原題:JAWS
時間:124分
製作国:アメリカ
ジャンル:パニック
【監督】スティーヴン・スピルバーグ
【出演】ロバート・ショウ / リチャード・ドレイファス / ロイ・シャイダー / ロレイン・ゲイリー / カール・ゴットリーブ / マーレイ・ハミルトン / ジェフリー・クレイマー / スーザン・バックリーニ / ジョナサン・フィレイ / クリス・レベロ / ジェイ・メロ / テッド・グロスマン / ピーター・ベンチリー
私が初めて映画館で観たのが、この「ジョーズ」。当時、劇場で4回半観て(半?昔は良い時代でしたw)そしてその後、VHS、DVD、Blu-rayと買い直し、それはもう何度となく観直してきました。もう 好きで好きでたまらない作品。
というわけで、今日は
語りつくしますw
1975年公開のこの映画。舞台となるのは、アメリカ東海岸のアミティ島。一人の女性が、サメの餌食になる所から物語は始まります。
ニューヨークから赴任してきたブロディは、町の警察署長。責任感が強く実直なタイプなんですが、少々 神経質で慎重すぎる所が玉にキズ。そして演じるのは「フレンチ・コネクション」のロイ・シャイダー。
この方は、「ジョーズ2」でも主役で登場してくれましたね。本当、良い俳優さんでした。そして、この署長さんは子供の時に海で溺れた事があり、とにかく水が苦手なんですね。なのに島に赴任されるという、なんてツイてない男なんだw
ただ、犯罪の多い危険な都会での勤務に不安があったのは確かで、だから家族が安心して暮らせる このアミティにやってきたんですね。家族の安全を優先したわけです。
なのに、このサメ騒ぎ。
なんてツイてない男なんだパート2w
そして署長さんは、女性の死因がサメによる襲撃と判明したんで、さっそく海岸封鎖を始めるんですが、そこに町の有力者が集まる。
この町は観光客で食べてるんだ!サメなんて言ったら、どうなるか分ってんのか!しかも独立記念の式典だって控えてるんだぞ!と詰め寄ってくる。
結局、女性の死因は、漁船のスクリューによる事故死と判定され 市長たちの圧力に屈する事になるんですが、この“よりによってカーニバル”っていう展開は、後のパニック映画の定番になりましたねw
そして惨劇の始まり。ここからの演出は
若きスピルバーグの手腕が光る。
ビーチでは、
不安げな顔で海を見つめるブロディ署長。
ここは、ブロディ署長の前を 人が横切るたびにカットが切り替わるんですね。ブロディのアップなったり、ブロディの視点になったり。ブロディの不安感はもちろんの事、何か起きそうな不穏な空気が張り詰め始めるんです。
そして、惨劇は白昼堂々、大勢の目の前で起きるんですね。しかも相手は子供。突然 吹き上がる血しぶきには、当時、子供だった私は震えあがりました。
このシーン、何が凄いのかと言いますと、ホラーで人が殺されるのって大体、誰もいない夜ですよね。それを本作では、真っ昼間に大勢の前でやっちゃうんです。(韓国映画の「グエムル」も“この手”を使ってました)
しかも犠牲者が子供なんて、最近のホラーでさえ あまりしませんからね。このシーンは “ホラー映画のタブー”を打ち破るシーンでもあったんです。
そしてさらに唸らされるのが、サメの襲撃で一気にキャー!とはならない所ですね。少しタイムラグがあるんです。襲われてる少年の近くでは、まだ子供たちが遊んでる。
そして砂浜にいる人が、何アレ?と気付き、徐々にざわめいてくるんです。まるで、水面の波紋が広がっていくように ゆっくりと。この「間」がリアルさを生むんですね。
そして、その流れからブロディ署長のアップへとつながる演出が圧巻で、さすがスピルバーグと膝を打つ(なのにどうして、これ以降、心あったかハートフル映画しか作らないんだw)
このズームは、まるでブロディ署長の髪がサーっと逆毛立つような感じで、一回観ただけで 今も脳裏に焼きついてます。それぐらい印象的なズームでしたが
これは、ドリー・ズームと呼ばれる手法で、ヒッチコックの「めまい」で使われたのが有名で「めまいショット」とも呼ばれてるみたいです。
そしてその後、犠牲となった少年の母親が、サメに懸賞金をかけたから大変。港は、賞金目当ての人だかりでお祭り騒ぎになるんですが、ここで助っ人が2人登場してきます。
1人はクイント船長。サメ捕りのプロとして地元で名を馳せる男。
この口汚くて偏屈な頑固親父を「ブラック・サンデー」のロバート・ショウが演じてますが、見事にハマってますね。そして金さえ出せば 捕まえて来てやる!と豪語する。
そしてもう一人は、海洋学者のフーパー。
この人は、サメに対する執着心が強く、さらに好奇心旺盛で行動力もある。演じるのはリチャード・ドレイファス。
このフーパーは、見た目がスピルバーグに似てるんですよ。たぶん監督もサメ退治に行きたかったんじゃないでしょうか。行けない代わりに自分をモデルにしたキャラを送り込んだ。みたいなw
そして港では、一匹のサメが釣り上げられ 一件落着ムードになるんですが、そこに懸賞金をかけた少年の母親がブロディ署長のもとへとやって来る。
「先週も娘さんが
サメに殺されてたそうね…
あなたは知ってたのに
なぜ? もっと早く教えてくれなかったの!
