自身の勉強も兼ねて、扱った症例を残しています。
個人情報は個人を特定できないように、一部変更しています。

80代男性、数年前から背中や腰が痛く、最近は背中のコリが酷くて頭が痛いとのこと。

前回から続いて二度目の治療を行いました。

頭痛や腰痛はあれ以降出ておらず、「胸椎9番目のスジバリ」は半分くらいになっているとのことでした。

咳は「柴朴湯」を飲んでいて、ほとんど出なくなったとのことで、喜んでおられました。

 

今日はスジバリの治療に集中しました。

まず背中の流れを改善し、部位の治療をするとスジバリがほとんどなくなりました。

そして、今回は患部に灸を加えました。

米粒くらいの灸に点火すると、熱いけど気持ちがいいとのことでした。

10壮続けると、苦しさが消えているとのことでした。

お灸が体にあったようです。

 

養生として、この部分にせんねん灸をすること、柴朴湯は咳が落ち着くまでしばらく続けることをお勧めしました。
 

鍼灸がお役に立てて良かったです。
 

 

自身の勉強も兼ねて、扱った症例を残しています。
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80代男性、数年前から背中や腰が痛く、最近は背中のコリが酷くて頭が痛いとのことでした。

かなり以前に腰痛で手術(詳細は不明)を受けたものの腰痛は変わらず、むしろ背中の痛みが加わったとのことでした。

他に2か月前に風邪をひき、治ってからも咳が止まらずに困っているとのことでした。

 

触診すると、背中全体がかなり固くなっていました。

特に、頭、首、肩甲骨、腰、股関節がカチカチになっていました。

背中のコリというのが触診でそれっぽいものがわからなかったのですが、自覚症状を元に探すと胸椎9番目付近の左棘筋に細いスジバリがありました。

 

舌は縮こまり、色が青っぽく、苔は薄い黄色、舌裏は静脈が膨れ気味でした。

腹部は肋骨下と脇付近が固く、押すと痛みが出ていました。

 

症状が色々あって、どれから治療するか悩ましいものがありました。

まず「全体の流れ」を整えるために、督脈の流れを整える後谿と申脈というツボを刺激すると、少し緩んできました。

次に「胸椎9番目のスジバリ」で、関連する部位にハリをしましたが意外に時間がかかり、しばらくハリを当ててやっと緩んできました。

続いて「肩甲骨」で、カチカチに固まっていたので肩井、尺沢、陽池、腕骨などのツボを使うと柔らかくなり、全体の動きが出てきました。

そして「腰」で、復溜、陰谷というツボを使うと緩んできました。

この時点で体が軽くなったと話され、顔色がよくなってきました。

一番きつかった胸椎の痛みは3割くらいになったとのことでした。

高齢で疲労感もあり、あまり無理はさせられないので、とりあえず今日はこの辺にしました。

 

あとは「咳」です。

漢方薬が効きそうで「柴朴湯」が合いそうだと思いました。

これは抜けきらない風邪ッ気を取り、喉の緊張を緩めるものです。

 

とりあえず、以上のような感じで様子をみてもらうことにしました。

鍼灸がお役に立てますように。
 

 

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80代女性、一か月前に転倒して左首を痛めて、今も左に回すと痛い。

また腰が痛くて寝返りを打つ時に左腰付近が痛くてつらい、さらに左股関節も数日前からズキズキいたむとのことでした。

症状は全部左側に出ていて、原因としては転倒時のダメージが大きいようでした。

全体の動きや熱感、食欲・睡眠などは問題がなく、骨折などリスクの高い症状はなさそうでした。

 

まずは「首」を見ると胸鎖乳突筋の左側、左首の付け根付近にハリがありました。

左手の後谿というツボにあてると首が緩んできたので、試しに動かしてもらうと痛みが消えているとのことでした。

 

次に「腰」です。

座った状態で筋肉の緊張を緩めた後、あおむけから横向きになってもらうと、脊椎の左側あたりの脊柱起立筋がまだ痛いとのことでした。

確かに姿勢をかえると座った時にわからなかった痛みの反応が出ていたので、ハリを当てて緊張を緩めました。

試しに横向きから仰向けに体を動かしてもらうと、もう痛くないとのことでした。

 

最後は「股関節」です。

仰向けと横向きで股関節周辺に張りがありました。

こちらもハリを当てるとすぐに緊張がとれて、足を痛みなくスムーズに動かせるようになりました。

 

腹診は胃のあたりに圧痛があり、中心部は力なく盛り上がり、「脾虚胃実」という消化力は強くないのに食べ過ぎているようです。

舌は膨れ気味で、やや白い苔が覆っていました。

舌裏の血管はすこし大き目という感じです。

脈は浮き気味で実がありそうでした。

 

