売ることを考える 19 | 芸能の世界とマネジメント

芸能の世界とマネジメント

芸能界、芸能人のために論じます。

これまで影の問題を再考してきました。モノを売るということはその時点での状況にもよりますが、音楽の世界は食品や家電とは異なりまして、一人で一つの音源をもてば十分でありまして、あの曲がすごくよかったから、再度、同じ音源を購入するなどはほとんどありません。稀に該当するミュージシャンを金銭的に支援するために同じ曲を複数購入することはありますが、それは稀なケースです。現在の音楽のマーケットでは、誰か一人が音源を購入し、それをインターネットを通じて共有することが前提となっておりますから、その機会損失分を合計するとかなりの額になるかと思われます。しかし、これも時代でありますから仕方ありません。そこで私が考えた戦術は、音源を制作しない、ライブの告知も行わないことです。つまり、音楽の技術部分の育成だけにとどめ、それ以外は全て放棄しております。例えば、動画配信サイトにてたくさんの視聴回数を稼ぐとそれだけでも収入になるのではないか?という意見も多くあるのですが、複製の問題があり、そこでの収入以上の損失が発生します。つまり、無料で音楽を聴くことができる時代になりましたが、音楽のマーケットは確実に縮小しておりまして、音楽業界の衰退、ミュージシャンの減少、最終的には技術の継承までが困難な時期に差し掛かっております。音楽に対する需要は増加しているのですが、供給側として無給で働くわけにはいかず、需給関係のバランスが非常に悪い状態となっております。せめてこの技術的な部分だけでも継承していこうと活動しているのがニューイシューというバンドであります。

 

今後の音楽業界は音楽の技術を継承いていくという形で新たなる発展を遂げることになるかとおもわれます。逆に現行のマーケットは縮小を続けるかと思われます。つまり、音楽は娯楽ではなく教育へとシフトしますので、教育産業としては栄えることになるかと予測しております。その副作用として現存する「娯楽としてのマーケット」は縮小を続けることになるかと見ております。

 

ここで話を戻しまして、このように、業界全体や経済界全体を見渡して、そこでの結論や未来予測までをきるようになると老賢者元型の登場を確認することができます。老賢者元型の老賢者とは昔話に出てくるいわゆる「老賢者」のことでありまして、現代の言葉で翻訳しますと、「知恵者」となるかと思います。一を聞いて十を知るような人物のことでありまして、様々な困難のあった後に現れるのがこの老賢者元型であります。すべてが理解できた、つまり、仏教用語でいうところの「悟り」を感じたような言葉が数多く発せられるため、十分な経験を積んだ心理療法家でも治療の段階では「自己」にまで達したかのような錯覚に陥るのですが、よく聞いてみるとまだ悟りには達していないことが多く、その意味で心理療法家や心理学者はその見極めをしっかりとできるように訓練しなければなりません。

 

そこでこれまでの主人公であるA氏でありますが、A氏は性別を超えた次元での自分自身の裏の世界に対して大きな悩みを抱えることになりました。そして彼の選んだ道はベーシストという道であります。しかしながら、これは大きな決断でありまして、まず、性別に関して乗り越えたことを吟味すると、アニマの問題を克服したことになり、つまり、「おしゃれなA氏」からの決別を意味します。その流れからのペルソナの問題ですが、あこがれの人のマネを一生懸命行い、「おしゃれで、かっこいいA氏!」を実現したのですが、ペルソナに呑み込まれたA氏はついに「これでいいのか?」という中年の危機にもにた影の問題に遭遇します。難しですね。ここで次に多くのミュージシャンがとる行動は、ファッションや流行を追うことをやめ、流行を「作る」側に舵を切ります。多くのミュージシャンが変わった服装や行動をとるのはこのためであり、見た目は「汚い」けれど、なんだかそれが「かっこいい!!」と思えるのはこの精神状態があるからです。経営学的に翻訳しますと、いわゆる「新市場の創造」なるものを志すことになります。このように考えてみますと、新市場の創造は個性化一歩手前の部分のことを意味し、その意味で、そう簡単に行えるものではありません。既存の経営学者の多くはこの言葉を非常に軽く使います。しかし、新市場の創造とは一人の人間が全生命をかけた大勝負であることを認識しなければなりません。それを見ている側は、やはりその人物は「老賢者」でありますからかっこよく見えるのですが、実のところはまだ道半ばでありますから非常に大きな痛みを伴いながらの行動であることを理解しなければなりません。

 

さて、老賢者ともなると貫禄もついてきて見ている人を引き付ける力もついてきます。つまり、A氏を見て「かっこいい」と思える状況となるのはこの段階からでありす。そして多くの人はこの老賢者を支援しようとしたくなり、人が集まり、結果としてお金も集まってきます。ミュージシャン自身が自分が「売れるかも?」と思う瞬間がこの時でありまして、この時の思いをどのように感じ、それを今後に活かしていくかを深く考えることにより「自己」へと到達します。

 

次回からは老賢者元型にまで達したA氏のプロセスとその後の行動、それが物販にどれほどの影響を与えるのかについて順に論じていこうかと思います。ご高覧、ありがとうございました。