何も考えていなかった。というより、何かを考えている余裕が無かった。
気づくと、あの時の植え込みにいた。
あの雨の日、誰かが私に傘をくれた場所。
今、その“誰か”に会った。
あの日と同じ場所に座って、空を見上げる。澄んだ青が広がっている。
そっか・・・。sky academyの人だったんだ。
そりゃそうだよね。そうじゃないと、あんな雨の中、ここ通らないよね。
たぶん、私は彼に特別な気持ちを抱いていた。
でも、きっぱり諦められそうだ。
自分の気持ちを素直に出せない性格、想いを隠すこと消すことに慣れたことも、背中を押す。
不思議だ。
今までたくさんのことを諦めてきたけれど、こんなにすがすがしい気持ちになっているのは初めてだ。
空を見上げたまま、少しぼんやりしていると、ふと、置いてきた野村さんのことを思い出した。
立ち上がってビルの方を振り返ると、入り口の辺りで野村さんが手を振っている。
私はそれに答えて、ビルに戻った。
私にはしなくちゃいけないことがある。山ほどある。
私を支えてくれる人も、私を必要としてくれる人もたくさんいる。
だから・・・、恋をしてる暇なんて無い。
それに、こんなのただの理想論かもしれないけれど、
あの人が特別な存在だったら、またきっと、私の目の前に現れてくれる。
