『はーぃ!ヒョクの負けーーー』


ドンへがうれしそーににやにやと。シンドンヒョンとのバンスバトルなんて、勝ち目はないんだ。正攻法ならともかく、何でもありの、パフォーマンス対決なんて


『はぃ。罰ゲーム』


にっこにこで手渡されたのは、カットしてマンゴーが入っているパックで...


『手を使わずに食べること』


はぁ!?何だそれ!はぃ、しーじゃっ!何でそんなたのしそーなんだよ...しぶしぶ蓋をあけて...顔をつっこんでみたけど、意外とすべって食べづらぃ...しばらく格闘して、よーやく一欠片つかまえて。うん、なかなかうまいな...


『いってぇぇぇぇぇ!』


や、やめろ!何すんだよ!誰だよ!ドンへが突然、叫ぶから。びっくりして顔をあげると、シウォンが仁王立ちして。ドンへの腕を捻りあげていた。離せ!身長差があるから、浮いた足をジタバタさせている


『俺だよ』


どさっとドンへを床に放りだして。悪ふざけもほどほどにしろ。打ったのか、頭をさすっているドンへを尻目に、無言で俺の手をひっぱる


『え...何...シウォン!』


かろうじて、すれちがった誰かにマンゴーのパックをあずけて。何も答えずに。早足で歩くから、足がもつれそーだ


『し、シウォンってば』


痛いよ...よーやく声が届いたのか、立ちどまって。掴んでいた手を離してくれた。すごい力だな...手首があかい


『ごめん...痛かったか?』


手首が掴もうとするから、あわてて引いた。大丈夫だよ...自分でさすりながら。シウォンがため息をつく。お前さ...


『自分のかわいさ、少しは自覚しろ』


は!?何いってんだ!?


『かわいーわけないだろ...』


どー見たって...オトコだし...かっこいーわけでもないし...お前...


『あの能天気なチビと比較してんだろ』


脳天気なチビは?あー、ドンへのことか...


『友だちって言いながらダシにするようなやつ、辞めとけよ』


ダシ?何のことだ?知らないのか?これ見ろよ。シウォンがスマホを差しだす。そこにあったのは、さっきの一連の流れの動画だった


『な、何だよ!これ!』


ある特定のカトク部屋に、リアタイで配信されてたらしぃ。必死だったからわかんなかったけど、見様によっては...ちょっと卑猥に見える...


『こんなの...撮って...何がたのしーんだよ!』


観たいやつと喜ぶやつがいるからだろ。呆れ顔で。これ見ながら、抜くやつがいないとも言い切れないだろ。ぬ、ぬくって...拡散されてみろ。食いついてくるやつなんて、山ほどいるんだぞ。そ、そんな...


『あいつはおもしろがってるだけだろーけど...こんなことこっそりやるやつが、友だちとしてお前のそばにいるのは耐えられない』


俺がな。罰ゲームらしいけど、それだって仕組まれたんじゃないのか?そ、そんな...ドンへがそんなことするなんて...


俺が、思った以上に混乱していたからだろう


『少し考えてみろよ』


動画は削除するように徹底するから。シウォンがやさしく俺の頭をなでた



《つづく》



※本日のラインナップ