天官賜福の新版(2023年5月発売)の、改編されている箇所その②です。このあたりは追加情報が多すぎて、丸々物語が追加されていたりします。ボリュームがあるので、大事そうな部分をかいつまんで紹介します。

・半月がなぜ永安国にいたのかの説明が追加されています。謝憐が死んだふりをした時に他の死体とともに川に流されたので、謝憐の死体(正確に言えば踏まれすぎて気を失っているだけなのですが)を追っていたら永安国に着いたとのことです。そこで裴宿の家族に助けられて裴宿と知り合ったことや、裴宿の飛昇前の理不尽な経験(家族が罪をでっち上げられて流刑になったこと、最後まで救い出すことができなかったことなど)や、蛇の操り方を半月が教えたことなどが描かれています。

 

・三郎が本来の姿を「醜くても見たい?」と尋ねる場面で少し会話が増えています。謝憐「男にとって見た目は大事じゃないと思うよ・・」花城「そう?結構大事だと思うけど」謝憐「全然大事じゃない。もし誰かが外見のことで君を攻撃するなら、他に攻撃する理由がないってことだ。そう、もしかしたらそれは嫉妬かも。それは君が優秀ってことの裏付けだよ。この世界には外見を気にしない人がたくさんいる。私も気にしたことなんかない。私たちはもう友なんだから、友には誠実でありたい。君がたとえどんな姿でも・・・三郎笑わないでよ!」

 

・三毒瘤の解説が追加されていました。三毒とは「色・銭・権」のことだそうです。色はもちろん女癖の悪い裴茗将軍、銭は水師(師無渡)、権は霊文のことだそうです。

 

・郎千秋が飛昇した理由が追加されていました。仙楽国が滅びた時、亡霊がたくさんあって黒雲を成していて、怨念が凄まじかったところを、郎千秋が十二歳から度化(導いて救うこと)し初めて、ついに弱冠の年(二十歳)の時に全て度化が終わり、功徳がたまって飛昇したとのことです。この後、謝憐が郎千秋に会った時に、仙楽国の亡霊を度化したことにお礼を言う場面もあります。旧版では郎千秋がどうして飛昇したのかの説明がなかったので、追加されたことですごく腑に落ちました。

 

・風師と謝憐が女鬼達の後ろについていって鬼市に向かう場面で、女鬼達の会話が増えています。簡単にまとめると''城主様に会えたらいいな。一目見るのは本当に天に昇るよりも難しいよね!見たとしても偽の皮だしね。偽でもどの皮も素敵だからいいじゃない!遠くからでもいいから一目見たいわ。遠くから一目見るだけでも心の中がとても甘くなるの。’’みたいな会話です。いかに普段花城に会うことが難しいか、そして花城がいかに女鬼達に人気なのかの描写が増えています。

 

・女鬼達の会話を聞きながら、風師が謝憐に「血雨探花とはどういう関係なの?情緒が読めないし、気まぐれだし、恐ろしいし、気をつけないとね」と言う場面があります。謝憐は「性格良いよ。礼儀正しいし、人に優しい。子供みたいなんだ」と言いますが、それを聞いて風師はすごい目で謝憐を見ます。

 

・鬼市で女鬼に絡まれて謝憐が「勃たない」と言う場面が「無理なんだ」に変わっていました。

 

・花城が謝憐からもらった食べかけの饅頭をかじって謝憐が逃げた後、割とすぐに極楽坊で花城に会う流れでしたが、新版では神官三人が鬼市でそれぞれ一日地師を探し回ってから待ち合わせます。みんな収穫がなく、まだ探していないところは残るは極楽坊なのですが、場所が分からないので、極楽坊の場所を探るためにまた三人で賭場に戻る流れです。

 

・賭坊の前に飾ってある、見るに耐えない文字が、謝憐の言葉に反応して姿・形を変える描写があります。「もう少し綺麗な字にならない?」と言われて、頑張ってよじって何とかマシな姿になろうとしますが、見るに耐えない別の姿になるだけなのです。「いや、もういい。元の方がまだマシだ」

