国産フロイドローズの換装 | Lithium Star

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ちょいといまからフロイドローズについての記事を上げますね。

朝までに公開しますので少々お待ちを。デュフフフ......w

以下、更新内容です~!

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さてみなさん、フロイドローズは好きですか?

自分はここしばらくレスポールの研究に没頭していたので

あまり触る機会がありませんでしたが、キライではありません。


今回仲間のランディーVをお預かりしてフロイドローズユニットを

タケウチ製からゴトー製に丸ごと交換したのでそのレポです。



まずフロイドローズの利点といえば磐石のチューニング。

ナットとサドルでロックすることで狂いをほぼ解消するシステム。

ですが何年も使い込んでいくといくら金属製のパーツでも

磨耗したり痛んで本来の機能を果たさなくなってしまいます。


今回のランディーVに付いていたタケウチ製ユニットも

アームダウン・アップ後全くチューニングが安定せず。

調べてみると

・ロックナットが経年劣化で完全にロックできていない

・埋め込みのアンカーと高さ調整のスタッドにガタが来ている

・スタッドのナイフエッジが当たる部分が偏磨耗している

・インサートブロックがガタつく

など、ほぼ全域でヤレていることが判りました。

それで迷わず候補に挙がったのがゴトー製フロイドローズ。

選ばれたのはこちら。

●GOTOH GE1996T Gold 36mm フロイド本体、36mmブロック

●GOTOH FGR-2 Gold (FGR2GG) ロックナット、41mm幅

本体はブロックの長さによってアームの自由度が変わるので注意。

ロックナットはネジが表と裏のタイプと幅もサイズがあるので注意。



 

