年末年始に風邪を引いたので、東洋医学で自己治療してみました。

今回は中々苦戦し、鮮やかに治癒とはいきませんでした。

 

初日

夜に何となく違和感がありましたが、まだ元気でした。

喉に軽い違和感があり、首を後ろに倒すと固くなっていて倒しにくく、肩もかなりこっていました。

舌には異状がなく、脈は微かに浮いていました。

寒気はなく、汗は出ていませんでした。

初期の風邪である「太陽病傷寒」と思ったのですが、ちょっと定型の型とは外れている気がしました。

葛根湯」を飲み、首下の「大椎」と肘にある「尺沢」にお灸をしたらポカポカしましたが、汗は出ずじまいでした。

そのまま寝ました。

 

二日目

夜は寝苦しくて何度も目が覚め、朝起きると明らかに悪化して起き上がるのもおっくうでした。

寒気があるものの体温は36.7度、布団をかぶると暑すぎて剥ぎ取りたくなるという熱感で、この時点では葛根湯が合いそうなイメージです。

再び「葛根湯」を、今度は二包飲んで布団をかぶると、そのまま寝落ちしました。

昼過ぎに目覚めましたが、このときも汗は出ませんでした。

この日は一日中布団の中にいて、起き上がることも、食事をとることもできませんでした。

夜は漢方薬を飲みたい気分にならなかったので、そのまま寝ました。

 

三日目

夜は悪夢を見て何度も目ざめ、それでも目が覚めると少しマシになっているような気がしました。

脈は回数が多くて強く、お腹は脇の方と腹直筋の両方が痛く、食欲も全くないので、少陽病という段階に移行しているように思いました。

「柴胡桂枝湯」を飲むと、初めて汗が出て体がラクになりました。

それからリンゴを少し食べられるようになり、午後にかけて回復していきました。

短時間なら起き上がれるようになったので、少しハリをしてみることにしました。

頭が痛く、背中が苦しく、腰が重だるい状態で、仰向けに寝ることが苦痛でした。

手が回らないので直接背中の治療点を探ることはできないので、手足の反応点を探りながらマーキングして粒ハリを張り付けていくと張りが取れて仰向けになれました。

夕方は買い置きしていた年越しそばを半量食べたら気分が悪くなったので、そのまま床に就きました。

 

四日目

夜は悪夢を見ることはありませんでした。

目が覚めると背中の張りもなく、普通に起きることができました。

少しふらつきはありましたが、ちゃんと行動できる有難さを実感しました。

脈は平脈、舌はやや赤く、苔は多めでした。

回復過程にあると思ったので「補中益気湯」を飲みました。

この日は少し動いたら横になりたくなるような疲労感はあるものの、不思議な気持ちよさがありました。

肌のハリがつやつやして、背中全体がスッキリしていました。

食事は日中に梨を少し食べ、夕食は年越しそばの残り半量をおいしく食べました。

 

五日目

寝起きは通常通り、少し火照り感はあるものの平常に近い状態でした。

脈はやや弱め、舌は先端のみ赤味、お腹の異常はほぼ消失。

疲労感はまだあって、階段を上るとやや動悸を感じました。

少し痰が絡む咳が出たので、肺の熱を取る「清肺湯」を飲みました。

爽やかな苦みを感じておいしかったです。

飲んでまもなく体がしゃんとして、咳が止まりました。

今回一番ピシっと効いた漢方薬だと感じました。

 

今回の風邪はちょっと考えさせられました。

ちょうど一か月前にも引いたばかりで、生命力が落ちていると感じました。

原因で思い当たるのは、食事のとり過ぎです。

鍼灸や漢方も大切ですが、「養生を優先させること」を新年の誓いにしました。

 

遅くなりましたが、本年もよろしくお願いします。

 

何だかバタバタしていて、なかなかブログが書けませんでした。

今日はよく尋ねられる、痛みについての漢方薬を書いてみます。

 

中医学の世界観では、痛みとは「何かが滞った時」に生じると考えています。

何かとは、気、血、水です。

では、部位ごとに挙げてみます。

 

●首・肩の痛み

この辺りが急に凝ったり、痛んだりした時には、葛根湯という薬を使います。

風邪薬で有名ですが、風邪が入り込むとされる首、肩の気や水の循環を良くしてガードを固めます。

この作用に注目して、首・肩の凝りや痛みにも効きます。

疲労感もある時には、補中益気湯という薬も追加します。

顔の火照りもあるようなら鉤頭散という薬の方が合うかもしれません。

 

