昨年9月から天秤座に滞在している木星が、今年2017年10月10日から蠍座に移動します。
現在、天秤座22度あたりにいる木星が、これから1か月余りのあいだに蠍座へ抜けていくのですが、ちょうどこの期間、対面の牡羊座に滞在している天王星と、オポジションという、ふたつの星がぴったりと向かい合う配置になるでしょう。
この角度の影響が8月末から10月中旬頃まで、けっこう強く起こりそうなので、その話を書きたいと思います。
木星と天王星が角度を作る組み合わせを、わたしは個人的に『失われた青春の奪還』あるいは『盗んだバイクで走り出す』と呼んでおります。
占星術における木星という星は、小さな個人であるわたしたちを、外側の大きな世界に向かわせて、自分の中にある可能性を羽ばたかせようとする惑星。
わたしたちは生まれてくる前、お母さんのお腹のなかにいた頃、『世界とひとつ』であることを体験していました。
産まれ落ちると、「わたし」と「世界」とが分離してしまいますが、かつて世界とひとつだった頃の記憶に刺激されて、もう一度世界を取り戻したい、「ひとつなぎ」である感覚に戻りたいというのが木星の欲求の原型にあります。
わたしたちは成長の過程で、まず世界とは分離した個人を自立させる力をつけることを学びます。
そして、ある程度の個人としての基盤ができると、再び、世界とつながり直したい、ひとつになりたいという欲求が出てきて、そのエネルギーが高まると、わたしたちは実際に世界へ飛び出していき、可能性のなかに身を投じたくなるでしょう。
これがわたしたちにとって社会性のはじまりとなります。
一方、占星術の天王星は、わたしたちが普段暮らしている「現実」という枠組みを唐突にぶち壊して、個性が否定されることのない、いまの時代にふさわしい、より普遍的な自然のサイクルと共鳴するような新しい形に作り替えることを訴える惑星です。
天王星の働きは、予測できない自然災害のように前触れもなくはじまり、マンネリと化して、停滞している日常を突き破ろうとするでしょう。
この木星と天王星のコンビネーションは、わたしたちを果てしない自由や、まだ見果てぬ可能性に『早急に』向かわせます。
まるで、いましていることとは、まったく違うところに、本当の自分があるかのように。
わたしたちを平凡な日々に閉じ込める見えない枷に捕まらないように、一心不乱に逃げ出すかのように。
そんなわけで『失われた青春の奪還』あるいは『盗んだバイクで走り出す』なわけです。
この時期は唐突にこれまでアイデアになかった新しいことを始めたくなったり、衝動的にどこかへ行きたくなったり、いままでやってきたことを変えたくなったりするかもしれません。
ここで大切なことは、この衝動から気を逸らさない、ということです。
この木星と天王星のコンビネーションは、マンネリ化した、あるいはいまの時期にそぐわなくなった、はたまた、誰かの個性を抑圧させるようなやり方を改変させるためのエネルギーです。
そのヒントは「おかしい」と疑問に感じることだったり、イライラしたりするところにあるかもしれません。
いま変えるべき、人生における「脆弱な穴」がどこなのか、しっかりと見極めて、そこを改善することにエネルギーを使うことが、次の蠍座木星期の足掛かりとなるでしょう。
もし日常のなかで不満を感じていたり、「ここをどうにかしなくては」とわかっていたりしても、それを無視していると、木星と天王星のコンビネーションがこのフラストレーションを広げにかかるかもしれません。
するとイライラが募って誰かにあたりたくなったり、衝動的な買い物や行動で発散したりしたくなるでしょう。
そのイライラや衝動さえ、気づかないふりをして、抑えこむと、外側からトラブルとして、なにかが起こる可能性もあります。
しかし、そのようにエネルギーを消耗させたところで、現実が変わらなければ、不満を内包したまま、蠍座木星期を迎えることになってしまうでしょう。
蠍座に木星が入るまでに、できる限り、内側に不満や心地悪さを溜め込まず、すっきりした気分でいることが大切です。
蠍座木星期の最大の特徴は『隠されたものを明らかにする』ことにあります。
隠れた気持ち、隠れた本音、隠れた関係、秘密裏で進めていることなど、すべてが白日の下にさらされるかもしれません。
特に近い関係における不満を抱えたまま、蠍座木星期を迎えると、泥沼合戦になる可能性があります。
現在木星が滞在している天秤座は、コミュニケーションを架け橋として、他者とのあいだにフェアで調和的な関係を築くことを後押ししてくれています。
バランスの良い対話術を持っていれば、どこへ行っても、友達の輪が広がって、それに従って、活躍の幅を広げることができる、というのが、現在の木星の特質。
天秤座のコミュニケーションで大切なことは、相手の意見をしっかり受け取って、自分のこともしっかり伝えることにあります。
そして何度も会話のキャッチボールを重ねることで、おたがいが本当に納得できる、より良い結論に向かっていくことを目的とします。
ここで意見を言わずに相手に合わせてばかりだったり、逆に相手の意見を無視して自分を一方的に押し付けるばかりでは、天秤のバランスが崩れてしまうでしょう。
コミュニケーションのない関係は「言わなくてもわかってくれるだろう」あるいは「黙って相手に合わせたほうが波風立たずにうまくいく」というパターンに陥りやすく、そうすると、本当に大切なことを伝え合っていないため、そこには誤解が生まれて、ズレが出てきて、かみ合わなくなり、不満が生じます。
この不満を内包したまま蠍座へ行くと、それが暴露されることになるかもしれません。
そもそも、12星座のなかで喧嘩が好きな星座は、火星を守護星に持つ牡羊座と蠍座です。
牡羊座が頭にきた瞬間に喧嘩を吹っかける昭和の不良だとすると、蠍座は恨みつらみを堰溜めて、ある夜に五寸釘を打ちながら呪いを飛ばすような恐ろしさを秘めています。
どちらがしつこいかは言うまでもありません。
また、相手もはっきりと面と向かって言わない相手であれば(だからこそ、こじれるのですが)、そのまま念を飛ばし合うような事態になりかねないでしょう。
これも『隠されたものを明らかにする』の顕れです。
本来、蠍座の木星は自分のやっている学びや仕事や技術やテーマなど、なんでもよいのですが、自分の極めたいことを徹底的に深めていくことを後押しするものです。
その恩恵で、いままで到達できなかったレベルの深みまでいけるかもしれませんし、これまでよくわからなかった不可解なところまで理解できるようになるかもしれません。
しかし、不完全燃焼の不満を持ち越してしまうと、そこにこのエネルギーが向かって、影を増大させること、他者への不満を広げることになりかねないでしょう。
だからこそ、9月のあいだに、木星と天王星と共鳴しながら、不満のあるもの、ガマンしている/させているもの、古くなったもの、バランスのとれていないもの、個性が封印されているものなどを、しっかりと改善させておくと、次にやって来る流れを自分のために集中して使うことができます。
日々の生活、仕事、関係、環境など、自分を取り巻いている日常を見直して、徹底的にリフォームしておくことが、重要な時期といえるでしょう。