あなたのせいよ。
あなたが息子を殺したのも同然よ!」
と ブロディを罵倒する。
“ブロディ署長がビンタをされる”このシーンは、その後の行動の動機づけとなる重要なシーンなんですが、この母親を演じた女性は、もともと地元住民の方だったんですね。
ところが、この時のシーンが有名となり、彼女のもとには今も全国からジョーズファンが“ビンタ張ってくれ”と訪れるらしいですw
アメリカ版アントニオ猪木。
元気ですかぁ~w
ただ、釣り上げられたサメと遺体の傷跡が一致しない。フーパーとブロディは、サメの消化スピードは遅く、24時間以内なら食べた物が確認できると、サメの胃の中を調べるんだけど、少年の遺体は出てこない。ジョーズは まだ野放しだ。
そこで、市長相手に海開きを延期するよう必死に説得するが、市長は、事件は解決したの一点張りで聞く耳持たず、無情にも海開きは開催され、全国から観光客が訪れることに…
と、ここまで徹底してサメを出さなかったスピルバーグ監督ですが、とうとう ここで、巨大ザメ ジョーズが姿を現します!(映画が始まってから すでに1時間経過w)
その時間、わずか1秒w
ケガをした息子を病院に連れていくブロディ署長。妻に「家に帰っててくれ」と言うんですが、奥さんは「ニューヨークの家?」と聞き返す。するとブロディは「いや、ここの家だ」と答えるんです。
家族にとって安住の地だと思って来たのに、ここでも危険が潜んでいた。いや、どこに行っても危険はあるんですね。いつかは、それと向き合わないといけない。
ここは、少年の死の責任だけじゃなく、家族の命を守るという、新たな決意を固めるシーンなんですね。
ま、船に乗ってからのブロディは、「この船じゃ小さ過ぎる!」「応援を呼ぼう!」「ここは一旦、帰ろう!」と、見事な小心っぷりを見せつけてくれるんですがw
そして、とうとうサメ捕りのプロ、クイントを雇う事になるんですが、この時のクイントの条件が面白いんです。「金だけくれれば、サメはそっくりお前さんたちにやる。」
これ「ジュラシックパック2」で、恐竜捕獲の隊長のセリフにも使われてます。「恐竜一匹くれたら、金はいらねえ!」って、内容が真逆になってますけどw
そして、いよいよ出航の時を迎え、港は活気づくんですけど、ここで面白いのがみんなの持ち物検査。
クイントは “40号の糸、銛、テールロープにライフル”と、さすがプロのサメハンター。フーパーは “照明弾、水中銃、圧搾空気にサメよけの檻”と、これまた科学者らしい。
そして我らがブロディは“酔い止め、靴下、
鼻に塗る日焼け止め”って、遠足か?わはは
そして大海原へと向かう三人。
本作は、ここからガラっと雰囲気が変わるんです。スリラーから海洋アドベンチャーへと変貌していくんですね。この構成が ただのパニック映画では終わらない傑作と呼ばれる所以ですね。