すっごーい。
思わず口がそう動いた。
フロア一面に服が所狭しとハンガーに掛けられている。
ジャケットからシャツから何から何までとにかく何でもそろってる。
私と野村さんがやって来たのは、野村さんが所属する「スタジオ ステージ」の衣装ルーム。
各ブランドから借りてきた服を全部ここで保管しているらしい。
さすが一流ブランドの集まっているだけあって、色使いや形が個性的で、とにかく新鮮だった。
一着一着丁寧に見て、しっかり目に焼き付けた。
でも、何か違う。
いいものを見つけたんだけれど、何か足りない。
そんなことを思ったのが野村さんにも伝わったのか、そろそろ帰ろうかと言った。
お昼ご飯を食べて、次はショップをいくつか回った。
ここでも色使いとか着こなしとか、参考になることはたくさんあったけれど、服のテーマになるものは見つからなかった。
まあ、こんな所に転がっていたら誰も苦労しないよね。
ふと腕時計を見ると、あと少しで3時になるところだった。
今日もあの部屋でレッスンしているのかなと思うと、その風景を見たくなった。
そう言えば最近見てないな。
鞄からノートを取り出して、言いたいことを書いて野村さんに見せた。
そろそろビルに戻っても良いですか?
「そろそろそういうこと、言う時間だと思ってた。帰ろうか。」
そう言って、野村さんは車を取りに行った。
私がどこに行こうとしているのか、野村さんは勘付いているようだけれど興味津々だったので、2人であの場所に行った。
いつものように壁に隠れるようにして中を覗くと、いつものようにレッスンが行われていた。
しかし、今日は人数が違った。1人増えて4人になっている。
人数が増えても動きがぴったりで、思わず息を飲んだ。そのダンスに思わず引き込まれた。
もっと近くで見たい。いつの間にか目の前にあるドアさえ開ければ中に入れるところに立っていた。
そして、休憩時間になったのか、さっきまで真剣だった顔が緩んで、彼ら素のような顔になっていた。
そんな顔まで引き込まれた。
夢人にもこんな時期があったのかな。・・・あったんだよね。
じっと中を見ていると、4人のうちの1人と目が合った。いつもはいない彼だった。
その瞬間、体が反応してそこから逃げ出した。
その理由は、ただ単に目が合ったからだけではなかった。