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お互いに一瞬の沈黙の後、突然クーモが口を開いた。

「ケイコが言っていたモデルって言葉の入った本は何冊か見たことがあるし女優とか言う言葉の入った本も何冊か見かけたな・・」

そうクーモが言い出すと敬子の表情にはかすかに笑みが出た。

「クーモその本がどこら辺にあるか解る?」

「多分、解ると思うけど・・」

「今からその棚に言ってみよう」

そう敬子はクーモを促し二人は目的の棚に向かって歩き出した。

今まで来た道をどの位戻ったのかだろうか代わり映えしない景色を歩き続け突然、クーモが立ち止まり考え込んだ。

「ここかなあ」

「ねえ、クーモこの棚なの?」

そう敬子がクーモに向かって聞くとクーモは自信なさげに敬子の顔を見つめた。

「たぶん」

「たぶんて、何よ」

「だってそんな言葉があったなって思うんだけど具体的に何処の棚のどの場所にあるのかまでは記憶を思い返せないんだよ」

「でもね、クーモの本を取り戻すためには今はクーモの記憶に頼るしかないのよ」

「んんん・・・」

腕を組み目指した棚の前でじっと考え込むクーモは何時までも棚を見つめ動かずにいた。その様子を敬子はだまって見つめていたがいくらたっても動かないクーモに痺れをきらし敬子はクーモの後ろに腰を下ろした。

考え込んでいるクーモを見つめ敬子は昔を思い返していた。

(私の優貴と沙紀はいったいどうしたのだろうか?二人は幸せな結婚をして子供を設け幸せな人生をまっとうしたんだろうな、きっと。夫の隆史は私が居なくなって二人を立派に育て上げるのにどれだけ苦労したんだろう)

敬子の脳裏に思い出す家族の顔は敬子に笑顔を投げかけ、その笑顔を重い出すたびに敬子の胸は締め付けられるばかりであった。

クーモが突然振り向き敬子の顔を見て驚いた様子で声をかけた。

「どうしたんだい、ケイコ」

「えっ」

敬子の瞳からは大粒の涙があふれ出るようにこぼれていた。

「何でもないの」

照れ隠しをしている敬子の様子にクーモが何かを気が付いた様に話し始めた。

「俺もここに来た時はパパやママ、弟や妹の事を思い出して良く泣いていたよ、敬子の涙の意味は俺には解らないかも知れないけどもしその涙が家族に対しての涙なら幾らでも流して良いんだよ、だってその涙の分だけ敬子が家族を愛している証なのだから」

そうクーモに諭されると敬子の見上げた瞳からは涙の粒から一変して滝のような涙がこぼれ溢れた。

「ありがとうクーモ、私はあなたと出会えて本当によかったわ。

私が絶対にあなたの一冊も見つけてあげるからいっしょに頑張ろうね」

そう言って敬子が腰を上げようとするとクーモが右手を差し出した。その右手に敬子が手を差し出しクーモは優しく敬子を引き上げた。

「それで、クーモ何とか思い出した?」

「う、うん、まだ自信はないんだけどなんとなくここら辺りだったかなという場所は思い出してきたよ」

クーモが指差した場所は棚のセンター上部であった。

「あそこか・・それではあの辺りの本を全部読んでみようか?」

「そうだね」

二人は棚の一番端にある階段を本棚の真ん中までずるずると引っ張って来た。

階段にはクーモが登りセンターの一番真ん中にある本を二冊、ヒョイと抜きクーモが手馴れた様子で降りてきた。その本の一冊は大きくて厚く、もう一冊は小さくさほど厚くもない本であった。

何気ない顔をしてクーモは敬子に大きく厚い本を差し出した。受け取った本を見つめクーモの顔を見ると先ほど大人びた言葉を発していた様子は微塵もなくその顔はいたずらをしている子供の様な笑顔でクーモはケイコを見ていた。

