前回の温柔郷の記事は、過去記事の再掲でもあり、少し物足りなかったですよね。今回は、天官賜福の新版(2023年5月発売)の変更点・追加部分⑪です。多分少し甘めです
①賭坊で花城が謝憐の手を包み込みながら、壺皿を振る最後の一回の時に、花城が「さあ、最後の一回だ。緊張しないで」謝憐「緊張してはいませんp399」の会話がありました。
新版ではその直後に、花城が''真剣な眼差し''で、軽いけれど''揺るぎない声で''、「孤注一掷、死亦無悔(一か八か、死んでも悔いはない)」と言い、謝憐も同じように、低い声で同じ言葉を言う描写が追加されています。
一見、何気ない追加ですが、今回はもうここだけの考察を書きたいぐらい素敵なのです...。
ぱっと見、賭坊でのただのかけ声のように聞こえます。しかし、花城の謝憐に対する想いを含んでいる言葉だとしたらどうでしょうか。
八百年思い続けてきた殿下の手に、自分の手を重ね合わせながら、郎千秋や風師などの神や鬼達の面前で、いたって自然でさりげない文言で、自分の謝憐への揺るぎない想いを口にしていたとしたら。
「殿下、あなたは僕の全てだ。たとえあなたのために命を差し出しても、決して悔いはない」
そんな想いを込めて、決心を口にしていたとしたら...。
もちろん殿下に告白する勇気なんてないので、とっても臆病なのですが、神々や鬼達の面前で正々堂々と伝える大胆さ...。
もう吐血しそうです...
それに、この言葉には、二人の生き様も込められているように思います。
謝憐は常に自分の信念に「孤注一掷(全てを賭ける)」生き方をします。
その結果がめった刺しにされることでも、神台から引きずり下ろされることでも、郎千秋に棺桶に釘さしにされることでも、彼は「死而无悔(死んでも悔いはない)」と突き進んできたのです。
花城も、謝憐だけに対して「孤注一掷(全てを賭ける)」し、愛する人のために「死而无悔(死んでも悔いはない)」生き方をしてきたのです。
兵士として死んだ時も、謝憐のために死ぬことは栄誉だと思ったし、無名として代わりに消えた時も、法力が尽きて銅炉山で千万の蝶と化した時も、彼は決して後悔しません。
お互い、この言葉をこの場面で言っているのです。ここの追加は、よく味わうととても素敵で意義深いと思います
ちなみに、新版ではこの掛け声が何度も描写されています。
②「賭けに負けたら数に入れない、勝ってようやく決着がつくなど、かなり図々しく聞こえるが、それでも謝憐は面の皮を厚くして尋ねた。p403」に少し改変があります。
「賭けに負けたら数に入れない、勝ってようやく決着がつくなど、謝憐が一番困らないのが面の皮だが、それでもこの少年を目の前にすると、数百年鍛えてきたはずの面の皮がいつも足りなくなる」
他の人達の前で恥をかいても、どう思われようとも気にならない謝憐が、花城の前だけではどうしても気にしてしまうことの描写ですよね。花城だけを「特別」に感じている証拠です
③花城が賭けの品の饅頭を受け取り、「その・・冷たいですよ。少し硬くなっているみたいですしp404」と言われた後、「構わない。俺は気にしないから」と答える場面に、少し会話が増えています。
謝憐「じゃあ...もう行くね」花城「もう行くの?わかった」この時の花城の様子について''少し名残惜しそうだったけれど、ついに止めることはなかった''という描写が追加されています。
七日ぶりに会えた殿下が、行ってしまうのが名残惜しかったんだろうなぁ...
