
すこし前に占星術のテキストで危機(クライシス)という単語はギリシャ語の「成長する」という意味の単語が語源になっているとあるのを読みました。さらに詳しく調べるとそれは「(分岐点において)決定すること」からきているそうです。
今期の満月図はまさにそのように、私たちが成長するために、今どんな選択をするのかが試されているような雰囲気です。
ウィズコロナの時代を生き抜くために、どんな手を打つのがベストなのか……。
先日、藤井聡太七段と渡辺明棋聖の棋聖第二戦をネット中継で観ていたのですが、お互いの一手一手がどんな展開をもたらすことになるのか、とてもハラハラします。
そこには瞬間毎の「考え抜いて、選択し、勇気を出して実行する」という力強い人間の本質を感じました。
それがどんな結果をもたらすことになるにせよ、状況を冷静に見て、その時の最善手を読み解き、実際に動いていくという行為そのものが、危機的状況にあって私たちを成長させることになるのでしょう。
今期の満月図を見ると、今は誰もが思考停止になるときではないし、誰かに従えばいいというわけでもなく、ひとりひとりが自分にとっての最善手を選ぶときだといっているかのようです。
6月末に火星が牡羊座に入って、星の流れにグッとエネルギーが加わり、加速していくことができる今……進むことも退くことも、変わらないでいることも、すべては自分の選択次第だということを伝えているような初夏の満月です。

9ハウスの太陽・水星と3ハウスの月とが向かい合う満月です。
3ハウスに滞在する月は、ついつい私たちを慣れている、いつものパターンの中において変わることを拒むけれど、9ハウスの太陽と水星はもっと意識を広げて、世界で何が起きているのかを目撃し、変わりゆく時代とつながり続けることをうながします。
3ハウスに揃った木星・冥王星・土星もそれを援護射撃して、このウィズ・コロナの時代に今までと同じではいられないこと、日常の社会生活とそこにいる人たちの意識が否応なしに変わるのだということを訴えるでしょう。
そこで私たちは個々にさまざまな選択をすることになります。
変わる人、すこしだけ変わる人、変わらない人、やめる人……誰もが自分にとっての最善手を意識的あるいは無意識のうちに打つのでしょう。
そしてその選択には自覚している/いないに関わらず、個性が表れます。
そのため誰かの選択肢を好ましく感じることもあれば、そうでないこともあり、同じ方向を向くものがあれば、まったく異なる方向へ向くことも起こり得ます。
それは自由な意志からの決定であり、互いに尊重されるものですが、しかし同一の目的を共にしている相手の場合はそうは言っていられません。
夫婦や恋人、親子、ビジネスパートナー、上司と部下、先生と生徒やクライアント、チームメイトなどなど、同じ目的のために一緒に動いている関係において、一方の選択がもう一方の動きに影響を与えます。
これがライバルであれば、相手の出方に合わせて、いかに相手を出し抜くかを考え抜くわけですが、味方の場合はどうでしょう?
とことん話し合って、お互いが納得できる着地点を見つける必要があるでしょう。
そこには妥協できるものとできないものがあるかもしれません。
中には没交渉となって自然とパートナーシップが解消されるようなことも起こるでしょう。
今期はそのような時期です。
うまくいっている人も、いない人も、パートナーと向き合って、お互いの選択を示し合わせて、調整を試みるときです。
これはどんな時でも大切なことですが特にいま、この変容の夏の時期に重要です。

6月の終わりにに牡羊座に入った火星が5ハウスにあり、私が何者であるかということを主張したくなるような半年が始まります。
ここで大切なことは「自分がどうしたいのか」ということにいつも正直で忠実であること。
そしてエネルギーを本当の自分の望みを叶える実現のために向けることです。
ホームタウンである牡羊座還った火星はエゴの働きを強くするため、無意識に放置しておくのは危険です。特に他者との対立や否定に使うとロクなことになりません。
勇気を出して道なき道を切り拓き、高い壁を超えるのも火星であれば、邪魔する者、反対する者を皆、倒して、力と破壊で他を圧倒するのも火星です。
次の手をどう打つか、誰もが自分の心と正直に向き合って、今の世界と自分の置かれている状況を冷静に読み解き、心を常に「いまここに」定めて、選び、前進する。
目を醒まして、誰もがそれぞれの行くべきところへ行くときが来たのだと告げているような、初夏の満月です。