大河ドラマ「べらぼう」のおさらいもかねて、この本を購入し、読了。

なかなか、良い本でした。

 

 

シンプルで、簡潔にまとまっていて、読みやすい。

本も大きく、オールカラーで、蔦屋重三郎が手がけた出版物が、カラーで掲載されている。

 

蔦屋重三郎が、最初に出版した吉原細見「籬の花」。

歌麿の、確認されている中で、最も古い仕事である黄表紙「身貌大通神畧縁記」。

朋誠堂喜三二の「文武二道万石通」。

恋川春町の「鸚鵡返文武二道」。

他、様々な狂歌絵本。

などなど。

 

大河ドラマに登場した蔦屋重三郎の出版物の実物の写真が掲載されていて、興味深く、面白い。

 

中でも、やはり、喜多川歌麿、東洲斎写楽の一連の浮世絵は、素晴しいですね。

カラーで、大きな絵で見ると、その素晴らしさに、感心する。

 

興味深い話が、一つ。

 

東洲斎写楽のデビュー作となった、28枚の、役者絵の「大首絵」。

これは、「大判」というサイズで、背景は「黒雲母」で摺られている。

これは、無名の新人絵師の作品としては、異例の、超豪華な浮世絵ということになる。

 

なぜ、蔦屋重三郎は、このような、異例の作品を出版したのか。

それには、何か、特別な事情があったとしか考えられないということ。

 

この一連の大首絵は、寛政6年5月、都、桐、河原崎の三座に取材をしたもの。

そして、役者の大首絵は、ブロマイド的な需要と、採算の関係から、基本的に、主役級の人気役者を描くのが普通。

しかし、この一連の大首絵の中には、「中島和田右衛門のぼうだら長左衛門と中村此蔵の舟宿かな川やの権」という端役の図も含まれている。

 

異例の豪華な大首絵、そして、その中には、普通は描かれない端役も登場する。

これは、採算度外視で、芝居の出演者を網羅的に求めた歌舞伎ファンによる「入銀物」の可能性があるということ。

 

この「入銀物」とは、浮世絵の制作を依頼する人が居て、その人が、ある程度の制作費を負担するというもの。

これは、吉原関係でも、よく見られることのようですね。

 

しかし、蔦屋重三郎が、大々的に売り出した東洲斎写楽は、世間には受け入れられず、すぐに、姿を消すことになる。

 

東洲斎写楽は「謎の浮世絵師」として、正体が誰なのか、度々、話題になりますが、この本にも書かれている通り、浮世絵師というものは、ほとんどの人が、その素性、経歴の、よく分からない「謎の浮世絵師」ということになるそうです。

喜多川歌麿にしても、その素性、経歴が、ちゃんと、分かっている訳ではないんですよね。

 

ちなみに、「写楽は、歌麿ではないか」という説もあります。

 

大河ドラマ「べらぼう」では、まだ、東洲斎写楽を、誰が演じるのかという発表が無いようですが、もしかすると、歌麿が、写楽を描くことになるのでしょうかね。