HK side

 

 

 

『ヒョクチェくん!ヒョクチェくん!』

 

ん...遠くで声がする。まるで...水の中にいるみたい...身体の隅々に。波打つように行き渡る。くはぁ...ぺちぺちと、ほっぺたを叩かれる。いたぃ...うす目を開けると、ドンへさんのどアップがあって

 

『わぁぁぁ』

 

ち、ちょっと...とびおきた、肩をつかまれる

 

『大丈夫?』

 

心配そうにのぞきこんでくる。眉毛を下げて。なんか...わんこみたいだな...

 

そうだ。俺...波かぶって...沈んで...あの人魚は...ドンへさんだったのか...

 

『ごめんね。俺がついてたのに...』

 

いえ...あれは不可抗力だろう。ドンへさんが、側にいてくれたから。すぐに助けてもらえた

 

『痛みはない?頭とか。胸が苦しいとか』

 

んー...とりあえずは...

 

『近くに診療所があるから。行こう』

 

立てる?え...あの...何ともないですけど...

 

『俺が心配なの』

 

タオルで。頭とか顔とか、やさしく拭いてくれる。診てもらって。問題なければ。安心だろ。あ、はぃ...

 

『乗って』

 

広い背中を向けられて。あの...でも...

 

『いいから』

 

早く。はぃ...ありがとうございます...大判のタオルに包まれたまま。ドンへさんの背中に、覆いかぶされる。よいしょっと。ちゃんとつかまっててね。ドンへさんが。足場の悪い砂浜を。ゆっくりと、踏みしめるように歩きだす。鍛えられた背中は。アツくて。固くて。やたらどきどきして。ドンへさんに変に思われたくなくて。少し、身体を離した

 

 

 

《つづく》

 

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※きのーの更新です