打撲に関しては、瘀血とよばれる血の滞りは大きくなく、ハリで緊張が緩んだので漢方は必要なさそうです。

もし飲むなら「治打撲一方」というのが合いそう。

一方で腹部は胃の問題を示していて、何か飲んだ方がよさそうでした。

全体的な感じだと「防己黄耆湯」ですが、年齢のこともあって簡単には決断が出せず、継続して診た方がよさそうでした。


とりあえず鍼灸がお役に立てて良かったです。
 

 

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足のどこが攣っているの?
40代男性、うつぶせに寝ていて腰痛の治療をしていると、「右足が攣りそうです」と焦ったように叫びました。

「疲れると時々足の甲あたりが攣りそうになり、今までは攣る寸前で治まっていた」とのことですが、今回はひどそうでした。

 

急いで座ってもらい、触診しました。

足の甲を調べると、伸筋と呼ばれる足甲を引き上げるスジに凝りを感じました。

しかしボンヤリした反応でピンとこなかったので、足を調べていくと外くるぶしの斜め下辺り、ツボでいうと「金門」という部分に強い塊がありました。

小指の先にある「至陰」と、この金門というツボにハリを当てると、塊が緩んでいくのが感じられました。

「攣りそうな痛みはまだありますか」と尋ねると「今は消えています」とのことで、腰痛の治療に戻りました。

腰痛の方は比較的簡単に治りました。

 
今回はユニークな場所に「足の攣り」があったので、取り上げてみました。
もし漢方薬なら、予防を兼ねて「八味地黄丸」と「芍薬甘草湯」という薬を持っておくと便利なこと」を伝えました。
 
ハリがお役に立ててよかったです。

 

伝統医学のことを尋ねられたので、少し書いてみます。

日本や中国でいう伝統医学とは、「伝統中医学」が共通のルーツになります。

 

始まりは3000年くらい前に中国で記された「黄帝内経」という古書にあります。

古代の中国人が自然を観察して陰陽や五行という象徴を見出し、人体に応用して気血水や五臓六腑などを定義しました。

伝統医学とは長い歴史をかけて、この本にある概念を解釈・発展させてきたものです。

 

漢方薬のような薬草学は、張仲景という人が「傷寒論」という本にまとめました。

これは黄帝内経の理論で薬を分類し、感染症の症状にあてはめて、どの薬をどう使えば効果があるのかを整理したものです。

日中韓の伝統薬はこの本を基本にしています。

 

鍼灸は黄帝内経の内容をかみ砕いて、脈診やハリの使い方を表した「難経」という本があります。

著者は不明ですが、診断、治療、経絡などの概念をわかりやすくまとめていて、日本の伝統鍼灸はこの本を大切にしています。

 

この後も各時代の学者や医師は、生涯を費やして前代の古書を実践・検証して、その成果を書き表してきました。

その変遷、臨床の過程は残されていて、興味深いものです。

 

こうした伝統医学の知識は、政権による圧迫や時の洗礼を受けることもありましたが、連綿と受け継がれてきました。

しかし1900年代に西洋医学が流入して一時断絶します。

西洋世界は圧倒的な軍事力を持っていたので、彼らの医学に魅了されたためです。

現在伝わっている鍼灸や漢方は、いったん失われた内容を有志が再構成したものです。

 

このような経緯を経ているので、日中韓で実践されている伝統医学は細かな差異はあります。

枝分かれした末流には日本漢方、日本鍼灸、韓医学、中医学などがあり、診断法や治療法、治療薬など異なっています。

それでもルーツである陰陽五行などの思想は共通しています。

 

陰陽五行とは、世界を抽象化して眺めるという思想です。

陰陽は、磁石のプラスマイナス、男女など正反対のもの。

五行は、自然現象を木火土金水に分類したもの。

この考え方を人体にも応用して、循環する要素として気血水、臓器として五行に対応する肝心脾肺腎などの臓器を想定しました。

治療では気血水が滞りなく流れ、五臓が調和するように導きます。

不調和な場所、流れが滞っている場所を知るために、脈や舌、腹を観察します。

 

たとえばむくんでいる、胸水がたまっているなど「水の停滞」では、原因となるのは水を作る脾、水を差配する腎か、のどっちかなと考えます。

ツボだと脾なら脾経の太白や陰陵泉、腎なら陰谷か照海なんかはどうかな、など。

漢方薬なら脾の痰飲を動かす二陳湯や六君子湯、腎なら部位と年齢から牛車腎気丸がいいかな、などです。

 

伝統医学は広大な世界観をもち、たくさん勉強することがあります。

でも続けていると、各項目が繋がって何か立体のように感じられてきます。

そうすると診断、治療で細かく考えることがどんどん少なくなり、シンプルになってきます。

 

・・・と、伝統医学はこんな感じだと私はイメージしています。

知れば知るほどわからなくなりますが、おもしろい世界ではまっています。