出会いを大切に
一両編成のワンマン電車、降りるときは切符を車掌さんに手渡して無人駅のホームへ。向かった先は、叡山電車 一乗寺駅の近く、本にまつわるあれこれセレクトショップ "恵文社" 新しい本を機能的に並べるのではなく、古くてもおもしろいと思う本や表紙のきれいな本は目立つように飾る。本との思わぬ出会いを大切にする本屋さん。最近では、丸善 丸の内本店の中にある松丸本舗みたいに似たような雰囲気の本屋さんもできてきているけど、人の家の本棚を勝手に覗いているこの感じはとても楽しい。本を手にとってはとなりの棚へ、店内を一周して最初の棚に戻ってくると、「あれ、これもいいな」って、また次の一周が始まって、、今回は時間がなくて長居できなかったけど、次回来る時は半日くらいゆっくりと本棚散策をしたいです。
出会いといえば、一乗字駅を自分の次に降りた見知らぬドイツ人の女の子、切符をどこかにしまいこんでしまったらしく車掌さんに止められてしまって、しかもこの電車はワンマンだから車掌さんが切符を回収するまでは電車も立ち往生。5分近く探し、仕舞いにはスーツケースまで開け始めてしまい、たまらず「電車も止めてることだし、、」 と、となりで言うと車掌さんもあきらめた様子で戻っていきました。その後、地図で行先を探してる間もとなりのベンチで切符を捜索中、あまりに一生懸命なので「ノープロブレム」と声をかけた後も捜索中。5分後、切符を発見した時には二人で拍手喝采でした。しばらく会話をして駅で別れて20分後、道端で偶然また出会ってビックリ。本も人も出会いの多い町でした。
水もきれいな美術館
京都の市街地から電車に揺られること30分。近くにウイスキーの "山崎" の蒸留所もある水のきれいな静かな山地に "アサヒビール大山崎山荘美術館" があります。サントリーウイスキーの蒸留所とアサヒビールの美術館が近くにあるのには、特に意味はなく偶然とのこと。美術館までは直通のバスが出ているけど、あいにくバスは出たばっかり。駅員さんに聞くと歩いても10分くらいとの事なので散歩がてら歩いて行くことにしました。とは言うものの、ここは霧の立ち込める日も多い山地、結構な急勾配で軽めの登山にうっすらいい汗かきました。
大正から昭和にかけて、加賀正太郎の別荘として建築された "大山崎山荘" その後何度かの増改築を経て、1996年に建築家・安藤忠雄設計による新館を加え、美術館として生まれ変わりました。 "地中の宝石箱"と称される半地下の円柱形のギャラリーの天窓からは、やわらかい光が差し込み、展示してあるモネの睡蓮を一層引きたたせています。が、平日で人の少ない館内、移動する度に警備員の人が影のようについてきて、尾行されている容疑者みたいな気分に。モネそっちのけでルパンごっこでした。せっかくいい空間なのに、、
天王山 中腹に位置し、木津・宇治・桂川の3河川の合流する様子が望めるテラスからの眺めは最高でした。軽めの登山でうっすらとかいた汗を吹き込んでくるいい風とアイスコーヒーでクールダウンし、意外と足にくると思われる軽めの下山に備えました。
望遠鏡をのぞいてみると
京都にある東福寺の塔頭 芠陀院。近畿地方唯一の雪舟作の庭は、京都最古の枯山水庭だそうです。4畳程の茶室に入り、丸窓から雪舟作の庭をのぞいていると、小さくなった自分が望遠鏡の中に入りこんで庭をのぞいている気分に。500年以上も前に庭の見え方を計算し、丸い枠の中にキレイに庭が収まるように設計されているこの丸窓に感動しつつ縁側に移動し庭を眺めていると、いい風が吹いてきて竹林を揺らす。笹の葉がこすれてざわざわという音が風の流れに沿って右から左へ流れて行く。枯山水庭もとても素敵でしたが、風の音にも夢中でした。
近くにある霊雲院では、そのざわざわという風の音に加え、強い風が吹くと竹のしなる音や竹同士がぶつかる澄んだ音も聴こえてきて、小一時間ほど庭と音を堪能しました。すると、掃除の時間なのかどこからともなく落ち葉を吹き飛ばす機械の豪音が、、日も暮れてきたという事で退散する事にしました。
笑顔といえば
気になる人の話をしていると、その人に出くわす奇跡がたまにあったりする。先日、友人と食事をしていると、隣の席に見たことのある顔が。なんと、俳優の堺雅人さん。なにかの台本を真剣に読んでいるようでした。最近、堺さんの話をいろんな所でよく話していたのでびっくり。
そういえば、レンタル中の 「南極料理人」 を延滞してた、なんてことを思い出しつつ食事をすませ、隣の席を見ると台本を読み終えた様子だったので、恐る恐る 「いつも見てます」 と声をかけると 「あーっ、ありがとうございます」 と、あのくったくのない笑顔で返してくれました。すごくいい人。 「ゴールデンスランバー」 映画館で観ると本人の前で宣言したので、近々映画館へ行きたいと思います。宣言しなくても観に行くつもりでした。写真は、2年前の誕生日にもらった HOLGA で撮った店の写真。
