ウニョク王女が華麗に舞う姿に。王子は釘付けになりました。静寂の中。ウニョク王女の、軽やかな足音だけが響きます。何も流れていないのに。まるで、音を奏でているように。光を纏い、空気を分けて。跳躍し。くるりと回って。しなやかに揺れる身体に。のばされる手足に。ウョク王女の中で、流れているはずの音楽が。ドンへ王子にも、聴こえてくるようでした


あれは...既視感に囚われた王子は、思いだしました。あの日。蝶を追いかけていた、ウニョク王女の姿を。王女の動きはまさに。無邪気に蝶を追っていた、あの姿そのままでした。ウニョク王女に見えているであろう、気まぐれに羽を羽ばたかせる蝶の姿が。ドンへ王子にも、確かに見えていました


あ、捕まえた...あの日とは違い。その手に蝶を止まらせて。ウニョク王女は、ふっと息を吐きました。細い指に止まったはずのその蝶が。ドンへ王子には。指輪のように見えました


ドンへ王子は、覗いていたことも忘れ。盛大に拍手をしていました。はっとしたウニョク王女が、慌てて隠れようとしますが。何もない広間です。隠れるところなどありません


『待つのだ』


すばやく駆け寄った王子に。容易く捕まってしまいました。何故、逃げる。その胸には。長髪の鬘が抱かれていました。見ると。まとめているように見えたその髪は。綺麗な栗色の短髪でした


『お、お許しを...』


目元を赤くして。何をだ。許しを請わなければならぬことなど、なかろう。ですが...


『見事な舞踊であった』


王子の言葉に。ウニョク王女が、潤ませた目を見張ります。あ、有り難きお言葉...


『もう一度。舞ってくれぬか』


え...はじめて見る、ドンへ王子のやさしい微笑みでした


『喜んで』


ウニョク王女は。ドレスの裾を摘んで、優雅に一礼すると。ひらりと、広間の真ん中に踊り出ました



《続》


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※画像お借りしましたm(_ _)m

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