長調と短調の違いは、明るいか暗いかという印象だけで語られることが多い。
しかし実際には、その違いは音の並び方にある。短音階を理解するためには、その前提として「全音」と「半音」という考え方を知っておく必要がある。
ホルンを吹く人にとって、全音と半音は指の動きの大きさで考えるとわかりやすい。運指を少しだけ変えて移動できる、いちばん近い音までの距離が半音である。そこからさらに一段階進んだ距離が全音になる。
たとえば、同じ音から替え指やごく小さな運指の変化で出る音は半音、その次の音が全音、という感覚でよい。全音と半音は運指の名前ではなく、音と音の近さを表す言葉なのである。
この全音と半音の並び方によって、長調と短調は区別される。長調では、主音から3番目の音が少し高い位置にあり、これが全体に明るく安定した響きを作る。一方、短調ではこの3番目の音が半音低くなり、音楽に陰りや緊張感が生まれる。たった一音の違いだが、この差は非常に大きい。
さらに重要なのは、短調には形が一つしかないわけではないという点である。短調には、自然短音階、和声短音階、旋律短音階という三つの考え方がある。自然短音階はもっとも素朴な形だが、このままでは曲の終わりが少しぼんやりすることがある。
そこで、終わりをはっきりさせるために、ある音を半音上げた形が和声短音階である。ただし、その影響で音の動きが少し不自然になる場合もある。そこで、旋律をなめらかにするために使われるのが旋律短音階である。上に進むときと下に進むときで形を変えるという、柔軟な使われ方をする。
短調とは、暗い音楽のことではない。状況に応じて音の距離を調整しながら成り立っている、変化に富んだ音の仕組みなのである。このことを知るだけで、短調の楽譜はずっと理解しやすくなる。