大河ドラマとお香 | リンデンバウムのブログ

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小さな香房からお香の魅力を伝えていきます。日本に生れたことに感謝!

平安時代が舞台の今年の大河ドラマには大いに期待していました。

ストーリーは面白いし、美しい衣裳や書、和歌や漢詩など見どころが沢山あり日曜日の楽しみの一つなのですが、何か物足りない気がしています。

 

それは平安貴族の話なのに、お香を薫くシーンが出てこないこと(見逃していたらごめんなさい)。

平安貴族の生活にお香、空薫物(そらだきもの)と呼ばれる煉香や衣類に香りを移す薫衣香(くのえこう)は欠かせなかったはず。

目にも鮮やかな衣裳や設えは分かりやすいけど、匂いや香りは画面から伝わらないからなのでしょうか?

 

たとえ嗅覚に訴えられなくても、香炉や香を聞く所作、香を着物に薫き染める習慣などお香の香りを想起させる場面があれば、もっとドラマや登場人物に奥深さやちょっとミステリアスな雰囲気が醸し出されるような気がしますが。

 

「麒麟がくる」では蘭奢待のレプリカまで作る力の入れようだったのに、紫式部がモデルのドラマに今までのところお香が出てこないのは何故と思ってしまいます。一度、左大臣家の倫子の部屋に伏籠が置かれているのを一瞬見たくらい。

 

下級貴族であっても左大臣家に出入りするには着物に香を薫きしめる必要があったのでは。でも経済的に困窮している設定なのでお香どころではないのかもしれませんが。源氏物語でも若紫の帖の中にも童女であった紫の上が「雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちに、籠めたりつるものを」といって口惜しがるくだりがあります。紫の上も高貴な生まれではあっても決して裕福な環境で育った訳ではありませんが、それでも香を薫きしめる伏籠はあったのです。紫式部がこのように書いているのですから、ご実家にもおそらくあったのではないかと

想像してしまいます。

 

伏籠(ふせご)とは着物に香を薫きしめるために使用する道具のことで、上級貴族は漆塗りの美しい意匠のものを使いますが、それほど裕福でない貴族や宮人は大きめの釣鐘状の籠の中に香炉を入れて籠の上から着物を掛けて薫きしめていたようでした。

 

ドラマの中のまひろの家の軒先にかかっている竹か何かで編んだような鳥かごを伏籠代わりに使っているのかなと勝手に思ったりしています。

 

まだ始まったばかりですし、ストーリー展開が最重要な時期だと思いますのでこれから平安貴族の生活や趣味なども詳細に描かれるでしょうから楽しみに観続けようと思っています。

お香マニアの独り言でした。