扉の向こうは、巴里
軒先に提灯の並ぶ芸妓置屋のとなりには、古い欧風の扉が。観光客でにぎわう箱根の土産物屋街の裏手には、そんないい意味で不思議な空気が漂っていました。この扉を構える洋食屋スコット。扉を開けるとそこはびっくり和製パリでした。パリと言ったら、お洒落なとかゴージャスなとか、そういうイメージを浮かべる人もいるかもしれませんが、自分にとってこの好きなものは何でも集めて思い思い飾る感じがとてもパリっぽい気がしました。
個性というと日本ではとかく敬遠されがちです。思うにそれは日本人の個性的な人や物に対するイメージがあまりよろしくないからのような気がします。元々個性を尊重するという考えのない日本の文化において、少しの個性がとてつもなく大きなものに感じられたり、そもそも自分の個性の扱い方も、人の個性の受け入れ方もあまり得意ではないような気がします。だから自分の個性を過度に主張したり押し付けたり、人の個性が鼻についたりってことが起こるのかもしれません。それにしたって、みんなが好きなものが好き、人気のあるものが好きという感覚そろそろ見直してもいいような気が、、箱根の土産物屋街の裏手のひっそり静まりかえった一角で、自分の好きなものを並べて好きな味を料理として出す素敵な個性を見つけました。
で、肝心の味の方はというと、ビーフステーキ、ビーフカツレツ、チキンのトマト煮、どれもお世辞抜きで驚くほどのおいしさで、本当は載せたくなかったんですがついつい書いてしまい少し後悔。
酒とピガール
箱根にある平賀敬美術館、シエル賞三席に輝いた出世作 「雨」 の前で奥様の平賀幸さんとの一枚。お二人が過ごしたこの邸宅は、寛永2年創業のいつかは泊まりたい憧れの名旅館 満翠楼・福住 の別荘として明治時代に建てられ、国の登録有形文化財にも指定されています。すぐ裏の山にはこのあたり一帯に供給される温泉の源泉があるらしく、美術館でもあり幸さんの住みかでもあるこの家の風情あるお風呂は1000円で貸切温泉風呂にもしているとのこと。
1965年、パリへ渡った平賀敬さんが住んだのは俗悪の華咲き乱れる歓楽街ピガール。その怪しげな登場人物を描き続け、1968年にはピカソ、藤田嗣冶らとスウェーデンのルンド美術館で「国際エロティック美術展」を開催するなど、ヨーロッパ各国で個展・グループ展を開催しました。1977年に帰国してから、熱烈なファンであった古今亭志ん生の廊ばなしにヒントを得て、日本的なものや、コミカルな設定・話の中にピガールで見た怪しげな人物を描くという独特な作風が生まれました。 日本的なものと志ん生とピガールの人々、普通では結びつかない滑稽な取り合わせがアヴァンギャルドであると言われる所以の一つなのかもしれませんが、どの要素も平賀敬さんの生きた様を切り取ったそのものであり、平賀敬さん自身であり、生前いったいどんな人だったんだろうとあれこれ想像しながら見ていました。
平賀敬さんといえば無類の酒好きで、かつて千客万来だったという客間の片隅には陶器の焼酎サーバーが今も残されていました。中の焼酎が、家の主に呑まれるのを今か今かと長期熟成しながら待っているかどうか定かではありませんが、ここに展示されている作品はこの家と幸さんに守られてこれからも熟成していくのだろうと思います。休館日だったにもかかわらず、おいしいお茶とたくさんのお話をしていただいた幸さんに心から感謝しつつ、次に来る時には是非お風呂もいただこうかと少々図々しい事も考えています。
植村直己物語
近所のレンタルビデオ屋の棚の下の方からやっと見つけました。ずっと見たかった「植村直己物語」 世界初の五大陸最高峰登頂者である植村さんの半生を描いた1986年のこの作品、西田敏行さんの迫真の演技、生死の境目であるかのような過酷な大自然の映像、Michael Hedges の力強く繊細なハーモニックスギターの音楽、、挙げればきりがないけど、とても素晴らしい作品でした。
生前、植村さんは、「冒険の喜びは、やったことが大きいか小さいかではなしに、自分の心のかけ方が大きいか小さいかということが、その人にとっての冒険の喜びの大きさになる。自分で精一杯良くやったな、満足だなと思えればそれでいいんじゃないか」と自身の講演の中で語っていました。
それは、結果や成功が求められる社会の中においては、甘い意見だと言われてしまうかもしれない。狭い社会の殻に閉じこもって、それを良しとする社会の中では理解されにくい言葉かもしれない。ただ、人生を冒険する喜びを持つことや努力を重ねていくその過程にこそ、本来人が人として生きる喜びや意味があるように思う。自分達の目の前にあるのは、キリマンジャロや北極の氷雪や、そんな大迫力のものではないけれど、目の前にある自分達サイズのキリマンジャロを精一杯登るという事が何より大切な気がします。



















