ゴッホ展と、強い母親の軌跡 | ***Walk on the light side

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銀河に煌く星たちのように

今年は春分直後に「2025年の星の軌跡とヴァン・ゴッホ」というオンラインのワークを開催したのですが、今日は大阪市立美術館のゴッホ展に行ってきました。



大人気ですね、ゴッホ。オープン前から長蛇の列で、かなり盛況でしたが、それでもじっくりと絵を堪能することができました。

 

ポスターになっている目玉のゴッホの自画像、とてもとても良かったです。ぜひ、みなさまも実物をご鑑賞ください。

今回の展示は、ゴッホの人生の軌跡を準えたようなもので、絵を描き始めてから、亡くなるまでの活動を、映像でざっと紹介があり、その期間に描いた作品を見せる…という、ゴッホをよく理解できる構成になっていました。

ゴッホは「世界に100年残る名画を描く」という高い理想を掲げながらも、なかなかそのようにならない現実に失意を抱いて、情緒不安定になっていきます。



10ハウスの太陽牡羊座が理想主義で、シングルトンなんですね。支配星の火星は金星と共に魚座にあり、彼に特別なアートの才能を与えましたが、繊細な感受性をもたらしもします。

 

射手座の月は木星と共にあって野心がありますが、こちらも海王星の干渉を受けて、どうも不安定になってしまうのですね。しかし土星・天王星・冥王星は牡牛座にあって、まったく新しい唯一無二の絵を描く野心に燃えています。

 

そして実際にその通りになったのですが、そうなるまでを待つことができなかったのですね。このあたり、短気な牡羊座っぽいなと感じます。

 

前にモネのチャートをご紹介したのですが、モネは蠍座ですから、父親から援助を打ち切られて、売れない時期でも「絶対、売れるはずだ」と信じて、粘り強く諦めないわけですよ。そして生きているうちに、ちゃんと巨匠になりました。

 


同じ野心的な火星を支配星に持っていても、牡羊座と蠍座ではこのあたりのスピード感がまるで違いますね。牡羊座は誰よりも早くそれを達成したいけれど、蠍座は何がなんでも絶対に達成したいのです。

 

欲しいと思ったら、ネバーギブアップな蠍座と、一気に短期間でのぼり詰める牡羊座。

成功を見ることなく、ゴッホは失意のもと、亡くなるのですが、結局は彼が望んでいた通りの、世界的な名声を手に入れたわけですね。

今年は土星と海王星が牡羊座にリターンしているので、ゴッホの10ハウスの太陽、すなわち社会的な名声が、再び確立されるタイミングです。

 

日本だけでも、大阪を皮切りにゴッホ展が東京、名古屋へと来年の3月いっぱいまで続き、さらに来月からは大ゴッホ展が神戸、福島、東京と続きます。来月のほうは「夜のカフェテラス」や別の自画像もきますね。

 


今回の展示でも、かなりフィーチャーされていたのが、義妹のヨーです。

 

ヨーが、ゴッホの弟のテオと結婚したのが26歳の夏。翌年27歳の1月に息子を出産し、5月に義兄のゴッホと初対面。

 

と思ったら7月にゴッホが自死してしまい、それにつられるように9月に夫のテオが療養生活に入ります。神経が衰弱した夫を連れて、11月に故郷のオランダに帰り、テオは精神病院に入院。そのまま翌1月にテオは亡くなります。

 

そのとき、ヨーは28歳。息子は1歳。



おそろしいサターン・リターンですね。およそ一年半の間に結婚、出産、義兄の自死、転居、夫の病死を、次々と体験し、未亡人となり、遺されたのは1歳の息子と、無名な義兄の膨大な絵画だけでした。

ヨーのすごいところは、生き延びるために、凄まじい力を発揮したところ。遺された僅かなお金で家を買い、下宿屋を生業としながら、膨大なゴッホの絵画を整理し、兄弟でやり取りされた手紙を全て編纂して、物語を生み出し、彼らの兄弟愛を軸に偉大な画家としてゴッホを印象づけて、世界に売り出しました。

絵画について、ヨーはテオとの結婚生活を通して知った僅かな知識しかなかったところを、ものすごく勉強して、非常に上手に売り出すんですね。

その才覚たるや。生活のために絵を売りながらも、価値が下がらないように、ひとつの国に対して売る絵の数や、売る絵のモチーフを調整し、重要なものは「家族のためのコレクション」としました。

しかしイギリスのナショナル・ギャラリーから依頼があった時は、一気に国際級に知名度を高めるチャンスのため、重要な「ひまわり」を放出。


テオとフィンセントの兄弟は、この強く賢く度胸もある嫁の敏腕が発揮されるまで、頑張って粘ればよかったのに……と思いますが、もしテオが生きていたら、ゴッホを今のような名声にまで引き上げることはできなっただろうなとも思います。

「生きるために、なんでもするしかない」というときに発揮されるのが、火星であり、冥王星です。特に冥王星は究極の諸刃の剣ですから、追い詰められたとき、ゴッホのように「死ぬしかない」と思い込んでしまう人もいるでしょう。

子どもを抱えた母は強し。ゴッホの絵を見るときは、その背後にいる敏腕プロデューサー・ヨーを感じます。