私がなぜ事業ドメインと新しい仮説であるイノベーション戦略取り上げているかというと、それは言葉は違えど、内容はよく似ているということです。
この点が重要でして、要は、「入口は違えど、目指すべきゴールは同じ」ということをお伝えしたいのと、2点目は、日本においては少なくとも私の一番目の恩師が院生であったころ、今から60年以上前より事業ドメインのことについては地味ながら議論が現在でも続いているのですが、一方、アメリカではドラッカーなどの「哲学」を重視した学者が事業ドメインに近い議論を続けてきた一方で、日本のそれとは違う方向性で議論されてきたのですが、近年のアメリカの経営学を見ておりますと、戦略論と組織論の両方で日本でいう「事業ドメイン」についての議論が盛んになってきていることをお伝えしたいのと、3点目は、アメリカの経営学では戦略と組織とが融合されて、これまでの「戦略が先か後か」というようなことではなく、あくまでも「ミックス」された状況を重んじる論者が主流になってきており、この点においては日本が古くから企業経営において大切にしてきたことが世界のトップクラスの研究者の間で議論されるようになってきており、私としては興味深い反面、日本は逆に過去の欧米型の組織内の差別化を重視する経営法に進むようになっており、せっかくの日本のいいところが失われてきているということをお伝えしたいために、イノベーション戦略という仮説をご紹介しております。
ところで、これまでかなりの数の小論文をLinQの皆様方のために書いてきておりますが、またそれもかなり科学的な手法で、いろんことをぶつ切りにし、分析的に書いているがゆえにLinQとしてもそのように考えていかなければならないと思考する運営の方々やメンバーがほとんどと思いますが、実は一番重要なのはそうではなく、わかりやすく言うとLinQ内で醸成された「和」を重視することであり、じつはここに目に見えないブラックボックス化された強みを持つことになります。これを経営学の用語で「場」というもので表現されておりますが、目に見えての強みである「コア・コンピタンス」とは同じ「強み」でありながら意味は違い、しかしながら、表裏一体として考えていかないといけません。在来型の欧米の強みの考え方は「コア・コンピタンス」ですが、これが徐々に日本型の「場」の議論に移ってきており、それをわかりやすく示されているのが前回から紹介しているGary P. Pisanoの論文であります。
LinQの皆様方いかがでしたでしょうか?前回より3回にわたりGaryの論文をネタに結論を下しては崩しを繰り返し、しかしながら、その先に進めるという方法で進めております。初回の図では、「なんだ、こんな簡単なこと・・・」と思ったかもしれません。そして、二発目でその思いを裏切られ、さらに今回において新たな課題が出てきました。問題や課題というのはこのようにして作っていくのですが、その都度皆様方は自分の答えをだしているでしょうか?間違っていても回答を導くことが重要な作業であり、考え抜いた答えがむしろ間違っていることに意義があります。その間違った解答が10年後に「正解」となることもあり、その意味で考え抜いていただきたいです。
今回もご高覧に深謝いたします。次回をお楽しみに。