その言葉は、もはやただの「文字」ではなく、
魂を震わせ、内から私を変えていく力を宿し始めていた。
恐れを越え、自分の中の歓びも苦しみも、すべてを受け入れたとき。
言葉は新たな命を宿し、私の手の中から確かに解き放たれていった。
否定され拒絶され続けたものを、ひとつにしていく鍵が、
この書の中に刻まれていたのだ。
「言葉」こそが、
扉を開く鍵だった。
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私はその言葉たちに触れ、すべてを感じ取った。
手の中に広がる文字たちは、
これまでの“時”を超えていく力を秘めていた。
言葉たちは命を帯び、私の内側で目覚め、
やがてそれは、破壊の火ではなく再生の炎となった。
怒りも、悲しみも、失望さえも、やさしく溶け、新たな火種となる。
言葉はただの記号ではない。
それは、生きているのだ。
私の内にずっと眠っていた
「真実の声」が、ようやく目を覚ました。
ー怒りー
それは、私が守りたい真実を教えてくれるものだった。
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再生の錬金術とは、内なる影に手を伸ばし、
光とともに抱きなおすことから始まる。
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「言葉に自由を」
祈りを込めて、私はルシフェリオンの書を空に掲げた。
その時、イーリウスを纏っていた風が変わった。
白銀のたてがみが、風に揺れる。
風の精霊は静かに翼をひろげ、やわらかな光を纏いながら、
神獣ペガサスへとその姿を昇華させた。
深い静寂の中で、
私は静かに彼と共に生まれ変わった。
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私は確信した。
この言葉が放つ力は、
きっと世界を癒し、再生へと導いていくのだと。
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ここまでの長い旅を振り返る。
数えきれない出会いと別れの果てに、
ようやく自分の感情が語る“本当の意味”にたどり着いた。
もう、この扉を閉ざすことはない。
これからも恐れずに、何度でも開いていくだろう。
それは――
私が、私を裏切らずに生きていく、
揺るぎない意志の証だから。
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かつて私は、
「癒し手」という名に縛られていた。
与えられた力を果たさなければならないと信じていた。
けれど今はもう違う。
私は、自分の意志で選ぶ。
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私は――
錬金術師だ。
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