その後、花城が饅頭を一口かじったのを見て、謝憐は自分が一口かじられたかのような気がして、卓にぶつかり卓をひっくり返しそうになりながら、郎千秋を引っ張って外に飛び出した、という描写になっています。
''自分がかじられたような気がして''ってすごく分かりやすい表現ですよね。キュンキュンします
④郎千秋「本当に血雨探花なんですか?あれが本体なんですか?p407」のところが少し改変されていて、「あれが血雨探花なんですか?やはり強いですね。でも、言い伝えと少し違うように感じます」謝憐「言い伝えではどんな姿?」郎千秋「言い伝えでは八歳の子供です」謝憐はそれを聞いて吹き出します。
そこに風師の「偽の皮に決まってる!花城には百枚以上の偽の皮があるはずだし、誰も本体がどんな姿か見たことがない。あれも偽りの皮に違いない」と続きます。
ちなみにこの後、郎千秋が八歳の時に変な妖怪に付き纏われた話が出るのですが、記事82でも紹介したように「八」という数字が随所に出てきていて、こだわられています。(謝憐の八千近くの宮観、八百年、八十八万功徳... まだまだ出てきそうな気がします)
ちなみに、郎千秋が花城によって天井に吊り上げられた時に、風師は「これは血雨にされるんだろうか...。お盆で受け止めたら、何とかまた人の形に戻すことはできるんだろうか...」とお茶目なことを言っています。
⑤第一弾で紹介したのですが、旧版では花城が謝憐からもらった食べかけの饅頭をかじって謝憐が逃げた後、割とすぐに極楽坊で花城に会う流れでしたが、新版では神官三人が鬼市でそれぞれ一日地師を探し回ってから待ち合わせます。
みんな収穫がなく、まだ探していないところは残るは極楽坊なのですが、その場所が分からないので、極楽坊の場所を探るためにまた三人で賭坊に戻る流れです。
また、郎千秋が小さい頃から身につけているお守りを前日に賭坊で落としたようで、それを探しに行くという目的もありました。
この日も賭坊には花城がいました。普段は来ない花城が二日も続けて来るなんて珍しいと、鬼達は口々にします。前回もそうですが、花城は謝憐を待っていたのです。
⑥新版では謝憐達一向が賭坊の前に着いた時に、黒い衣を着た仮面を被った人が現れて、花城に会おうとします。
男「鬼市の主、花城に会いに来た」女郎「城主様は今日は客には会わない」と返しますが、女郎は謝憐を見つけるや否や、恭しく「道長どうぞ、長らくお待ちしてました」と言い、中に連れて行きます。
広間に着くと、長い卓の奥に花城がいて、賭坊の中で唯一座っていて、二つ目の椅子が謝憐の後ろに差し出されます。花城は謝憐を見て、「こちらの兄さん、今日も遊びに来たの?」と声をかけます。
謝憐は思わず、少し笑みをこぼし、まだ何も言っていないのに、一人の女郎が謝憐に両手でお守りを差し出します。
謝憐「どうしてこれを取りに来たのが分かったの?」花城は笑みを浮かべながら「兄さんのことで知らないことがあると思う?」と返します。
この時、黒い衣を着た男が「この世で最も呪われた剣を持ってきた」と言って、邪悪な黒い気が纏わり付いた''芳心''を差し出します。その剣を賭けの品にして、花城と賭けをしたいと言い出します。賭け方は、芳心と厄命をお互い持って、どちらかが負けるまで、それで攻撃し合うものでした。
謝憐は、花城が男の持っている''芳心''を欲しいあまりに、その賭けに乗りそうなのを見て、(どちらにも怪我をしてほしくなかったのか、花城に怪我をしてほしくなかったのか)「待って!その剣は芳心じゃない普通の剣だよ」と言って、邪悪な黒い気が纏わり付いたその剣を掴みます。
すると次の瞬間に邪悪な黒い気はたちまち消え、他の鬼達も触れるぐらいの普通の剣になってしまいました。
黒い衣の男は「芳心ではないと言い張るのなら、もう賭ける必要もない」と言ってその場を去ろうとしますが、花城が呼び止め、厄命を卓に起き、「次の瞬間、お前が木っ端微塵になることを賭ける」と言います。
言い終わった瞬間、厄命の穏やかに眠っていた目が突然開き、紅い宝石のような瞳が紅い光を放ちます。男は後に下がりましたが、間に合わず、木っ端微塵になりました。厄命は鞘から出てさえいないのに、目を開いただけで男を木っ端微塵にしたのです。
そして、ここで現れた風師によって、郎千秋がしばらく前からすでに中にいたことが分かります。郎千秋は「芳心」を見つめたまま、何とも言えない顔をしていました。
この描写が、後に郎千秋が謝憐が芳心国師だと気が付くきっかけの一つになります。鎏金宴の直後、数百人の法師でも''芳心''を鎮めることができなかったのに、賭坊で謝憐が握った瞬間に黒い邪気が全て散ったのです。それは剣の主人だからこそできたことなのです。
⑦風師達が地師を探す時間稼ぎのために、ここで謝憐が花城に賭けを挑みます。
女郎「道長は城主様とどんな賭けをしたいのでしょうか?金銀財宝、百年の法力、十回の幸運、それとも福地がいいですか?」と聞かれて、謝憐は、
「いや、この世にある一切のものを私は望まない。ただ花城主に、一晩一緒にいて欲しいんだ」と言います←第一弾でご紹介しましたが、何度でも書きたい!