 

・再び賭場に戻った後、謝憐は花城に賭けを挑みます。もし謝憐が勝ったらどうしたいのか?と尋ねられて、謝憐は「この世にある一切のものを私は望まない。ただ花城主に、一晩一緒にいて欲しいんだ」と言います照れ花城はそれを聞いて驚いてまばたきします。空気も固まって、賭坊の女郎達も呆気に取られます。「何を言ってるのか分かってるのかな...」鬼達も口々に囁きはじめます。謝憐は変な誤解を招いたと思って、「いや、その...ただ鬼市を案内してほしくて....変な要求はしないよ!・・・本当に違うんだ!」慌てて説明しますが、説明すればするほど逆効果になります笑い泣き

 

その後、負けた時どうする?と尋ねられて、女郎に「その首に付けているネックレスは?」と尋ねられて、謝憐は「これはダメ」と断ります。花城「どうして?」謝憐「これは貴重すぎて、そんな簡単に扱ってはいけない」花城「貰ったなら好きにしても良いのでは?」謝憐「もっとダメだ。貰ったからにはその人の気持ちを大事にしないといけない。賭けの対象にするなんてもってのほかだ」と言います。

 

謝憐は負けた時の賭けの対象を体中探しますが、何も持っていません。「どうやら私自身しかないみたいだ・・」花城「じゃああなたで」と言うことで、花城の一晩と、謝憐自身が賭けの対象になります。

 

この賭けでは謝憐は機転をきかせて、運気ではない部分で勝負します。五回戦で、壺の中の物に関して当てる賭けをするのですが、秀逸でした。例えば、壺の中のものは赤か白か?という賭けでは、謝憐は「赤」と答え、法力を送って壺を熱し、中のものを真っ赤っかにしたのです。それでも色々あり謝憐は負けます。この流れで、二人で極楽坊に向かうことになりました。

 

・極楽坊に着いた時、女鬼達が艶かしく踊る奥に、花城がいる描写があったと思うのですが、この女鬼達についての記述が増えています。天井の瑠璃鏡が映し出したのは彼女達の真身、骸骨でした。この女鬼達は、生きている時に水商売をしていて死んでからは埋葬もしてもらえない最期を送った女性達だったのです。生前は他人のために踊りますが、死んでからは自分達のために踊っている、そんな描写でした。

 

・花城は服装が変わっていて、白い中衣の首元が少し開いていて、紅衣は肩まで滑落していて、さっきまで着ていたものに比べてラフで、それでいても華やかで、家の中で着る部屋着みたいだと謝憐は感じます。こういう追加、嬉しいですよね。

 

・極楽坊で花城に会って「前に見せたくないと言った本来の姿はこれだったの?」と尋ねると、花城は少し肩が固まります。謝憐「すごく良い」花城「どこが?」謝憐「前にあんな怖いこと言ってたから、心準備してたけど、少し高くなって、少し大きくなっただけじゃないか」花城は笑います。

謝憐「誰も血雨探花の本当の顔を見たことがないけど、初対面でお互い誠実なのは良いことだと思うよ。みんなこれも偽の皮と思ってるけど、私だけが本物だと分かっている。秘密を知っているようで、良くない?」花城「兄さん、口が上手いね」謝憐「上手いんじゃなくて、本当にかっこいいからさ」花城は少しびっくりして「兄さん、からかわないで」と言います。謝憐「からかってない。花城主は風采卓越、才能抜群、私は敵わないよ」としっかり褒めます。前に彼が容姿は大事だと言った会話を思い出し、彼が自信を持てるようにしたのです。

 

・「極楽坊は花柳(遊郭)で、花柳に連れてきたの?」「哥哥、僕は花柳なんて行ったことないよ「そうなの?行かないの?」「哥哥、僕の顔はそんなふうに思われる顔をしている?」「行かないならそれは良い。身も心も鍛えて磨くことができるから、今後も行かない方が良い」「哥哥の言いつけをしっかり心に留めておくよ」

