自身の勉強も兼ねて、扱った症例を残しています。
個人情報は個人を特定できないように、一部変更しています。

70代男性、肩こりがひどくて、じっとしていても苦しく、マッサージや病院に行っても治らず、疲労感が数か月続いているとのことでした。

顔色は黒、目の下にクマができていて疲労感が滲んでいます。

舌は先端が赤、端に凸凹がありました。
脈は安定していました。

触診では肩だけでなく、首、背中、腰、股関節など幅広く緊張感があって、固くなっていました。

これらは姿勢を維持する筋肉で、常に稼働しているので疲労していても意識されにくい傾向があります。

特に左の腎臓の裏あたりに冷感があって、不快な場所のようでした。

腹部では肋骨の下あたりに強い緊張があり、せっかちな体質のようでした。


中医学では「肝実」で、常に神経を高ぶらせていることが全身の緊張を生じさせているようでした。

他にも肺虚(中医学では呼吸と血液循環を担当しています)による心臓の弱りと、年齢から腎虚も少しあるようでした。

思ったよりも重症で、まず背骨にある督脈のツボにハリを当てると背中全体が緩んできました。

そして肺経の尺沢という肘のツボ、足の太衝や太谿、膝の曲泉というツボを取ると、表情が明るくなってきました。

左の腎臓の裏あたりは、右股関節付近に関連するツボが現れていたので、そこにハリを当てると温かくなってきたと話されていました。

最終的に肩こりが消えて体も軽くなったと喜んで下さいました。
漢方は四逆散と八味地黄丸が合いそうです。

ハリがお役に立てて良かったです。

自己治療です。

ドアの所でぶつけたみたいで、人差し指の二つ目の関節、中手指節関節の辺りが内出血を起こして腫れてしまいました。

じわっとした不快な痛みもあったので、治療してみようと思いました。

 

負傷した場所は陽明大腸経というライン上なので、人差し指の先にある商陽の所が反応していました。

この部分にハリを当てると、風が当たっているように涼しさを感じ、痛みが減っていきました。

動かしても痛まなくなったので治療を終え、悪血が残っていそうなので手元にあった桂枝茯苓丸を飲みました。

翌朝はかすかな痛みがありましたが、内出血も薄くなっていました。

 

こういう時は東洋医学があるとありがたいです。

 

最近は急激に冷え込んで、咳をする人、マスクをする人を目にするようになりました。

その咳に効く漢方薬について尋ねられたので、ここにまとめてみます。

 

漢方薬は現代医学とは異なる理論で作用し、咳にはけっこう効果があります。

色々と種類があり、咳の種類や体質に応じて該当するものを選んでいきます。

 

大きなポイントを始めにまとめます。

風邪の初期に出る咳には、「麻黄」が入った薬を使うことが多いです。

風邪の中期以降の咳だと、「柴胡」が入った薬。

喉に痛みがあり、喉が渇き、痰なども出る咳には「桔梗や石膏」が入った薬。

水が絡むような咳や水っ鼻が出るような咳には、水を作り出す胃腸にある水をさばく「半夏や陳皮」が入った薬。

風邪が治った後にも乾燥して咳が出る場合には、潤す働きのある「麦門冬や地黄」が入った薬。
どの薬の場合でも、喉のあたりの緊張を緩める「半夏厚朴湯」もセットにして使うと効きやすくなります。

* 激しい咳
風邪の初期で発熱して激しい咳発作があるなら、気道を緩める麻黄剤です。

一般的なのは麻杏甘石湯、咳が激しいなら五虎湯、子供なら神秘湯です。
麻黄がきつく感じるなら、苓甘姜味辛夏仁湯です。

* 水っぽい咳
肺や脾に水が溜まると、喉や鼻に上っていって咳や鼻水になります。

この水を何とかするために、製造元である脾に溜まった水をさばいて咳を止めるというものです。
小青竜湯などです。

* 喉が渇いて乾燥した咳
風邪が治った後に乾燥した咳が続く時に使います。
昼に出る咳には麦門冬湯、夜の乾燥咳には腎という部分に働く滋養降火湯などです。

* アレルギーや遷延期の咳
風邪が中期以降になって胃腸の調子がわるくなりかけた時や、生来アレルギーがある人の咳には柴胡が入った漢方を使います。
子供の咳には神秘湯、風邪が長引いて微熱があって夜眠れない時の咳は竹茹温胆湯、アレルギーがある人の喘息咳には柴朴湯が使われます。
慢性気管支炎は清肺湯です。

 

鍼灸だと、肺に関連するツボや、体を温めて風邪を払うお灸や、胸や喉の緊張を緩めるツボを使います。

東洋医学は咳に意外な効果がありますので、機会があればぜひ試してみて下さい。

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40代男性、前日の夕方、急に冷えた中を薄着で出かけていたら、帰ってから右脇下がピリピリするような痛みが現れた。

翌朝になっても治らないので、不安を感じているとのことでした。


触診すると痛みは右脇の下にある前鋸筋のあたり、実際はその後ろにある肋骨の間にありました。

筋肉痛のような緊張した感触はなく、神経の軽い炎症のようでした。

この筋肉に反応のでない異常は触覚では感知しにくく、意識的に鍛錬したいと考えています。

腕を動かしても痛まず、患部に圧を加えた時やベッドに手をついた時に少し痛むとのこと。

場所柄、帯状疱疹の可能性もありますが、帯状疱疹の既往はなく、皮膚に目に見える変化も出ていませんでした。

脈は弱く、ゆったりとして、沈んでいました。
舌は色はきれいですが、少しポッテリして、端に歯の後がギザギザに刻まれていました。
疲れ気味ですが基本的には健康、耳下のリンパは両側が固くなっていて風邪ッ気がありそうでした。

 

中医学では風寒の邪気に当たって、血流が悪くなっているようでした。

このような場合は、体の各部位に応じて、温めて水を流すような治療を行います。

右腰のあたりと、右肘あたりにのツボにそれぞれハリを当てると、痛みが半分以下に減って鈍痛になりました。

こうした神経系の痛みは、ハリの即効性は筋肉系の痛みに比べると効きが遅くなります。

ただ時間差があっても、このまま治っていくと感じました。

体の冷えが強いので、首下の大椎に軽くお灸をして治療を終えました。

また漢方薬は、胸から背中を温める「当帰湯」が良さそうだと思いました。

 

その後連絡がありました。

帰宅したあたりで痛みは違和感程度になり、翌朝は完全になくなったとのことでした。

鍼灸がお役に立てて良かったです。

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60代男性、右足首の外くるぶし付近をしょっちゅう捻挫していて、歩くときに不安定な感じがする、とのことでした。

 

患部を触診してみると、左足と比べると冷え切っていて、外クルブシ付近で骨が少し飛び出た部分、腓骨筋やフクラハギの筋肉に緊張した部分と弛緩した部分がありました。

 

以上のことから、最初に足首をひねった時に不完全な形で治癒したために、骨に小さなズレ=亜脱臼が生じ、筋肉の引き攣れと弛緩が生じて、構造が不安定になっているようでした。

中医学では、負傷した患部に瘀血という血流の循環不全が生じていると考えられそうです。
 
ハリを足首からふくらはぎまで当てると、飛び出ていた骨が引っ込み、それと共に引っ張られた筋肉は緩み、緩んでいた筋肉に弾力が出てくるのが感じられました。
血も巡ってきて足が温かくなってきました。
試しに歩いてもらうと、右足が軽くなり、安定感が以前とは違うと話しておられました。
漢方は血を流す治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)というのをしばらく飲むとかなりよくなると感じました。

 

鍼灸がお役に立ててよかったです。