=第36話「決断」=
ぐれおじさんは、持ち直したあと、倒れることもなく、頑張ってくれていました。
我が家の猫たちの応援に応えるかのようでした。
でも、検査に通った数日後、お医者さんは力なくこう伝えました。
「血糖値の低下が止まらないですね。腎臓以外も、神経系や、その他の臓器の問題があるとは思います。 」
「何か打つ手はありませんか?」
「正直、今の状態だと、CTを撮ろうにも、そのための麻酔が死につながる可能性が充分あります」
「そうですか・・・なら、それなら、せめて、最期はゆっくり、少しでも長く生きてもらいたいです」
僕は、ぐれおじさんが少しでも苦しくなく、長生きしてくれるよう、対処療法をし続ける決断をしました。
今もこの決断が正しかったのかどうかは分かりません。
リスクを承知で手術などしていれば、運良く、まだ隣にいたのかもしれません。
でも、やせ細っていくぐれおじさんを見ていて、この体に全身麻酔やメスを入れることがどれだけ苦痛か。。。
そして、そのまま、もし病院で処置の最中に亡くなってしまったら、ぐれおじさんと最期までいられない。。。
そう思ったら、賭けに出ることは出来ませんでした。
「その方がいいと、僕も思います」
そのお医者さんは若い方でしたが、ほんとに親身に僕の気持ちに寄り添ってくれました。
「少しでも元気になれるように、強制給餌もしましょう」
お医者さんの指導の元、ご飯が食べられなくなってきたぐれおじさんのために、強制給餌をすることにしました。
注射器型のシリンダーで、ぐれおじさんの口にペーストを入れてあげるのですが、これがまた大変。
入れすぎちゃうと気管に入る危険があるし、少ししかれないと出してしまうし。
ここから、またぐれおじさんと努力の日々が始まるのでした。
第36話 完