引用元:日本呼吸器学会さんのサイトより
 


「心機能が低下して胸水があるケース」について尋ねられたので、ここに少しまとめてみます。

胸水は、心機能が低下して血液がさばけずに水が漏れ出たり、肺や心臓の炎症に水が集まったものです。
症状は、心機能が低下しているので動悸が生じたり、肺が圧迫されるので呼吸が風聞にできずに息切れが生じたりします。
この方は病院では経過観察で、利尿剤などを処方されているとのことでした。

レントゲンでは上↑のように写ります。
これは正面から見た図で、黒はX線を通す空気、白は通さない水や骨です。
写真だと左側の肺が小さくなっていて、底面に水が溜まって肺を圧迫していることを示唆しています。
このような場合、病院では利水剤を使ったり、注射で水を抜いたりします。

鍼灸ではこのような場合、滞っている経絡を通すようにツボを使っていきます。
よく使うのは腎を働かせる照海や太谿などで水の動きを作り、あとは胸や背中に強い緊張があるので緩めて呼吸をしやすくします。
漢方だと、胸周辺の水を流す「木防已湯」、余分な水を全般的に動かす「五苓散」、肝機能を強めつつ水を流す「柴苓湯」、体を温めつつ水を流す「真武湯」などが候補になります。
伝統医学は体のこわばりを取り、利水剤が効きにくい状態が改善する可能性があるので、試してみる価値はあると思っています。

背中の痛みと内臓の不調は関係があるのでしょうか?」と質問されました。

私の答えは「関係ないとは言えない」です。

ちょっと痛みについての基本について説明してみます。

 

痛みは色々な角度から考えて、病態を把握するヒントにします。

 

  1. まず痛む場所を「ここ」と指せるなら「筋肉」が原因、「ここ」と指せないぼんやりした痛みは「内臓痛」の可能性が高まります。
  2. 次に痛みの原因です。痛みは「炎症」や「神経が伸ばされたり筋肉が圧迫されること」が引き起こします。
  3. 痛みが増強する要素も重要です。特定の動きで痛むなら「筋肉や骨が原因」、階段を上り下りするような運動負荷で胸が痛むなら「呼吸器系や循環器」、食後に痛むなど食事に関係した痛みなら「消化器や胆嚢」、じっとしていたり夜寝ていて痛むなら「炎症性の痛み」だと予想されます。

痛みについては、問診や触診から上記のことを想像して、治療につかうツボや漢方薬を考えます。

では、実際に症例を考えてみます。

 

たとえば、最近暴飲暴食が続き、右の肋骨下あたりに重だるい感じがする。

夜、寝返りを打ったり、朝、起き上がる時に痛む。

でも起きて歯を磨いたり動いたりしてると痛みが引いていく。

それでも大きく体を動かすと違和感があり、肩こりも辛く、右肩が特に凝る。

 

このケースを考察してみます。

右肋骨下の重だるい感じや肩こりは「内臓の痛み」を思わせます。

寝返りや起き上がり時の痛みは「筋肉性」のようです。これは不調を感じている臓器を庇うように筋肉が緊張したためだと考えられます。

これら二つの痛みは別物ですが、内臓の不調によって連続的に生じたものだと考えます。

そして暴飲暴食と痛む部位から「肝臓の不調」が予想されます。

 

伝統医学ではこうした場合は、次のように治療方針を立てます。

まず筋肉性のものは、その部位に関係するツボで緊張を緩めます。

この場合だと、督脈に近い部分なので、「後谿」とか「申脈」などを使いたくなります。

さらに内臓の不調は伝統医学の「五臓」というものと対応させて考え、脈や舌の状態などと照合してツボを選びます。

たとえば「肝」が原因とするなら、「太衝」とか「曲泉」と「肝兪」などを選ぶと思います。

そして慢性化している場合は、漢方薬をお勧めすると思います。

症状や体力などと併せて考えるので、通常だと柴胡剤と呼ばれる「小柴胡湯」などから考えていきます。

 

ただし、熱が出ていたり、倦怠感が強かったり、白目が黄色くなっていたりしていたら、念のため病院で検査してもらってから鍼灸とか漢方をお勧めすると思います。

だいたいこんな感じです。
 

 

自身の勉強も兼ねて、扱った症例を残しています。
個人情報は個人を特定できないように、一部変更しています。

40代女性、年始くらいから肩に重い痛みがあり、腕を後ろに回すと鋭い痛みがあるとのこと。
中々治らないので気になっている、とのことでした。

実際に腕を後ろに回してもらったところ、右腕の上腕三頭筋、肩甲骨の棘下筋、肩の肩甲挙筋が痛むとのことで、痛みによる可動制限があるようでした。
熱感はなく、頸の動きや腕の降ろす動作も異常はなく、肩の筋肉が損傷した腱板断裂などはなさそうでした。

