裕歌の話を聞いて、俺自身も気持ちの整理がつかなかった。
1つ1つ裕歌が言葉を語っていくに連れて、一粒一粒落ちる涙がその文字を濡らしていった。
俺の肩にも届かない小さな体で、こんなに大きくて重たいものを隠していたんだ。
何を言っても大丈夫だと言って、いつも笑っていた。
大丈夫、大丈夫と言う人ほど、実は大丈夫じゃない。
笑いは苦しみや辛さも隠すことが出来る。
どうして何も気づけなかったんだろう。
考えても考えても何ができるのか分からなかった。
ただ背中をたたいてやることしか俺はできなかった。
裕歌が落ち着いて会議に返した途端、俺の目にも涙があふれてきた。
俺は人を幸せにする仕事をしているのに、こんなに身近にいる人ひとり幸せにすることが出来なかった。
部屋の中には外で降っている雨の音が響いていた。
しばらくたって、裕歌の様子を見に行くことにした。
ついでに、裕歌が置き忘れたくさんの言葉が紡がれたノートを届けに行こう。
あんなことがあった後だけど、裕歌は元気にやっているのだろうか。
しかし会議室のドアを開けても、そこに裕歌の姿は見えなかった。
「陽子さん! 裕歌ちゃんどこ!?」
「びっくりしたじゃないですか、社長。
裕歌ちゃんなら社長のところに行ってから、まだ戻ってきてないですよ。」
「そんなことない。30分前には返した。戻ってないはずがない。」
気が付くと、会議室が静まり返っていて、俺の荒げた声だけが響いていた。
「一体何があったんですか?社長。」
俺は左手に持っていたノートをみんなに見せた。
ページをめくるたびに、みんなの表情が険しくなるのが手に取るように分かった。