18年前。2.3万キロの走行距離と小さなヘコミを持って私のパートナーになったミニ。
大きな故障は無かったが、幾度となくサービス工場に駆け込み、修理、メンテ、そしてチューンアップ、ドレスアップ、と手間暇を趣味として楽しんできた良い関係性。積み重ねた費用の総額は車両購入時の総額の2倍以上にはなるだろう。
2度の被害事故もシャシーへの影響は無く、逆にチューンアップ、ドレスアップで強化のチャンスに変えてきた。
自分専用の移動手段が、いつしか彼女と二人の移動手段になり、彼女が妻になり、行先が増えていった。
しかし、いつかはやってくるその時へのカウントダウンは容赦なく進む。
徐々に劣化していく主要メカ部品。
徐々に重くなっていくドライバー。
必死にギュっと踏ん張って耐えてきたのだろうけど、じわじわと滲み出てくる熱いモノをとうとう抑えきれなくなってしまった。
悲鳴を上げ始めたトランスミッション、滴り落ちるオイル、体感する明確な具合の悪さ。
いつもの修理工場に駆け込み、プロの眼で細部まで診てもらい、処置の説明を受ける。選択肢は少ない。
私を乗せて15万キロ。今後の事を考える。
「わかりました、もう止めてください・・・」
覚悟はとうにできていた。が、この一言を絞り出すのにずいぶん時間がかかったように思う。
これが最後の依頼となった。
再度組み上げ、ラストラン。いつも通りの安全確認と、優しい操作。
ゴールはない。もう十分に与えてもらったから。美しいウイニングランだ。
18年間、お疲れ様。ありがとう。
