「漢方でやせる薬はあるのですか?」

と尋ねられたので、私なりの回答をまとめてみます。
基本的に痩せるためだけの漢方薬というのはないと考えていますが、何かが詰まっていて循環が悪い場合は、それが解消すると自然な感じで瘦せていくことはあります。
次のようなものです。

★防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
食べ物の消化が追い付かずに、熱が籠って循環が悪くなっている人に向く薬です。
症状は、赤ら顔で、便秘気味、ニキビやアレルギーがあり、暑がる人に使います。

★五積散(ごしゃくさん)
これも詰まりがあって循環が悪くなった人向けのものです。

防風通聖散と似ていますが、冷えと胃の不調がある点が異なります。
症状は、青白い顔で、みぞおちに痞え感があり、お腹が冷え気味の人です。

★防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
これは五積散と似た症状に使う薬です。

違いは溜まった水が下半身に移動し、膝痛や足のムクミとなって現れれる点です。
症状は、青白い顔で、胃の調子が悪く、しっとりした汗をかいていて、膝痛が出やすいなどです。

とりあえず、パッと思いつくのはこの3つになります。
漢方や鍼灸を使いながら、日常生活を整えていくことも重要です。
具体的には早寝早起き、ストレスをためない、腹八分の3つです。
ありふれていますが、日常生活を整えながら漢方を使うと、健康的に痩せることができるのでお勧めしています。

血虚について尋ねられたので、ここにまとめてみます。

血虚は貧血と似た意味ですが、東洋医学では少し広い意味を持っています。

関係性は「血虚>貧血」という感じです。

 

東洋医学でいう「血虚」とは、本来必要な血が不足し、血の働きが低下した状態です。

血は体を潤す栄養成分です。

そのためこれが不足すると、眩暈や立ち眩みが起こりやすくなり、肌は血色が悪く、皮膚は乾燥して爪は割れ、抜け毛、筋の引き攣れが生じます。

メンタルでは不安感が強くなります。

では、どういう時に血虚になるのかというと、血を消耗する行為が続いた場合、すなわち眼の使いすぎや睡眠不足によって血を消耗します。

 

実際の診断では、先に挙げた見た目のほかに次のような点を注視しています。

舌が薄く、干からびている。

脈が弱く、とがった感じがする。

いわゆる「乾燥」をイメージさせる状態です。

 

現代医学的な意味での「貧血」を感じた時は、下マブタと爪も見ます。

下マブタは毛細血管がたくさん通っている所なので、ここが白っぽいと貧血気味とされています。

見方は「手前の縁部分」と奥の色と比較し、手前が白っぽいなら貧血の可能性が高まります。

体の末端である爪は、酸素が不足すると特有の変形を示します。

爪の部分が太く膨らんでいたり、爪の真ん中が凹んでいると貧血状態だと考えられます。

 

治療では血を補う方法を行います。

漢方薬だと「四物湯」で、体調に合わせて他の生薬を加味した「芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)」や「加味帰脾湯(かみきひとう)」を使います。

ツボだと、胃腸を整えて血を作れるよう太白や足三里、血を整える三陰交などです。

食材だとアサリ・セロリ・黒豆をお粥で摂るのが良いとされています。

 

血虚は女性に多いとされている状態です。

潜在的な不調の原因となることも多いので、当てはまると思ったなら身近な鍼灸師や漢方ドクターなどに相談されてみてください。

自身の勉強も兼ねて、扱った症例を残しています。
個人情報は個人を特定できないように、一部変更しています。

40代女性、最近仕事が忙しくて、寝ても疲れが取れずにつらいとのことでした。
息のしづらさ・食欲不振があります。

顔色は白っぽく疲労感が滲んでいます。舌も白っぽく苔は薄く、端に凸凹がありました。
脈は弱く、胃腸が弱そうでした。

触診では首、肩、背中、腕の付け根に緊張感があって、固まっていました。

中医学では「脾気虚」、すなわち胃腸が弱いと診断されます。
更に夏バテも加わり、十分な栄養が行き渡っていないようでした。

手のツボにハリをあてると、固かった背中や肩が緩んできました。
深呼吸をしてもらうと息がしやすくなっていて、目も明るくなったとのことでした。
足甲の「太白」というツボと、ひざ下の「足三里」というツボに粒状のハリを貼り付けました。
これは胃腸の力をつけてくれる場所です。

