売ることを考える 31 | 芸能の世界とマネジメント

芸能の世界とマネジメント

芸能界、芸能人のために論じます。

個性化していて「凄い!」と感じる人は存外、普通の人であるという仮説を前稿において論じたのですが、ここが難しいところで、これを理性で完全に感じ取ることは不可能ではないかと考えておりますので、この感覚がよく理解できない方はマネをしない方がベストです。心理学的な普通と世間的な意味での普通はそもそも意味が異なりますので、この点について理解できない場合、別の方法で芸能活動を行ったほうがよいかと思います。

 

このシリーズは前稿からの問題提起について結論が下れば終える予定です。これまでは売っていこうとする主体についての議論に偏っておりましたから、今後は需要側についての議論を展開していく予定です。

 

ところで、心理学上の普通なるものはバランスが取れている状態のことを意味します。つまり、集団の中で埋もれながらも目立つ存在でもある状態のことであり、集団の中で埋もれて生きていくこともできれば、目立つ存在として生きていくこともできるわけです。なぜそんなことが可能であるかですが、それはその人物が両方の生き方を体験しているからであります。ここは経験という言葉よりも「体験」と表現したほうがよいかと思います。つまり、コンプレックスの問題も加味して考える必要があり、その意味で経験よりも体験の方が心理学的には重要ではないかと考えております。

 

最近は登場回数がかなり減ったA氏を例に考えてみますと、A氏の目指すところはただ単に売れたいという心理状態でありました。売れるためには何でも行い、いわゆる「独りよがり」の状況を自ら発生させる事態に至ったのであります。そのためには手段を問わず、それ故にウソまでつき、仲間も裏切ることになり、一時はスターダムになる直前まで上り詰めたのですが、無意識はそれを許さないのでしょうね・・・嘘が暴かれ地に落ちたのでありました。つまり、自我が強いとアンバランスとなり結果的に無意識からのお誘いがやってくるのです。無意識は全世界共通のものでありますから、共時性を通じその無意識を全世界の人々が感じ取ることが可能であります。そうなると意識的な成功をもくろんでいる場合、当然のごとく失敗するわけです。しかも、A氏のことを知る人は全てA氏の無意識を感じるわけで、そこで様々なことが起こるのです。これらすべてのことが意識されずに発生するわけですから、心理学をより深く学んでいこうと思える大きな理由の一つであります。

 

この例からすると心理学で意味するところの普通の意味がお分かりになるのではないでしょうか?つまり、この失敗を踏まえ、次は無意識に注意しながら、集団にもうまくなじんでいくことができるようにやり直していくと個性化は可能ではないでしょうか。しかし、人間というものは失敗から学ぶまでの勇気がないもので、「失敗を活かしましょう!」といわれてもそうはいかないのが現実であります。A氏が普通の人間になるためには地に落ちた痛みを感じないようにしなければいけないのですが、物理的に高いところから落下すると、骨折はするし、内臓も損傷しますし、生きていたとしても体のどこかが不随となる可能性も高く、その状態から立ち直るにはどうするか?と途方に暮れるのが多くの場合ではないでしょうか。心の問題や人間関係も同じであり、回復は非常に難しいのであります。

 

これゆえ、芸能界では最初からやる気のない人が存外、早く人気が出る可能性が高く、これまでも多くの有名な芸能人を若いころに選抜してきた企画者から話を聞くと、オーディションでの選考基準は「やる気のなさ」が大きなポイントとなると答えております。しかし、やる気のない人がどうしてオーディション会場にいるのかが気になるところですが、これは簡単なことで、当然のことながら公募のオーディションではなく、テレビ局や制作会社が当人に直接コンタクトしたいがゆえに、その人物のためだけに開くオーディションがあり、その場での話であります。そのようなオーディションにおいて、「この人物はやる気がある!」となるとかなりの確率で不合格となるでしょう。しかし、これを逆手にとってやる気のなさをアピールしたところで無意識が意識に襲い掛かりますから、無駄なことはやらない方がよいかと思います。

 

ここまで理解できたらあとは実行です。皆様方のご健闘をお祈り申し上げますが、全ては自己責任でお願いします。

 

次回からは需要側の意思決定の問題に入っていこうと思います。ご高覧、ありがとうございました。