●五十肩

関節の痛みは、中医学では風・寒・湿の3邪が集まるためだと考えています。

そのため温めたり、散らしたりする薬が選ばれます。

五十肩ではニ朮湯や桂枝加苓朮附湯など、水の循環を改善する薬が候補です。

 

●こむら返り

フクラハギの筋肉が攣った場合です。

夜に起こることが多いですが、筋肉痛を伴って日中にも生じるありふれた症状です。

これは漢方の独壇場で、芍薬甘草湯という有名な薬があります。

筋肉の緊張を速やかに緩めて、痛みをとります。

私も使ったことがありますが、驚くほど早く効きます。

ただし、これは長期に使うと副作用が出ることがあるので、なるべく早く原因となった部位を治療します。

血が足りないなら四物湯、高齢の方だと六味丸や五苓散などが候補になります。

 

●腰痛

腰痛にはいろいろな原因が考えられるので、意外に薬選びが難しい痛みです。

急性だと、筋肉を緩める芍薬甘草湯と、体を温めて詰まりを取る五積散などを選びたくなります。

原因に思いを馳せ、血流が悪そうなら疎経活血湯、水が滞ってそうならヨクイニン湯、胃腸が悪そうなら安中散、高齢者なら八味地黄丸などを考えます。

 

●膝痛

脾と呼ばれる消化に関係する場所で水が滞り、膝まで水が降りて痛みや腫れが起こると考えられています。

足に溜まった水を流す防已黄耆湯、膝が熱く腫れているなら熱のある水を流す越脾加朮湯などが使われます。

 

症例や診断のことなど書きたいことがたくさんあるので、徐々に書いていこうと思います。

 

 

 

 

 

今週22日(日)に開催の上賀茂手づくり市はお休みします。

温度が下がり過ぎると、屋外での治療に影響が出るためです。

 
嵐電帷子ノ辻駅前のサロンでは、月・水・木に引き続き治療していますので、何かありましたらプロフィールの連絡フォームをご利用下さい。
適応は、痛み全般、疲労、原因不明の不調などに対応しています。
過去の症例が参考になると思います。
 
手作り市での体験治療は、来年も不定期で開催予定です。
よろしくお願いします。

自身の勉強も兼ねて、扱った症例を残しています。
個人情報は個人を特定できないように、一部変更しています。

60代女性、数か月前に全身麻酔を伴う臓器手術を受けてから、左腕に痺れが出ている、とのことでした。

手術は腕と関係のない部位で、病院では腕の骨や神経には明確な異常はないと診断されているとのことでした。
シビレが出ている部位は、肘より先で掌側に広がっていました。


顔色は日焼けして黒く、健康そうな感じです。

やや不安感を滲ませていましたが、健康面では問題がなさそうでした。

触診すると、腕全体の橈骨側から脇・胸にかけて強い緊張がありました。

おそらく、初めての手術で緊張感を感じて体を緊張させて神経を圧迫、それが解けないまま今に至っていると感じました。

人はストレスを受けると特定の部位を緊張させる傾向にあります。

多くはそのまま緩みますが、トラウマレベルの出来事があると長く緊張が解けないままで神経痛、フラッシュバックなどメンタルの不調を引き起こすことがあります。

 

ハリを合谷、手三里、 肩ぐうなどに当てると腕の緊張が緩んでいきました。

患者さんに確認してみると、シビレは半分くらいになっているとのこと。

十分に体が反応したので、背中を中心に全身を整えて治療を終えました。

痺れは回復すると思いますが腕の緊張が強いので、もう少し治療を受けた方がよいように感じました。
 

漢方は精神の緊張を緩める四逆散と、筋肉の緊張を緩める芍薬甘草湯というものが合いそうでした。

セルフケアとしては、今日使ったツボの合谷と手三里、あと足の太衝というツボにお灸をすると良さそうでした。

 

ハリがお役に立てて良かったです。

狙っていたスピーカーが安くなっていたのでスピーカーを新調しました。

治療室用ではなく、お灸教室など広い部屋で使うためのものです。

Harman kardonのLunaというモデルです。

上品で自然な音が出るスピーカーで、500mlのペットボトル程度の大きさですが40Wも出ます。

治療室で使うと近所迷惑で苦情が来そうですが、ホールなどで使う時には心強いパワーがあります。

これで活動の幅も広がりそうです。