横浜市内には、坂の多い港町らしく,、丘の上だったり海のそばだったり…それぞれの町の個性を持つ図書館が各区に1館ずつ全18館あります。中でも横浜市中央図書館はそのセンター機能を持つ図書館として多くの市民に利用されています。
図書館利用促進プロジェクト<横浜・鎌倉版>トップバッターは、この横浜市中央図書館。あまり知られていない奥の仕事と図書館を中心とした寄り道スポットを2回にわたってご紹介します。
横浜市中央図書館の成り立ち
中央図書館の歴史は古く、大正8年(1919年)ちょうど開港60周年、自治制30周年記念の事業として建設が計画され、大正10年(1921年)、横浜公園内での閲覧開始で開業した横浜市図書館が前身です。
大正12年(1923年)関東大震災では建物と蔵書を焼失。昭和2年(1927年)現在の場所に移転し、その後戦争の影響などもあって数度の移転を繰り返したのち、平成6年(1994年)横浜市中央図書館として現在の建物での開館となりました。
最寄りの京急本線「日ノ出町」駅から徒歩5分。野毛坂の途中にある、5階建ての落ち着いた建物です。
知られざる図書館の仕事
本を借りたり、調べ物をしたり…本が揃っているのがあたりまえの図書館。そのあたりまえの奥に、実は多くの仕事があります。たくさんの人の手によって本が選ばれ、手入れされ、保存されている、そんな現場をご紹介します。
1 本が利用者の手に届くまで
●本を選ぶ 全館資料調整会
絵本や雑誌、小説、学術書…膨大な本が揃う図書館。横浜市内の図書館では市民からの寄贈本のほかに、昨年は各館4,000冊~5,700冊ほどを購入(中央図書館は約21,000冊ほど。2015年度横浜市立図書館年報より)。
横浜市立図書館では各図書館の中で話し合って本を選んでいます。さらに、全館で調整が必要なことを話し合う場として「全館資料調整会」があります。大人の本と子どもの本で分けて、各館の司書さんが、それぞれ週1回、中央図書館に集まっています。
写真は子どもの本の調整会。18館の児童書担当司書さんが、新刊書を分担して読んで、内容を紹介します。それを基に、各館で購入するかどうかを決めているのです。「予約で取り寄せなくても、訪れた図書館でその子に合った本と出会えるように、蔵書を構成していくことが重要だと考えています」。子どもの成長は早い…そのときどき子どもに必要なものがすぐに用意できるよう配慮されているのです。
●図書館の蔵書のしるし 装備室
こうして選ばれた本は、4階装備室でカバーやラベルが施され、図書館ごとに分類されて市内の各図書館へと運ばれていきます。毎日膨大な量…。
常時10名くらいの委託スタッフさんが月曜日~金曜日の毎日作業にあたります。本によってカバーの付け方など装備も異なります。作業しながら落丁も見つけたりしているそうですからもう職人技。
ちょっとおまけ 憩いの場
4階バックヤードのラウンジはゆったりした憩いのスペースです。図書館で仕事をしている委託スタッフさんたちもお弁当を食べたり、休憩などに使っています。給湯器や飲料の自動販売機のほか、畳スペースには囲碁盤も。
司書さんたちももちろん利用。時にはちょっとした密談にも利用したり…?
こうして貸出のための装備が施され振り分けられた本は2階の配送室へ。そのほかにも、各館からの取り寄せ本も一旦中央図書館へ集められてから輸送されるため、膨大な量の本がこの部屋に集まります。振り分け作業は毎週月曜日~土曜日、配送車の発着に合わせて行われます。
また、市内の図書館だけでなく、KL-NET(*1)により神奈川県立図書館や県内の一部の大学図書館の本も借りられるので、こうした本も配送室に集められます。(*1神奈川県図書館情報ネットワーク・システムのこと。詳しくはhttps://www.klnet.pref.kanagawa.jp/common/network.htm
)
●そして運ぶ 連絡車
図書館から図書館へ、本を運んでくれる連絡車。方面別に6~7コースに分かれて月曜日から土曜日ま
午前中、各図書館から集まった本の山。中央図書館行の荷物を配送室に下ろします。
配送室から駐車場へ。各館への荷物をベルトで固定して運びます。汗もふかなくては…
荷物を積み終え、お昼を食べたら出発。
坂を下って、待っている人のところへ…。
雨の日も雪の日も
こうしてたくさんの人の手を経て
図書館の本は届けられています。
●本の棚卸 図書特別整理日
横浜市の図書館では図書特別整理日として、18館が6グループに分かれ、順番に1年に3日間休館しています。中でも蔵書数が多く、規模の大きな横浜市中央図書館は唯一単独での休館です。
この3日間の作業は館内の本の整理、確認のほか、開館中にはできない機材のメンテナンスなどにもあてられています。
地下1階~5階まで各フロアの書架の本一冊一冊のバーコードを手作業でチェック。誤配架(他の図書館の本、書庫本)やこわれ本を抜き出します。チェックの終わった棚の側面にはピンクの紙が貼られ、複数の人が関わる作業がスムーズに運ぶよう段取りがされています。
手慣れた担当者さんによると「一日にひとりあたり9000~1万冊チェックします」とのこと。利用者さんのいない広いフロアで黙々と作業は続きます。
ちょっとおまけ
休館日に活躍する場所があります。それがここ↓
返却ポストの内側では、入口から滑り込んだ本が続々と箱の中に積み上がっていました。
これらの本も通常の返却処理をします。
ちょっとおまけ トレベーター
地下の書庫から5階まで館内に本を運ぶトレベーター。
●おはなし会、本の修理、書架整理…ボランティアさんの力
図書館の中の仕事で実はとっても活躍されている存在、それが図書館ボランティアさんたち。その活動内容をサービス課の入舩康子さん(右)、川内直美さんにうかがいました。
「横浜市中央図書館では平成21年4月から読み聞かせボランティアさんに活動していただくようになり、現在は図書修理、書架整理の3つの部門で延べ100名のみなさんにご協力いただいています。どの分野も養成講座を受けていただいています。第4水曜日の定例おはなし会と土曜日のおはなし会は、ボランティアさんに担当していただいていますし、図書修理ボランティアさんには年間3,500冊ほどの修理をしていただいています。書架整理では司書の目の行き届かないところや利用者目線での本の傷み具合のチェックなどしてくださっていて助けられています」
できること、興味のあることから図書館に関わり、そこから人と人とのつながりも生まれる…ちょっと素敵な図書館と地域とのつながり方といえるかもしれません。
ちょっとおまけ ボランティアさんってどんな人たち?
「図書修理ボランティアのベテランさんはすでに職人技レベル。書架整理ボランティアさんは鮮やかな緑のエプロンを付けて館内本棚の整理に余念がありません。読み聞かせボランティアさんには今年若手もひとり加わりました。」(入舩さん談)…なんと多彩な顔ぶれ、町の人の力は侮れない!
横浜市中央図書館、寄り道スポットや司書さんたちのご紹介は第2回 へと続きます。
取材協力/画像・資料提供_横浜市中央図書館 取材_ 安木由美子