土星が飲みこんだ思いと補償、そして統合 | ***Walk on the light side

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銀河に煌く星たちのように

先日、占星術の研究会でじっくりと時間をかけて、土星だけを探求する会をやりました。

 

占星術においては、さまざまな評価がなされる土星ですが、私たちの中で実際にどんな機能を果たしているのか?ということをじっくりと見ていきました。

 

本当に土星は厳しく制限する星といえるのか!?というと、答はノーだと私は思っています。実際には土星が厳しいのではなく、世界が厳しいんですよね。

 

私たちの生きているこの世界は、私たちにとってやさしいところでは決してありません。昔の人々が生きていた時代に比べれば、ずっと暮らしやすい世界ではあると思いますが、それでも、やっぱりそれなりの厳しさがあります。

 

そこが嫌いでも、心地悪くても、私たちが生きる世界は他にありません。ここにいなくてはいけないし、この現実を生き延びなくてはいけません。土星はそのことを助けてくれているだけなんですね。

 

 

神話の土星クロノスは、父である天王星ウラヌスを去勢することで、神々の王座につきましたが、やがて同じように自身の子が王位を奪うことになるだろうと予言されると、それが事実となることを恐れて、妻レアの産んだ子を次々と呑みこみました。

 

5人の子が呑まれて、そのことにうんざりしたレアは、6人目の子を産んだときに、産着でくるんだ石を渡して、本物の赤ちゃんを洞窟に隠します。

 

その赤ちゃんがやがて成長すると、予言の通り、父を倒して、神の王座につきまました。それが最高神である木星ゼウスです。

 

「王位の交代」という、おのずとやってくる、自然のときの流れを恐れて、クロノスは子どもたちを呑みこみましたが、それと同じものを私たちの土星は機能として持っています。

 

私たちにとって何か耐え難いような、厳しい状況がやってくると、誰もがそれに対して萎縮します。しかし、それでもその状況から逃れられず、そこに居続けなくてはならないとき、その萎縮した感覚に含まれる不安や緊張を呑みこんで、それを感じないようにし、代わりに何かしらの補償行動をするわけですね。

 

たとえば入社した会社でまわりの人たちとうまく馴染めず、上司も厳しくて、居心地が悪い…といった状況が発生すると、それ以上、心地悪さを感じないように感情を呑みこんで、補償行為として「上司やまわりに気に入られるようにふるまう」か「自分の作業に没頭して、必要最少限しか関わらない」ということをします。

 

これが自然の流れを堰き止めて、何事もないように元の状態を維持して、環境に順応する土星クロノスの機能ですね。世界ではたびたび厳しいことが起こるので、そこに適応するための機能です。

 

 

問題は一度そのパターンを身につけてしまうと、似た環境に遭遇したときに、同じパターンで対応し続けてしまうことですね。上記の例でいえば、和やかで話しやすい人たちの集団に入ったときにも「気を使って話を合わせてしまう」か「必要以上になかなか喋れない」ということをするわけです。

 

神話では成長したゼウスが、クロノスを倒す前に、薬を飲ませて兄弟たちを吐き出させました。つまり「飲みこんだ思い」は消えてなくなったわけではないので、時がきたら吐き出す必要があるんですね。

 

そして「あのときは本当につらかった…」と、萎縮して耐えてきた思いをしっかりと感じることができると、補償のパターンを繰り返す必要がなくなります。

 

この土星が作り出したパターンは無数に私たちの日常に入り­こんでいます。土星はいまここで起きている現実を正確に認知することも助けてくれるので、じっくりと自身のおこないを見て、どんなことを無意識にやっているのかを気づかせてもくれますね。

 

自分のパターンに気づいたら、吐き出して、その感情を味わう。これを日々くり返し、くり返し、くり返していくことで、ほんのちょっとずつ、私たちの内側が統合されていくのだろうなと思います。