遥か地平線の彼方へ(Moira)の考察 | これだけで全て分かるSound horizonの考察

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こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

この曲は奴隷生活からの逃亡のあと、エレフがどうなったかについての曲です。

エレフは嵐に遭ってミーシャとはぐれた後、ミロスという詩人のおじいさんと出会い、一緒に旅をすることになります。

そのお爺さんは物知りで、神話について語ります。

旅の途中、エレフの育ての親の墓を見つけてしまいます。

その後は、ミロスと別れて旅をつづけ、エレフは子供から大人になります。

それでは、この曲の歌詞とセリフを見ていきましょう。



【暗誦詩人と其の弟子】
(Milos, blind poet and his disciple.)

「遅ぇぞジジイ、置いてくぞ」

「ほっほっほっほっほ…」


少年の今は旅の空 賢人の詩も上の空

幾年も仰ぐ高き空 老人は嗤う蒼き空

少女を尋ね幾千里 海原渡り征く海里

彼女を捜す侭山里 高原臨む彼の郷里


ここは、エレフとミロスが一緒に旅をしている様子です。

「少女を尋ね、彼女を捜す」というのは、ミーシャを捜しています。

ただし、エレフがなぜミロスと旅をしているかは、謎のままです。



「言の葉を操り森羅万象を詠う」

「詩とはそもそも神の御業じゃ」

「エレフ、創世の三楽神を知っておるか」

「ほっほっほっほ…」

「…リスモス、メロス、ハルモニアの三柱じゃ…」

「…そんな一度に言われても覚えらんねぇよ…。」

「ほっほっほっほ…」


「万物の創造主たる母なる者……」

「リスモスはミラ、メロスはモイラと呼んだそうじゃ」

「前者はパイロン、後者はアルタラーイコンと呼ばれ…」

「それこそが言の葉の起こりと言われっ、ごほっ、ごほっ……!」

「大丈夫かい爺さん?」

「ああ……」

「今日はこのあたりで休もうか?」

「はぁ…。ほっほっほ…」


リスモス、メロス、ハルモニア。
これらの神様はトラック3、「神話」でも出てきます。

サンホラでは神様のことについて、「神話」のトラックだけでなくもう少し名前を出しておきたかったのでしょう。

この物語のもとは運命の神Moiraですが、その他の神様も大事でしょうから。

ちなみに、リスモス=リズム、メロス=メロディー、ハルモニア=ハーモニー
と、どれも音楽に関係することですね。

そのあと、お爺さんは歩き疲れてしまいます。

そして二人はその日は歩くのを止め、地面に座ってゆっくりします。



続いて、

「天(そら)の隨(まにま)に 咲ける星屑」

「運命(かぜ)に惑う一片(ひとひら) 寄り添う双星(ふたぼし)」


「あれぞ、お主の星じゃ」

というミロスのセリフから二人は星を見ているのですが、二つの星が隣同士にあり、まるでエレフとミーシャの双子の子に思えたのでしょう。

だから「お主の星じゃ」と言ったんだと思います。なんともゆったりした雰囲気です。

なんだか、奴隷として働かされていたのを忘れたかのようです。



嗚於…故郷よアルカディア  倖せだった
 
幼き日々の  未だ眩く 

二つ並んだ 野晒しの墓標

朽ちた花飾り 葬ったのは誰ぞ?


「あぁ…。父様…母様…!」

「気を落とすでないぞエレフ。
わしはこの先、雷神殿(ブロンディシオン)に行こうと思うておる。
師弟ごっこは此処で終いじゃ。」

「お師匠…!」

「さぁ、お立ちなさい友よ。お主は、お主の地平線を目指して…!」


やがて二人はアルカディアの地にたどり着きます。

このやり取りから分かるように、エレフの育ての両親(ポリュデウケスとその妻)は、
死んでしまっていました。

ポリュデウケスはスコルピオスに殺されました。

お母さんはエレフとミーシャを連れて逃げる途中、追手に捕まり、エレフとミーシャは捕らえられ、お母さんは別のところで殺されたと考えられます。

そしてここで、エレフとミロスは別々の道を歩んでいきます。



青年は今も旅の空 詩人の島は遠き空

聖女を尋ね復千里 恩人と別れ復海里

同じメロディーで、少年→青年と歌詞が変わっているので、エレフはここで大人になりました。

そしてミーシャを捜して長い旅を続けます。



「エレフ、困ったときはレスボス島を訪ねなさい」

「わしの旧知の友が力になってくれるじゃろう…」

「マケドニア、トラキアは今危険な情勢じゃ…」

「戦を避けるには海路を行くが良いじゃろう」

「友よ、己の信じた道を行きなさい。死すべきもの、我は詠おうぞ。ЭЛэфсеиа(エレフセイア)…愛すべき友を…戦いの詩を…」


このセリフから、ミロスの友がレスボス島にいることが分かります。

レスボス島は神域なので、ミロスも神聖な力を持っている可能性が高いです。

また、あちこちで戦があることが分かります。

この後エレフは、レスボス島へと海を渡っていきます。

このレスボス島には実はミーシャが流れ着いていて、ミーシャは島で暮らしています。

やがてエレフはそこで再開するのですが、悲しい再開の形になります。



そして曲の最後に、おまけの噂話が入っています。

おそらく街人の誰かの声でしょう。

【港を賑わす風の噂】

「おい、知ってるか、アナトリアの武術大会の覇者」

「弓の名手オリオンだろう」

「そう、そのオリオン。何と蝕まれし日の忌み子、捨てられた王子様だったらしいぜ」

「ええ、世の中一体どんなてるだなぁー」

「その真意は――」

「「Moiraのみぞ知る」ってか?」


ここは解釈が非常に難しいところです。

この会話からオリオンは捨てられた忌み子であるかのように思えますが、本当の忌み子はエレフとミーシャで、その身代わりとしてオリオンが捨てられたんだと考えています。

トラック6、「雷神域の英雄」の最後でポリュデウケスが「ここは私にお任せください」と言ったのをみると、アルカディアの第二子、エレフとミーシャを守るためにオリオンを身代わりに捨て、エレフとミーシャを引き取ったと。

オリオンはこのポリュデウケスの息子である可能性が高いです。

その後、捨てられたオリオンは奴隷にされてしまったと考えられます。

というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!