「クーモ!リリィならきっとこう言うわよ、レディファーストって言う言葉を知らないの?」

その言葉を知ってか知らずか、クーモは笑顔で自分の持っている本を敬子に差し出し本を入れ替えた。


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リリィと別れその場を少し離れた場所で二人は考えていた。

「どうしようかクーモ?」

「んんん・・どうしようと言ったって俺にもどうしらいいかなんて解らないよ」

敬子もクーモも何のアイデアもなくこの難題を受けてしまった事を今更ながらに後悔した。

「まあ何はともあれ彼女は今の美しさを次の世界まで持って行きたいと言った事がすべてなのよね。だから次の世界でもその美しさを表現しているような人生の一冊を探してあげればいいんじゃないかしら」

そう敬子は言葉に出しながら自分を納得させた。

「そうだ、スーパーモデルとか女優なんて良いんじゃないかしら、そういった女性は皆美しくて華やかな世界で自分を表現しているんだから」

「スーパーモデル?女優?なんだいそれは?」

そうクーモが聞くと敬子は一瞬ハッと思い、クーモにモデルと女優といった職業を説明した。

「モデルって言うのは洋服をより良く見せるための人よ、その服を見る為に多くの人が集まった場所で歩き回ってその服を見せて回る人、女優とは物語を演じる女性、クーモの生活していた村だって昔から伝わる話があるでしょ、その話を演じる人よ」


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そう説明するとクーモは解っているのか解ってないのか中途半端なカラ返事を返した。

 

説明をクーモにしている時に敬子は先ほどの事を考えていた。

「ねえクーモあなたはリリィの事を知っていたようだけどこの世界に来て何回会っているの?」そうクーモに聞くとクーモが不思議そうな顔をして敬子に答えた。

「そうだな、俺がここに来てからどのくらいだろう棚で言うと百個も読んでないかな、気が付いたらたまに出会うようになったんだ。最初は挨拶をしたりして言いやつだったのだけど、何時もフラフラしていてたまに本を軽く読んではすぐに投げ捨てていたよ。あいつは本気で探す気があるのかなあ?」

そう聞くと敬子は納得したかのように薄ら笑いを浮かべてクーモに話し始めた。

「彼女はねえ、最初はきっと自分の本を探していたのよ、きっと。

だけど読んでも、読んでも自分に合う本が見つからなくて段々とイライラし始めたのよ!だからフラフラ徘徊するだけで真剣に本を読むことが億劫に思い始めたんだわ、クーモと出会いあなたがもしかしたら、と選んでいた本の山を見つけた時にきっとリリィはこの事を計画したんだわ」

敬子の話を聞いてクーモも考え込んだように頷いた。

「だけどね、あなたも彼女も一冊を選ぶ事に時間を使い過ぎたのよ、だから本を読んでいても時間だけが過ぎてしまって時代に即した言葉に対応が出来なくなっていったんだわ。

クーモが最初に言っていた” 意味が解らない“といった疑問はきっと彼女も同じだったんじゃないかしら、さっきクーモがスーパーモデルの意味が解らないと言われた時にそう思ったんだけど、その言葉自体が最近の言葉だからクーモにしてもリリィにしてもその言葉が出てきた時にいったいどう言った意味の職業なのか解らないまま読み過ごしてしまったのではないかしら」

そう敬子に説明されてクーモも納得したように頷くばかりであった。


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いい加減歩いた頃だろうか突然クーモが振り向き敬子に話しかけてきた。

「あそこだよ、あの棚の向こうに積んであるんだ」

嬉しそうにクーモは棚を指差し敬子に向かって叫んだ。

(ハア、やっと到着か・・流石に500個分の棚を左右に見て五キロちかくを歩くと大そう疲れる、といった感覚が戻って来るな、これって錯覚かな?)

