフェになった席に腰を下ろし、圭介の話を反芻した。


「俺のほかに5人仲間がいてな、、みんなそれぞれ趣味や性格なんて異なってるんだけど、不思議と仲が良かったんだ。歳が同じってのもあるしな。で、そいつらとさ、いつかまたネルソンに帰ってきてみんなの夢叶えようって、約束したんだ。そん時俺は郵便屋さんになりたくてな。みんなに大事な手紙届けてやるって、、」

そういってあの日、圭介は自分以外の仲間達のことを話し始めた。これから太郎が会うべき人間達だ。

「まずは、、星子。あいつは昔から歌が大好きだった。ほんとにうまくてさ。いつも歌ばっかり歌ってた。次に、真己。真己は写真が好きでな。いろんなネルソンの風景写真を撮ってきて、、。あいつの撮る写真は、実際の風景より良く見えてな。そりゃあすごいもんだったよ。それから逸平。あいつはちょっと気が弱いんだけど、でも優しくてすげえ良い奴だった。それから、伊佑。ネルソンにたくさん人が来るようにって、ホテル作りたいって言ってた。」

何かとてもよかった思い出を思い出しているように、圭介は話した。

「最後に、、、」


少し間をおいて圭介が再び話し始めた。

「茶子。ネルソンにカフェを造る。みんながいつでも集まれる、そんな空間を造りたいんだって言ってた。」

「へぇ~、なんか何の脈略もないような関係に聞こえるけどな、ほんとに仲良かったのか?」

太郎は軽口を叩きながらも、どこか懐かしい思い出を語るような圭介の横顔を羨ましく思ったし、わずかながらの嫉妬も覚えた。自分にはいない。そんな思いがまだ根底には深く残っているのかもしれない。


圭介もそんな太郎の態度を感じとったのか、友達の話はそこで打ち切りとなった。

「でも、無理しなくていいからな。ゆくゆくは自分でみんなを探そうと思ってたし、それに、せっかく出所するのに俺の私用を頼んじゃあ悪いからさ。暇ができたら、でいいからな。」

と圭介は言った。

「気にすんなって。何度も言わせるなよ。俺はほんとに出所したらやることがないんだよ。昔みたいにどうしようもねえゴロツキに戻りたくないしな。なんか探偵みたいで面白そうだしよ。」

自分でも良くわからないが、太郎はこれから起こる何かに気持ちが高まっていた。それが新しい誰かとの出会いに対してなのか、新しい生活に対してのものなのか。はたまた人のために何かを成し遂げようとしている自分に対してのものなのか、太郎にはまだわからなかった。


ただ一つだけ言えることは、昔の俺じゃないってことだけだった。


「よし、手始めは誰からいくかな。しかし甘すぎて飲めねえなこりゃあ。トールなんて頼むもんじゃねえや」

太郎は半分以上残ったカフェモカをゴミ箱へ捨て、ロブソンストリートを歩き始めた。