花城はそれを聞いて、驚いてまばたきします。賭坊の空気も固まって、女郎達も呆気に取られます。
「何を言ってるのか分かってるのかな...度胸強すぎだろ...」鬼達も口々に囁きはじめます。花城はそれを聞いてついに吹き出します。
花城が吹き出したのを聞いて、他の鬼達も騒ぎ出し、謝憐は自分を見る奇異な視線に溺れそうになり、やっと変な誤解を招いたことに気がつきます。
「ちょっと待って!ただ花城主に鬼市を案内してほしくて。....変な要求はしないよ!・・・本当に違うんだ!」慌てて説明しますが、説明すればするほど逆効果です
顔を隠すべきかどうかも分からず、先ほどまで自信に満ちていたのに心が折れそうになって、「本当に変な意味はないんだ...」と言います。風師「知ってるよ。でも聞いたらちょっと...ね」
花城はやっと笑い終わり「いいよ」と言います。花城は片手で編み込みの''紅い珊瑚珠を弄びながら''言います。「でも、こちらの兄さんが望むものは、あまりに貴重だから、俺も初めてなんだ。適当なものではなく、それに見合う賭けの品として出してくれないと」
謝憐「確かに適当じゃいけない」
花城「でも、忘れてたらいけないから言っておくけど、兄さんが持っていた最後のものは、昨日負けた時にもう貰ったよ」
饅頭のことです。
謝憐は焦りながら、体中を探しますが、やはり何も出てきません。
ある鬼が言いました。「道長、もしどうしても何もないなら、負けるごとに服を一枚脱いでいったら?」周りはみんな爆笑しますが、「黙れ!」と花城は軽く怒鳴ります。
この後女郎に「その首につけてるネックレスは?」と聞かれて謝憐が断り、最終的に何もなくて謝憐自身が賭けの対象になります。このあたりは記事71で紹介しています。
第一弾で紹介した部分ですが、少し詳し目に見ていきました。甘すぎますね。もう大満足です
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甘い箇所ではないですが、細かいところで他にも改編があります。
郎千秋「こんな場所を開くなど、貴様らにはまったくもって人間性の欠片もない!」と言った後に、花城が「この場所は元々地獄の祭りだ。天界にちゃんと道があるんだからそっちを歩けばいいものを、門すらない地獄に勝手に入り込んできておいて、いったいどういうつもりだ?p386」と返す場面がありました。
新版では、「賭坊が大事にするのは公平さで、人間性などは必要ない。公平さを求めるなら鬼賭坊にやって来ればいいし、恥知らずを見たければ天庭に行けばいい」という文言に変わっています。
個人的には大筋には影響のない細かい改変なので、紹介してもしなくてもいいのかな?と思う部類なのですが、(私があまり深く吟味できていないだけかもしれませんが...)こういった改編も吟味したい!という要望があれば、こうして最後の方でまとめて紹介しようかなと思っています。もし要望があればまたお知らせください
少し深読みかもしれませんが、もし多少強引に解釈するとしたら、花城が司る鬼市では、実力がある者には生前の身分も何も関係なく、皆等しくチャンスがあり、そう意味の公平さを大事にしているのかな、と思いました。
もしかしたら花城が人間だった時、生まれた家や環境の違いによって、得られない機会が多いこともきっとたくさんあったのではないかと思います。
それか、鬼になる人は皆何らかの執念を持っているので、鬼市にいる鬼の中で生前、不公平なことで苦しんで亡くなった姿を見て、鬼市では公平さを大事にしているのかな、とか。
些細な改編ですが、いろんなことに思いを巡らせることができます。
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余談です。
コメントを通して業務スーパーの話が出まして、
確かに業スーは最近中華系の食材の取り扱いが多く、チンして食べられたり、焼くだけで食べられるものが多く、主食やおかず、デザートまで揃うので、誕生祭はもし作る余力がなければ、業スーで気になるものを揃えるのもありだなと、ふと思いました
無性に近々、業スーのパトロールをしたくなりました
皆様いつも素敵な情報をありがとうございます