2016年の投稿 加筆修正
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幼い頃 いちばん下の妹が
母の姿見の前で、母の化粧道具で 自分の顔に 化粧を施していた
見つけた姉が 母に告げ口したのか
母 自らが 見つけたのか
「悪事」として見つかった妹は
珍しく、母に 叱られた
三女である妹が 両親から叱られたことは‥‥ほとんど 記憶にない
末っ子だったし、身体も弱かったし
姉たちとの待遇とは 何かしら違っていた
待遇の違いは 叱られないことだけではなく
与えられるおもちゃ も そうだった
ふたりの姉には お人形
末っ子の三女には なぜか おもちゃの車
ふたりの姉には 髪の長い 美しいお人形
末っ子の三女には なぜか キューピーちゃん
なぜか なぜか
あまり いかにも女の子 なものは、末っ子の三女には そぐわないかのように
周りの大人たちから 遇されていた
いつの頃からか
三女ちゃんは 気づいたらしい
「キューピーちゃんじゃなくて、髪の長いお人形が 欲しい」
今にして想えば
女性的な美の表現が 三人姉妹のなかでもピカイチなんだよね
長い間、誰も 気づかなかったよね
その封じ込められたものに気づいたときには、話せたときには
涙が こぼれていたね
その封じ込められたものに気づいたときには、話せたときには
涙が こぼれていたね