 

・金箔のくだりの、謝憐が子供の頃の振り返りがなくなっています。極楽坊の寝台で話したことが一部後ろに回っています。下弦月使についていって部屋の扉の前に着いた時、花城が後ろから声をかけてきます。「君の家は大きすぎて迷子になったよ」「ここは居所で、家ではない」の会話がここで出てきます。

その後、歩きながら、「ネックレスを賭けの対象にしなかったのは嬉しかった」と花城が言います。「貰ったからには大事にする。いつか返してほしくなったらいつでも言って」「何かしたことを後悔したことはない。贈ったなら返してもらうこともない」「''孤注一掷、死亦無悔''かい?」(新編で賭坊で賭け事をする時に女郎が言う決まり文句「一か八か、決めたら死んでも悔いはない」みたいな意味。花城の骨灰とこの言葉が結びつくと、何だかとても心が揺れますおやすみ

 

・武器庫を謝憐に紹介して丸ごと贈ろうとするくだりは、私が読んでいたネットの旧版にはなく、日本語訳の小説とアニメにはあったので、新版を反映している箇所だと思います。武器庫を紹介してもらって、宴の準備ができたと声がかかった時に、謝憐が武器のことで興奮しすぎたのか、自分から花城の手を引く描写があります。

 

・宴の席について、女郎が次々とご馳走を持ってきた中にウインクする風師を見つけ、謝憐が焦ります。旧版では風師はそのまま下がりましたが、新版では近くに立ちます。謝憐は花城にお酒を勧められて、お酒は禁を破ることになるからダメなんだと断ります。花城が振り返ろうとすると、風師を気付かれまいと謝憐が慌てて花城の肩を掴む描写があります。

 

花城「何かあるなら遠慮せず言って。急にどうしたの?」謝憐「・・やっぱり・・お酒もらうよ」「でも、禁を破るんじゃないの?」「三郎となら禁を破っても構わない!」←おねがい「そうなの?でもそれだと申し訳ないな」「いや、大丈夫。前にも禁を破ったことあるし」「お。それは酒の禁?それとも.....」←おねがい「色の禁はない!絶対ない!これまでもないし、これからもない!」←おねがいそれを聞いた花城は、嬉しいのかめんどくさいのか分からない表情をします。会話が終わってまた振り返ろうとする時に、また肩をしっかり掴む描写があります。

 

・その後二人で宴をするのですが、なんと宴会場がすぐさま画舫(華やかな遊覧船)に早変わりして、二人で湖で宴をします。その湖には鬼王への祈願が色々流れていて、見てみると、「明日墓を盗掘しに行くから、どうかお金持ちの墓でありますように」「自分より頭の良いライバルがみんな死にますように」みたいな罰当たりな願い事ばかりなのです。しかし、花城は見ることさえしません。「人に頼るより、深淵を這い出そうとするなら自分でなんとかしないと。毎回誰かが助けてくれるわけじゃない」そう言います。謝憐「でもたまには叶えてあげないと、鬼王は祈っても全然効果がないって言われない?」「別に祈願してほしいとは思ってない。それに、願い事があんな願い事ばかりだから、叶わなかった時にみんな他人に言えない」

・・・鬼王への祈願内容、面白すぎます。鬼王の需要はこういうところなんだと腑に落ちました笑い泣き花城には信徒がとても多いことを考えると、罰当たりな祈願をする人もいかに多いのかがわかります。

 

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やっぱり結構追加されていますね。10万字の追加があったそうですが、10万字は原稿用紙に直すと250枚分あると考えると、結構追加されている気がします。会話部分などは少し長いので正確には訳さず、簡単に意訳にしています。裴宿の過去や、郎千秋の小さい頃、飛翔前のことが追加されていて、よりキャラクターが理解しやすくなっている印象です。