花粉症

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30代、女性、毎年花粉症で悩まされている方です。

花粉症は、東洋医学では「外から来る風寒の邪気で皮膚を覆う衛気が乱された」と考えます。

衛気を支配しているのは肺、肺は脾から水をもらって潤いを保っているので、こうした機能が乱れて胃腸や鼻に水が溢れているとしています。

 

鍼灸では脾や肺を整えて水が流れるようにし、同時に肝という部分を通じて自律神経を整えます。

漢方でも脾や肺を整える薬を選びます。

代表的なのは小青竜湯、あるいはその変方である麻黄附子細辛湯などです。

 

この方も鍼灸と小青竜湯でコントロールできていました。

しかし今年は薬を飲んでも半日くらいしか効かず、小青竜湯を飲み続けると胃がもたれるということでした。

小青竜湯は麻黄という生薬が含まれていて、胃腸の弱い方が続けるのはつらいものがあります。

体の芯に冷えがあることから、「真武湯」を勧めてみました。

これで症状が比較的、安定しているとのことでした。

 

最近は体が冷えている人が増えているように感じています。

冷えとは「生命力が落ちていること」で、世代間で見ると昔の世代よりも若い世代の方に顕著に感じます。

今後は従来の処方では効きにくくなり、脾を温める人参や腎を温める附子などを加えて調整する必要があるのかもしれない、と思いました。

 

奥深い気の世界

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最近、気のことをよく考えるので、少しここで整理してみます。

以前にも書いたように、私が治療で使っているのは「人体を流れる気」です。

気というと、目に見えない風のようなもので、エネルギーを宿している未知の存在です。

気配のように感じる程度の、ささやかなものだと理解していました。

しかし、実際に気を「物理的に扱う」人々と接する機会があり、もう少し物理的な存在もあるのかもしれないと思い始めました。

 

一人目は治療家です。

不調の原因となっている気を手のひらで感じ、それを手で集めてポイポイ捨てる、という治療をしていました。

はたから見るとシュールな光景のようですが、実際に治療効果を実感しました。

 

二人目は武道家です。

中国拳法には聴勁という技術があります。

皮膚の感覚を鍛えて、少し触れただけで敵の攻防を知覚できるという技術です。

上達すると、敵に触れなくても攻撃を知覚できると話していました。

その方法は、気を養い、自分の周囲に手を動かしながら気の結界を作るというもので、物理的な感じでした。

 

三人目も治療家です。

掌の感覚を鍛えると、体の悪い所に近づくとピリピリとした気感を感じるとしていました。

その場所を通過する経絡とツボを選び、ツボから気を流すと治療できるというものです。

 

私自身は気功のような物理的な気を治療対象にはしていません。

しかし手が温かくなって、患者さんに触れる時のアタリが柔らかくなるので、気功の訓練のようなものはしています。

掌同士を近づけていると、ピリピリした感覚や風のような涼しい感じがし、指先からわずかに揺らぎのようなものが出ているように見えます。

ひょっとしたら私の行っている治療とも何かの関連性があるのかもしれません。

 

気の世界も人体も広大で謎だらけで、知りたいことはたくさんあるのですが、時間が足りない、とも感じています。

無事終了

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手作り市、無事終了しました。

暖かな晴れの日で、たくさんの方に来ていただき喜んでいます。

今回も多彩な症状の方々で、軽い疲労から重い症状、不思議なご縁もあって勉強になりました。

私の感覚でつかみきれない症状の方もあり、もっと努力しないといけないと痛感しました。

また、このような機会を作ってみるつもりです。

 

今回はありがとうございました。

 

鍼灸室

江戸時代の漢方医

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江戸時代の漢方医の本を読んでいます。

この時代の医療は鍼灸と漢方、私と同じような方法で様々な病気を治療していて興味深いものでした。

その中で、漢方医が弟子に向かって語る、次の言葉にドキッとしました。

 

「今の医者は、首が痛んで寒気があれば桂枝湯、胸脇苦満は小柴胡湯、全身が冷えれば四逆湯だ。
 こんな融通の利かない処方で治るわけがない。」

 

これは今でも使われている処方の口訣なので、耳が痛いものがありました。

著者が言いたいことは、書に学びつつも過度に依存せずに、目の前の患者から謙虚に学びなさいということだと理解しました。

 

漢方薬の処方や理解の枠組みは、各治療者ごとに差異があるようです。

上の「小柴胡湯」のような柴胡剤は、私の中では「胸の横隔膜あたりに熱がある時」に使うものだとイメージしています。

風邪が数日経っても治らない時、ストレスでイライラしている時に、肋骨下あたりに緊張感や熱感が現れます。

その広がり具合、体格、症状の問診によって、どの薬を使うかを考えます。

ストレスが強くて手が冷たいなら四逆散、

ストレスに加えて風邪っ気もあるなら柴胡桂枝湯、

熱感が胃腸にも広がって食欲がないなら小柴胡湯、

同じような症状でも体格が良くて便秘などもあるなら大柴胡湯、

イライラが強いなら抑肝散、

疲労感が強いなら補中益気湯

などです。

 

こうしたイメージは経験を積むほど、ボンヤリしたものから具体的な像を結ぶように感じています。

そのため漢方の達人のように鮮やかではなくとも、初学者も初学者なりに効果が出せます。

少しずつ学びを深めていきたいものです。

 

疲労と腰痛

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50代男性、座り仕事が中心で、運動不足で疲れが溜まり、腰も痛いとのことでした。

冷えがあるようなので、背中にお灸をしました。

触れた時の反応点を使っているのですが、ツボだと、首下の大椎、肩甲骨間の身柱、肝兪、脾兪、腎兪あたりが凹んで押すと痛みがありました。

仰向けに寝てもらうと、背中が気持ちがいいと喜んでおられた。

次に腰の痛みは膝裏の委中という箇所にはっきりした痛みとハリがあったので、ここに粒針を貼り付けると痛みがなくなったので治療を終えました。

 

漢方薬は日々の疲労と、暴飲暴食による胃腸の疲れがあるようなので、「六君子湯」が良さそうでした。

前回は「補中益気湯」を勧めたので、違いについて尋ねられました。

このあたりの漢方薬は補剤と呼ばれて、いくつかの種類があります。

私のイメージだと、ちょっと元気がない程度なら「補中益気湯」、これに鬱と火照りもあるなら「加味帰脾湯」、疲労と胃腸の不調なら「六君子湯」、疲れがひどいなら「十全大補湯」、疲れて眩暈もあるなら「半夏白朮天麻湯」です。

 

鍼灸がお役に立てて良かったです。