触診してみると、痛みは上腕後ろの上腕三頭筋、肩甲骨、肩に痛みに特徴的な筋の収縮がありました。
他に、背骨沿いから腰にかけてのハリや、脇に近い所の呼吸筋あたりも張っていて、日常的に強い緊張を感じておられるようでした。

夜は寝返りを打つと痛みで目が覚めることがあり、少し寝不足とのことでした。

 

舌は先端から外側に向けて赤く、端の方はギザギザがありました。

脈はしっかりしていましたが、少し勢いが弱いように思われます。


鍼を掌の後谿というツボ、胸に近い少府というツボに当てると緊張が取れてきて、腕を動かしてもらうと痛みが3割くらいに減ったとのことでした。
他に背中と胸の緊張は、脇のあたりの大包というツボにハリを当てると取れました。

大丈夫そうです。


痛みはこのまま治っていくと思いますが、少しストレスと体の疲労があるようなので、漢方薬で「加味帰脾湯」というものを飲むとよさそうでした。

あと背中から腕にかけてコリやすそうなので、小指のツボ「後谿」にお灸をすると良さそうでした。

鍼灸がお役に立てて良かったです。
 

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70代女性、やや硬い筋肉で中肉中背の方。

朝、布団を押し入れに仕舞う時に、腰をそらした拍子にぎっくり腰になったと,

電話連絡をいただきました。

痛くて起き上がるのが大変で、トイレなどは這うようにして移動するとのことです。

遠方の方なので、私が出張で治療するというわけにはいきません。

 

元々冷えやすい方なので、冷えて血流が悪い部位を、意識の抑制がない状態で大きく動かして筋肉が傷ついた、という感じを想像しました。

漢方で対応できそうで、筋肉を緩める「芍薬甘草湯」を基本に、循環を良くする「麻杏薏甘湯」と「附子」、または「麻黄附子細辛湯」、「桂枝茯苓丸」と「附子」などを想像しました。

手元に「芍薬甘草湯」と「真武湯」があるそうなので、そちらを飲むように勧めました。

その後は昼くらいから動けるようになり、仕事に行ったとのこと。

でも職場がすごく冷えていて夜にまた痛みがぶり返し、漢方薬を飲んだところ、翌朝はまた動けるようになったとのことでした。

 

鍼灸治療ができたらもう少し手っ取り早いのですが、とりあえず落ち着いたようでほっとしています。

筋肉の冷えで間違いないと思うのですが、もう少し経過を見たいなと思いました。

先日から準備していたお灸教室が無事終わりました。

参加者は30-50代の方が10名ほどでした。

 

小さなカフェをお借りして、養生の薬膳プレートを出していただき、お灸教室、簡易治療などを行いました。

今回はお灸を実践されている方ばかりなので、講義形式はとらず、レジメをお渡しして、食事やおしゃべりをしながらお灸もするという気軽なスタイルとしました。

何となく3名くらいずつの方が別スペースに見えられ、簡単にツボの説明をし、実際にやってもらいました。

ツボもその場で私がマークしていくのでやりやすかったようです。

掌のツボにお灸を置くと肩までぬくもっていくのが実感できたり、足のツボにお灸を載せると膝の痛みが薄くなっていることなどを経験していただきました。

 

合間には不調の相談を受けました。

五十肩で腕が上がりにくい、膝が痛い、靴擦れで歩きにくい、腰が痛い、背中が苦しい、眠れないなど働いている人特有の不調があって、それぞれ治療していきました。

この中で一見、元気そうな方なのに、脈が弱く、フクラハギの肉が薄く、背中の胃付近に固く緊張している人がいました。

これらは生命力が低下していると私が感じる兆候です。

尋ねてみると不正出血が続いて病院からは貧血が指摘されていて、胃が痛くて食欲はあるけど太れないとのことでした。

胃がほとんど動いていない印象で、ハリで背中の緊張は取れましたが、漢方も飲んだ方がいい感じでした。

軽い疲労なら補中益気湯などで十分ですが、この方は四君子湯などで丁寧にやっていかないと難しいように思いました。

 

こんな感じで、あっというまに二時間が過ぎ去りました。

料理もすごくおいしいもので、皆さんにも喜んでいただけ、私もうれしい経験となりました。

またこのような企画ができればなと思います。