ルシフェリオンの言葉は、もはや“力”ではなかった。

それは、「私として生きる」ための、

静かな真実。


そして今。

その言葉と共に、

世界にそっと、新しい息吹が満ちていく。



――長い旅だった。


あの夜、ルーゼン・デルをあとにしてから、

私はいくつもの扉を開き、

あらゆる感情と向き合ってきた。


ひとつひとつが、

知らぬ間に私を変え、

新たな道へとつなげてくれた。



かつての私は、

誰かのために光を差し出すことで、

自分の存在を証明しようとしていた。


それが「優しさ」だと信じていた。

けれど本当は、

自分の気持ちに静かに蓋をする、

自己犠牲だった。


“きっとあるはずの光”を、相手の中に見ようとして、

自分の直感や違和感は、そっと脇に押し込めていた。


でも今は、もう違う。


本当の癒しとは、

その奥にある“願い”や“本音”に気づくこと。


そして私の持つ力は、

誰かを癒すためのものではない。

その人自身の「再誕」への意志に寄り添い、

共に歩むためのものだ。


それが――錬金術


心の奥をやさしく照らし、

古いかたちを手放し、

新しい自分に還っていくための道しるべ。



あの日。

守護の扉が静かに開かれたのは、

私が“自分の怒り”を初めて認めたときだった。



境界線を引くことは、拒絶ではなく――

平和を築くための結界だった。


守られた領域のなかでこそ、

どんな感情も、安心して迎え入れられる。


扉の向こうにあったのは、

閉ざされた孤独ではなく、

内なる転生のはじまりだった。



いま、セリュエラはその扉を開いている。

その道が、私の目の前に広がっている。


遥か宇宙の彼方、

エメラルドの光に包まれた惑星――セリュエラ。


その中心には、命の泉が息づいている。

尽きることなく湧き出すその源は、

いまもなお、やさしく、力強く輝いている。



さあ、行こう。神獣イーリウス。

これからも、共に未来へ。



私はペガサスの背に乗った。



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これは、再誕の物語。


そして――

アルケミストの旅のはじまり。