そう思い敬子はクーモが指差す棚へ向かった。

一足先に到着していたクーモは微動だにする事なくその場に立ち尽くしていた。

「どうしたの?クーモ。」

クーモが立ち尽くしている足元を敬子が見るとそこには本など何も無くただクーモが呆然としているだけだった。

「本が無い、本が、俺がこれまで読んで良いなと思った本が一冊も無くなっている。どうしてなんだ・・・」

クーモの目には悔しさで薄っすらと涙が浮かんでいた。

「クーモ、場所が違うんじゃないの?ここはほとんど同じような景色だしもう少し先の棚の横に積んだんじゃないの?」

余りにも落ち込んでいるクーモに敬子が言葉をかけるとクーモが厳しい表情で敬子に向かって言った。

「絶対にここなんだ、俺は何度も何度も本を読んでは棚とこことの往復を繰り返していたのだから絶対に間違える訳がないんだ」

そうクーモが涙声で敬子に向かって言い切ると遥か棚の先から微かに咽ぶような声で女性らしき笑い声が聞こえてきた。

「フフフフフ」

棚の先からは最初は声を押し殺していた笑い声が馬鹿にしたかのように大きな笑い声に変わって行った。

「ワハハハハッハッハハ」

「この声はリリィだな」

今まで涙声だったクーモの顔が今度は怒りで真っ赤になっていた。

「リリィ?」

 

リリィ
クーモの他にまだ人がいる事なんてまったく思っても見なかった敬子はその笑い声がする棚から目が離せずにいた。

「出て来い、リリィ。なぜ俺の本を隠したんだ、返せこの泥棒猫」

「何ですってクーモ、もう一度おっしゃい」

棚の脇から出てきたその女性は、それは美しく金髪の巻き髪で真っ白いパジャマとガウンをまとったその姿は、敬子が知る限りまるで中世のお姫様の様だった。

そのヒステリックな言い方にさすがのクーモも一瞬たじろいだものの自分の一番大事にしていた本を隠されたのでは黙ってはいられない様子でクーモが叫んだ。

「だってそうだろ、俺の大切な本を・・返せ、リリィ」

そのクーもからの言葉を受けてもリリィの態度が怯む様子もなく逆にクーモを睨み付けた。

「あら、ここにある本がクーモの本だなんていったい誰が決めたの?言ってごらんクーモ」

そう言われるとさすがに返す言葉がなくクーモは口を噤んだ。その二人のやり取りを聞いていて横にいた敬子がリリィに言った。

「本棚にある本は自由に読んでかまわないでしょうけど横に積んだ本は誰かが故意に除けた物だって事あなたにだって解るでしょう、その本をあなたがかってにいじって良いなんて事はないわ」

そう言うとリリィが敬子を睨み付けた。

「あなた誰?見かけない顔ね・・」

少し不安そうな顔で、二人のやり取りを聞いていたクーモが横から叫んだ。

「彼女はケイコって名前なんだ、どうやら最近ここに来たようなんだ」

「ふうーん」

「ケイコ、あなたがそこまで言うのなら返してあげでもいいわよ、但し私の言うことを一つ聞いてくれたらね」

「言うこと?」

敬子とクーモはお互いの顔を見合った。

クーモの本を取り返す事だけを考えている敬子はすぐにリリィの顔をにらめ付け聞き返した。

「あなたはいったい私達に何をして欲しいの?」

そう敬子が言うと、リリィの顔は勝ち誇ったように二人に向かって難題を語り始めた。

「私はこの美しさを次の世界まで持って行きたいの、次の世界が自由で巨万の富を得たとしても女として生まれて自分の美しさを誇示出来ないなんて私には考えられないのよ!だから貴方達で私の次の世界にもっとも相応しい人生の一冊を探してもらいたいの」

「あなたに相応しい人生?」

敬子は考えていた。この人は自分では決めきれない自分の人生を一人で探すよりも三人で探したほうが早く見つかるんじゃないかと思っている。

(自分の人生なんて人が探して決められるようなものじゃないわ、でもその一冊が見つからないとクーモの本は返してもらないし、いったいどうしたら良いんだろう?)

「では、もし俺たちがリリィに持ってきた一冊が気に入らなかったらどうするんだ?」

そうクーモがリリィに向かって問いかけるとリリィは嫌味を込めた言い方でクーモに答えた。

「あなたが選んでいた本は永久に見つからないようにこの無数にある本棚の何処かに隠してしまうわ。」

そう言われてクーモの顔は悔しさとも悲しさともつかない表情でリリィを睨み付けていた。

「解ったわ。二人であなたに合う一冊をこれから探してくるからもしあなたがその一冊に納得したら絶対にクーモの本を返してあげてね」

そう敬子がリリィに言うとリリィは、ニヤリとかすかに笑い首を縦に振って答えた。