息子のプールが終わると、きまって、施設にある大浴場へと直行する。
一緒に一週間を振り返りながら、ゆったり露天風呂につかるのは、至福である。
ある日、いつも通り息子と露天で温まっていると、湯には浸からず、辺りを一直線上に足を運びながら、行ったり来たりしているおばさんが出現した。
腰に手をあて、モデルのようにとにかく一直線に、太極拳とも思われるようなスロースピードで、ゆっくり歩いているのだ。
私は、きっと彼女なりの健康法なのだ、とあっさり受け入れたのだが、息子は、「どうして、このおばさんはお風呂に入らないで、奇妙な歩行をしているのだろう?」と言わんばかりに、異様な目つきで眺めている。
もう、目線はおばさんに釘付けだ。
しばらくすると、おばさんは、満足したのか、室内の風呂へ戻っていった。
息子も「熱いから、あがりたい。」と言う。
いざ、もどろうという時、息子が腰に手を当てだした。
亀のように、ゆっくりと足を前に出している。
どうやら、先ほどのおばさんの真似をしているようだ。
「わはははは。」
私が豪快に笑うと、我に返ったように、息子は顔を赤らめ、「見ないで-!!!!笑わないで!!!」と怒る。
「今日は、息子が、初めて中年のおばさんにシンパシーを感じた記念日だな~。」と、怒る息子をよそに、建物の隙間から見えた月を眺めてしみじみする私であった。
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