もしドラゴンボールのシェンロンに願いを叶えてもらうとしたら、店と自宅が一緒になった家がほしい。
ミスター味っ子の日の出食堂を小さくしたみたいな。
そこに住むのは老人になった自分一人だ。
今の生活に何の不満もないのだが、今の場所は借りている物件なので、支払いが滞ったり何らかの事情があったら出て行かなければならない。
そうなった時にまたどこかの職場で一から仕事を覚えて働くのは嫌だし、とはいえ50、60代になった自分に貸してくれる物件があるとも思えないので、自分の持ち家というか持ち店があるのが一番いい。
そうすれば死ぬまで仕事を続けていられる。
晩年について考えることがある。
自分には子供がいないので、いつか女房を見届けて一人になった時、孤独に生きていける場所がほしい。
誰も知らない遠く離れた土地で。
お客とも誰とも仲良くせずに料理だけを作って、時々は本を読んで過ごして。
病気になったことにも気付かずに数日間苦しみ続けて、死んだ後は誰かに迷惑をかけて自分の亡骸を片付けてもらう。
そんな妄想の話だ。
女房が帰省していていないので一人で店を開けていたら、ふいに席が埋まってしまった。
料理を作って出すこと以外何もできなくて、客席も調理場もしっちゃかめっちゃか。
身も心もくたくたになった。
こういうことをできるのは今が限界だと思う。
将来年金が出るのか知らないけど、暇つぶしで仕事ができるだけの金があればそれでいい。
何もかも手放して手元に残った金があれば、どこかの孤児院に寄付してもらうように遺言を書いておく。
身寄りのない子供たちの幸せを願って。
当分先の話だが、今のうちにシェンロンに思いを伝えておく。
ドラゴンボールはたぶんもう揃っている。