実家には物があふれている。
押し入れ、クローゼット、食器棚・・・全ての収納スペースはパンパンで、もし上空に家が飛ぶものなら、ありとあらゆる収納スペースが気圧で爆発するだろう。
収納スペースがあるにも関わらず、母親がさらなる収納グッズを買ってくるものだから、収納グッズが収納され、またその収納グッズを買うというような大惨事となっている。
収納グッズの陣地取りゲームがいたるところで行われているのだ。
◇
先日、母親があるものを見せたいといって、パントリーを開けた。
私がまだ実家に居た頃は、既存のラックや棚にしか物がなかったのだが、今では、ラックや棚の前に物で積み上げた壁ができており、ラックや棚にある物が全くとれなくなっている。
物で積み上がった壁は、もはやぬりかべになっており、エネルギーを費やしてまで、奥のものを取ろうという気をなくさせる。
物を積み上げすぎると、妖怪化するのだということを物語っているのだ。
母親は、何とか目的のものを取ろうと、必死になってもがき、奥に侵入するため、自身の頭の上に物を積み上げている。
一瞬、インドで見かけたスーツケースを2・3個頭の上に乗せていたポーターの姿が頭をよぎった。
(引用元:いい旅インド)
人知を超えた生き物が存在すると驚いたものだが、母親もまた、人知を超えた生き物のようだ。
物を溜め、物を体の一部にするその姿。
もはや物の怪である。
関連記事は、こちら