ライヴの練習でスタジオからの帰り、電車の中。
某駅に到着し、大半の乗客が降りていく中、
電車を降りようとした小学生の女の子が、サイフをぶちまけた。
散らばったのは、硬貨ではなくコイン。
ゲームセンターなどで利用するようなものっぽい。
まるでマンガのように電車内に散らばり転がっていく大量のコイン。
目下に転がってきたコインを拾おうと席を立とうとしたとき、
視界の範囲で、真っ先にコインに飛びついていたのは
私の前に座っていた男性。
金髪で、いかにもガラの悪そうな若者だ。
私が電車に乗り込んだ時、目前の彼は大きく足を組んで雰囲気も悪く
少し嫌だな、と思ったのは事実。
彼は目の前に転がり広がっていくコインを素早く集め、女の子に手渡す。
私は彼とほぼ同時に、自分の前に転がるコインを受け止め
周辺のコインを集めて彼女の元へ・・・
見渡すと、この駅で降りずに電車内に残っていた者達の大半が
席を立ってコインを迅速に回収し、女の子に手渡していた。
私は気付いたが、そのうち1人は女の子がドアに挟まれないよう
しっかりとドアとホームの間にポジションをとっていた。
目立たないけど、絶妙の動き。
誰も言葉を発していない。
私を含め、みんなからコインを受け取った女の子は
恥ずかしそうに頭を下げて走り去り、駅のホームの階段に向かって走り出す。
直後、ドアが閉まる。
コイン回収班はもとの席に座って
各々の目的地まで、全く何事も無かったように。