セルフケアは、この時期は「清暑益気湯」という夏バテに効く漢方薬、秋以降は「六君子湯」という胃腸を強める漢方薬が良さそうです。
ツボは足三里にお灸をして、体に意識を向けることが第一歩になるかなと思いました。

ハリがお役に立てて良かったです。

明日は手作り市に出店できそうです。
色々な方と出会えるのを楽しみにしています。

今回は私が治療した症例ではないのですが、相談があったので思うところを書いてみようと思います。

小学生の吃音についてです。

幼少期から吃音が続いていて、本人も親御さんも気にしているということです。

専門家にかかってメンタルについての訓練も受けているのですが、完治には至らない。

東洋医学で何とかならないか、ということでした。

 

吃音は、人前や初対面の人と話す時に言葉が出てこず、吃ってしまうという状態です。

原因不明で、成長するに従って治癒する人もいれば、そのまま吃音が続く人もいます。

私は吃音の治療経験がないのですが、夜尿症や小児ヒステリーを診たことはあり、子供には意外なほど強い緊張があることを感じています。

おそらく吃音の場合も、妊娠、出産、幼少期のどこかで、緊張するような経験があったのではないかと推察しました。

その話をすると、今は完治していますが出生時に心臓の弁膜が不完全だったので何度か手術を経験したそうです。

この経験がストレスになった可能性は高いと思いました。

 

鍼灸では過緊張となっている筋肉を緩め、漢方なら柴胡桂枝湯や小建中湯など子供をリラックスさせる薬を使うと良さそうでした。

 

この方は遠方なので私が関与することはできませんが、東洋医学を試す価値はありそうです。

何とか治って欲しいと思います。

〇は痛みが出ていた部分

 

自身の勉強も兼ねて、扱った症例を残しています。
個人情報は個人を特定できないように、一部変更しています。

50代男性、しばらく前から左腕が上げにくくなり、五十肩のような状態になっている。

腕を横に上げる外転が、90度くらいまでしか上がりませんでした。

原因に心あたりはないとのことです。

 

左肩部分に熱感はなく、動きから腱板断裂などもなさそうでした。

触診すると、肩甲骨周辺の小円筋や上腕三頭筋、脇のあたりの筋肉に圧痛がありました。

五十肩、すなわち肩関節の過緊張ということで良さそうです。


治療ではハリを前腕にある「支正」というツボに当てました。

みるみる左腕の緊張が取れてきたのがわかったので、試しに腕を動かしてもらうと180度まで上がりました。


腰は仕事で座ったままの時間が長いことから、循環不全から来た腰痛だと思いました。

腎兪というツボと、左股関節当たりのツボにハリを当てると腰の痛みは消えて歩くのも楽になったと喜んでおられました。

 

左ふくらはぎはスポーツで数日前に肉離れになり、今も痛くて足を上げる動作がつらいとのことでした。

腓腹筋の真ん中から下あたりに圧痛がありました。

熱感はないので治りかけていて、緊張感だけが残っていると感じました。

足首の崑崙というツボにハリを当てると緊張がゆるんできました。

試しに足を上げてもらうと、痛みが微かなものになっていました。

 

体力がある方なのでハリに対する反応が良かったのだと感じました。

ただ年齢も上がっているので、そろそろ養生にも気を向けて欲しいと思います。

漢方薬は、肩の循環を良くする「桂枝加苓朮湯」、筋肉全般の緊張をとる「芍薬甘草湯」があると便利だと思いました。

ツボは今回使った、前腕にある支正という部分にお灸をすると良さそうです。

鍼灸がお役に立てて良かったです。