「しつけ」 というものに、厳しい父だった
・・・父の想うところの「しつけ」である
ずいぶん身勝手なところのある「しつけ」だった
「悪いとおもったら、ばちん と たたけ
おとうちゃんやおかあちゃんの代わりに 必要だとおもったら、お前がせえ」
と 妹たちに 手をあげることも 許されていた
これが 家父長制度というものだったんだろうか
「おとうちゃん、それは ちがうんじゃないか?
それは 行き過ぎだよね?」
と 心のなかで 何かが言っていたのをおぼえている
それなのに、私は 父のことばを、父から与えられた おかしな権力を
喜んで受け入れていた
・・・とんでもなく いたたまれない
幼心に 「めちゃくちゃなことを言う人だ」と想いながらも
父の懐にいることが 好きだった
夏の夜
クーラーのきいた部屋で、ソファに寝そべって テレビを観ている父のもとへ
みんなが寝静まった頃をみはからって
そっと行き
父を背に寝そべり 一緒にドラマや映画を観た
キングコング
チキチキバンバン
刑事コロンボ
子どもたちは 8時に寝るのがお約束なのに
静かにテレビを観ている父は 機嫌がよかったのか
何も言わず、むしろ喜んでいるように
私をそのままにしてくれていた
歴史ものが好きになったのも
映画が好きになったのも
父の影響なのかもしれない