「読んで字の如くです。
心に何か強いショックを受けたことによって、声が出せなくなる症状が出るんです。」
そこでやっと口を開いたのが、陽子さんだった。
今回はきっと陽子さんの経験が力になる時だ。
「2度と声が出ないわけじゃないから、ちゃんと声が出ない原因を取り除けば、声が出るようになるんです。ただ、いつになるか分からないですけど。1週間とか1カ月で戻る人もいれば、何年もかかる人もいます。」
「陽子さん、どうしてそんなに詳しいんですか?」
そう聞いたのは、浜野結都[ゆうと]だ。いつもバカ明るくて元気なことで有名だが、今はそれは微塵も感じられず、深刻な顔をしている。
「夢人の皆さんにはまだ言ってなかったけど、学生の頃、同じ症状にかかったことがあるんです。
私の場合は、カウンセリングを受けて、1カ月くらいで声が出たんですけど。
声帯とかには問題なくて、カウンセリングも受けているのに、…10年も声が出ないってのは聞いたことがないです。しかも、この手紙からして、カウンセリングは受け終わってるも同然だし。
よっぽど、大きなショックだったんだと思います。」
「俺たちにできること、何かないんですか?」
そう言うのは、高橋拓也。普段は物静かだが、その裏にある情の篤さは誰にも負けない。
「声が出ないって言っても、目は見えるし、耳は聞こえるから、特別扱いは必要ないです。でも、理解はしてあげてほしいです。外見から判断できないから。例えば、会話かな。筆談が主な手段になると思うから、時間はかかるけど、ちゃんと裕歌ちゃんの声を聴いてほしい。」
全てを受け止めた5人は、同時に「陽子さん」と言い、そろって苦笑いをした後、リーダーの瀬川直樹が言った。
「陽子さん、これから、僕たちもこの病気のこと知っていこうと思うけど、どうしたらいいか分からなくなった時は、相談乗ってもらってもらえませんか。」
「もちろん。むしろそのために私が呼ばれたと思ってるんですけど。そうですよね、社長。」
そう振られて、ああ、と答えて言った。
「それじゃ、今から返事書くか、手書きで。いい決意表明になるだろう。」
それから、何時間もかけて、俺たちの想いがこもった手紙を書きあがった。