ひとみに支えてもらって、やっと立つことが出来た。
そのまま靴だけ履き替えて、学校の近くの公園に向かった。
何十年もそこにあるような古い木のベンチに座っていると、ひとみが自分と私の荷物を持ってやって来た。
「お待たせ。」
そう言って、ひとみは私の隣に座った。横から私の顔をうかがうようにして言った。
「図書館で文化祭の準備してて、たまたま外見てたら、裕歌がみなみ達に囲まれてて・・・。
急いで駆けつけたんだけど、間に合わなかった。・・・ごめん。」
私は何度も首を振った。今、ひとみに謝られたら私が困る。
そして、今度は眼下に広がる町並みか、相変わらずどんよりしている空に視線をそらした。
「どこから話せばいいかな。
2週間くらい前に裕歌がアルバム製作スタッフに選ばれたって話してくれたことあったでしょ。
あの次の日、みなみ達に呼び出されて・・・。ごめんね、全部話しちゃった。
このこと誰かに話したら、次は裕歌に手を出すって言われたから、裕歌に言えなかった。」
私は泣きたいのをこらえて、ケータイを取り出した。
こっちこそ、我慢させてごめん。辛かったよね。
殴られたりしなかった?
「それが最初に一発顔に平手打ちだけ。
腫れもそんなに目立たなかったから、2、3日でひいたから、大丈夫だよ。
むしろ、その後の言葉の方がひどかった。
手を出したら人にバレるじゃん。でも、心は傷ついても見えないじゃん。だから、容赦なかったよ。 」
ひとみはいつものように笑って言った。
何も言えなかった。
大丈夫なわけないじゃん。
言葉の暴力が体の暴力の何倍辛いか、私が知らないわけないじゃん。
そんなこと、気を使ってもらった私は言えなかった。
私の心には、ひとみに辛い思いをさせたこと、その辛い思いを隠してわざと明るく接してくれたことへの罪悪感が生まれた。
ひとみは関係ないのに。みなみ達が傷つけたいのは私なのに。どうしてひとみに手を出すの。
これ以上、ひとみに辛い思いをさせたくない。ひとみを守りたい。
だから、お願い。せめてもの罪滅ぼしをさせてほしい。
私がこうすることで、ひとみの気持ちが少しでも楽になりますように。
鞄の中からルーズリーフを取り出して、ペンを動かした。
四つ折りにしてひとみのひざの上に置いて、私は駆け足で帰った。
もうあたしにかまわないで。
友達、やめよう。