『なぁ。何か、泣き声しなぃ?』
泣き声?ぬいぐるみの言葉に、耳をすませてみると。確かに、どこからか。すすり泣く声が聞こえてきます。ぅ...少しこわかった青ずきんちゃんですが。ぬいぐるみの手前。勇気を出して、のぞいてみました。すると
『あ...』
木のうろに隠れるように。青ずきんちゃんより一回り小さい、頭に桃色のずきんをかぶったうさぎが。座りこんでいました
『どうしたの?』
迷子?青ずきんちゃんが、やさしく声をかけると。こくんとうなづきます。泣かないで。小さな頭をなでると。泣きはらした顔を上げました
『お名前は?』
『ももちゃん』
えぐえぐとしゃくりあげながら、答えます。ももちゃんだから桃色のずきんなのか、桃色のずきんだからももちゃんなのか。青ずきんちゃんは。細かいことには、余りこだわらない性格でした。あ、そうだ
『これ、食べる?』
食べたら。涙が止まるかも。カゴからお菓子を出して。ももちゃんの前に、差し出しました。ももちゃんは、ハートのお口をあーんと開けて。ぽりぽりと小気味いい音をさせながら、咀嚼します。おいしそう...つられて、青ずきんちゃんも。そのお菓子を口に放りこみました
『わ。おいし』
ひとつ取っては、ももちゃんの口に運んで。またひとつ取っては、自分の口に入れて。を。繰り返していたら
『おい。食いすぎだろ』
ハルモニへの届け物じゃないのか。あ...そうだった。突然、ぬいぐるみがしゃべったので。ももちゃんは、目を丸くしました。あ、どうしよう...また泣いちゃうかな...心配した青ずきんちゃんでしたが
『あなた、おしゃべりできるの!』
ぬいぐるみを両手で掲げて。にっこりと笑いました。どうやら不思議なフォルムのぬいぐるみを、気に入ったようでした
『まだ、少し歩くけど。一緒に来る?』
うん。ちゃんと歩ける?うん!自信ある?あるよ!ちゃしにっそー!
『じゃぁ行こう』
ももちゃんは、片手にぬいぐるみを抱きしめて。もう片方の手を、青ずきんちゃんとしっかりつなぎました
《つづく》
※きのーの更新です