ルシフェリオンの言葉は、もはや“力”ではなかった。
それは、「私として生きる」ための、
静かな真実。
そして今。
その言葉と共に、
世界にそっと、新しい息吹が満ちていく。
*
――長い旅だった。
あの夜、ルーゼン・デルをあとにしてから、
私はいくつもの扉を開き、
あらゆる感情と向き合ってきた。
ひとつひとつが、
知らぬ間に私を変え、
新たな道へとつなげてくれた。
*
かつての私は、
誰かのために光を差し出すことで、
自分の存在を証明しようとしていた。
それが「優しさ」だと信じていた。
けれど本当は、
自分の気持ちに静かに蓋をする、
自己犠牲だった。
“きっとあるはずの光”を、相手の中に見ようとして、
自分の直感や違和感は、そっと脇に押し込めていた。
でも今は、もう違う。
本当の癒しとは、
その奥にある“願い”や“本音”に気づくこと。
そして私の持つ力は、
誰かを癒すためのものではない。
その人自身の「再誕」への意志に寄り添い、
共に歩むためのものだ。
それが――錬金術。
心の奥をやさしく照らし、
古いかたちを手放し、
新しい自分に還っていくための道しるべ。
*
あの日。
守護の扉が静かに開かれたのは、
私が“自分の怒り”を初めて認めたときだった。
*
境界線を引くことは、拒絶ではなく――
平和を築くための結界だった。
守られた領域のなかでこそ、
どんな感情も、安心して迎え入れられる。
扉の向こうにあったのは、
閉ざされた孤独ではなく、
内なる転生のはじまりだった。
*
いま、セリュエラはその扉を開いている。
その道が、私の目の前に広がっている。
遥か宇宙の彼方、
エメラルドの光に包まれた惑星――セリュエラ。
その中心には、命の泉が息づいている。
尽きることなく湧き出すその源は、
いまもなお、やさしく、力強く輝いている。
*
さあ、行こう。神獣イーリウス。
これからも、共に未来へ。
私はペガサスの背に乗った。
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これは、再誕の物語。
そして――
アルケミストの旅のはじまり。