=第17話「ぐれおじさんの子猫への愛」=
子猫たちは元気にお乳を飲みながらスクスクと成長していきました。
ねこの目が開くのは十日前後のようで、ルナくんとミュウちゃんは九日目、モコたんは十四日目に目が開きました。
目が開いてもすぐに視力がある訳では無いのですが、僕とYuさんは
「こんにちは」
1匹ずつに挨拶をしました。
目が開くとより一層元気にお乳を飲み始めました。
そして、当然、排泄物も増えます。
猫は出生後しばらくは、自分で排泄することができません。母猫が排泄口を舐めてあげることで排泄を促します。それはそれは健気な姿でした。メルはお乳をあげたり、舐めてあげたり、ずっと働いていました。それを見かねたのか、不思議なことが起こったのです。
メルが寝ている時は、長老のぐれおじさんが排泄口を舐めてあげてるではありませんか。
それまで可愛がってくれた、ゆき姐、ティオパパは、この時期を過ぎてからうちに来たので、経験があった訳ではありません。母猫に母性本能としてインプットされているのは分かりますが、血の繋がっていないオス猫がこの行動をするのは本当に驚きでした。
子猫たちも素直に舐められていましたし、安心してぐれおじさんにじゃれていました。
愛は伝わるんだな。
無償の愛を与えてるからこそ、返ってくる。
ぐれおじさんの行動は心に響きました。
メルママもおかげで安心して休めているようでした。ストレスで育児放棄する猫もいると聞きます。メルママが優しく子猫を育て続け、子供たちもみんな優しい子に育つことができたのは、紛れもなくぐれおじさんのおかげです。
ぐれおじさんと猫達の信頼関係は、最期まで続きました。
猫達の心にはぐれおじさんの愛がしっかりと刻み込まれていたのです。
亡くなったぐれおじさんの亡骸に、猫達が1匹ずつ挨拶に来た時、この時の光景がはっきりと思い起こされました。
僕は涙が止まりませんでした。
第17話 完