まずはロックナットから。

固定するネジの間隔が数ミリ広いので一度埋めて開け直します。

定番はホームセンターで売っているラミン棒ですが

より硬い木材が部屋にあったので埋めてタイトボンドで固定して

ロックナットに付属のポンチ(親切!)で正確に位置を特定して穴開け。

同じく3枚付属する金属スペーサーは今回不使用で済みました。

この辺はできれば使わない方が振動特性は良いはず。




つづいて本体の支えとなるスタッドとアンカーです。

これも今回は木工加工が必要になります。

まず埋まっている古いアンカーを抜くには特殊工具が必要なのですが

裏技で穴の中に細いネジを逆さまに入れてスタッドを回すと

ネジの高さ分だけアンカーを引き抜くことができます。

今回はこれでクリア。

ただしこの方法はアンカーの底面がオープンなもののみ有効。

ゴトー製は後述するとある機構のため底面がふさがっているので

ちゃんとした工具を使って引き抜く必要がありますね。



そして新しいアンカーは画像のとおりかなり大型で

穴の径を10mm→11mmに、深さを21mm→30mmまで拡大します。

ここはできればボール盤で正確に垂直に穴あけをしたいところ。

径が11mmのドリルはかなりトルクがかかるのでボディーの固定や

ハンドドリルを押さえる力も考慮する必要があります。


また通常木工用のドリルは先端が細いネジになってどんどん食い込んで

先に先に進むようになっていてボディーを貫通してしまいます。

今回はそれを防ぎ力を抜けば進むのをいつでも止められるように先端が

細いネジではなく単純な三角になっているドリルを用意しました。



そしてアンカーの位置は1弦と6弦を張ってセンター出しをして

微妙に調整した後、慎重にボール盤で穴あけをしました。

またこの次の新しいアンカーの埋め込みにもボール盤は活用できます。

斜めにならないか注意しながらじわじわと圧入できるからです。

ある程度挿入できたら硬めの木片を当て木にしてハンマーで叩きました。


ゴトー製の賢いところはスタッドボルトに当たるナイフエッジ部分の

6弦側の方が円ではなく平らになっていて精度が甘い場合でも

許容してくれる設計になっているところ。

廉価版のギターなどセンターが狂っているものもあるのでこれは賢い。





さらにゴトー製の賢いところはもう一つあります。

普通は埋め込んであるアンカーにスタッドボルトをねじ込んで固定。

しかしここはチューニングの精度にとってとても重要なパーツです。

そこでわずかなガタもなくなるようにスタッドボルトの内部に

繰り出し式の細い六角ネジがあってほぼ完全に固定できる、

「STUD LOCK」という機構が組み込まれているんです。

実際に完全固定すると音にもチューニングにもすごくいいです。

スタッドの高さをそのままで締めたり緩めたりすると変化が判ります。

これを知らずに使っているオーナーさんもいるのではないでしょうか。

自分も今回初めてこの機構を知って感動したひとりですwww

ゴトー製フロイドユーザーはぜひ一度1.5mmレンチで確認をw



そしてボディー裏にまわってスプリングハンガーも交換。

ここのハンガーを止める大きなネジも角度と間隔がやや狭いので

慎重に修正してから固定します。

また弦アースがこのハンガーのプレートにハンダ付けされるのですが

表面が防錆のためか何か処理されていてハンダが乗りづらいので

ヤスリで少し削ってからハンダ付けします。



そしてとりあえず仮組みしてそれぞれが正常に機能しているか

確認してから残っていたテンションバーをヘッドに付けます。

このランディーVのように廉価シリーズで省略されている個体も

ありますが、ほとんどの場合にはテンションバーが必要です。

理由はナットのロックを締めたときと緩めたときの弦の角度が

変化することでチューニングが変化してしまうから。

これが発生しないほどヘッド角が付いているか、ペグポスト長が

工夫されているかしていないと実用に耐えません。

このギターはロッドカバーが邪魔だったので削って形状を変更。

理想的な位置にバーをレイアウトすることができました。


さて、これでいちおう全てのゴトー製パーツが載りました。

今回のグローバー・ジャクソン製ランディーVについては

オリジナルのザグリのままトレモロ交換ができたのはラッキー。

それ以外のネジ固定部分の穴はほぼ開け直しとなりました(泣)。


そして一度弦を張り各部を点検、問題がないかチェックします。

ナットの高さ、ロック具合、トレモロがスムーズに動くか、

異音はしないか、ネジにガタつきがないか、まともに弾けるか。

全体に異常がないことを確認してひと安心したら

トレモロ本体を全バラして全てのパーツを理想的なやり方で

イチから組み直しをします。

メーカー出荷時のトルクを覚えておく以外にも、細かいところで

ここはバリがないか確認したりここはマル秘の処置をしたりなど

より現場向けの精度を出した組み付けを施します。

レーシングカーのエンジンを一度バラしてパーツ精度を上げて

もう一度手で組みなおすイメージです。



最後にこのオーナーさんはかなり過激にアームをアップダウン

両方とも使う奏法なので、前回施したピックアップのエッジに

弦がひっかからないようにブチル製のテーピングをしたり、

ライブ間近なのでペグやロックピンのネジを増し締めしたりして

スタジオに持ち込んでバンドレベルの音量でチェックします。


廉価シリーズ用の木材を使用しているのでどこまで性能を取り戻せるか

スタジオでちゃんと確認するまでは少し不安でした。

しかし恐る恐る本気で演奏してみると今までと全然違う!

チューニングの安定感ももちろんですが、ギターそのものの剛性感や

振動の伝わり方が全くこれまでと変わりました。

いいギターならではの一体感とか塊り感が感じられるんです。


そして音も半分腐っていたタケウチ製と比べて明らかにレンジが広い!

電装系は何もいじっていないのに解像度が少し上がっていて

和音が何を弾いているのか判りやすくなりました。

周波数特性でもイヤなハイが取れてローもふくよかに。

これはハンダオタク的に言うと「ハンダーチャーンス!!」www


帰ってすぐさまジャックのハンダを交換。

よりナチュラルで今のギターの良さをより引き出せるように

ハンダチューニングを更新してさらに確認のためスタジオチェック。

これが今のベストだと確信してオーナーちゃんに返却しました。


そして先週末、この生まれ変わったギターを使用しての

ライブが開催されて自分も観に行って来ました。

これまでずっとチューニングの狂いを腕でねじ伏せてプレイしていたのが

嘘のように自由で生き生きとした演奏。

満面の笑みでステージに立つオーナーちゃんを観て

思わず泣きそうになりました。

楽屋でめっちゃいいじゃん!!とメンバー全員に好評価を頂いて

今回のフロイドローズ交換作業は終了となりました。



【結論】

ゴトー製フロイドローズは安価だけどとても良い。

ナットやトレモロブロックの選択は慎重に。

STUD-LOCK機構は神。ちゃんと使おう。

シビアな木工作業が発生するので交換作業はプロに任せよう。