あれから1カ月。私は、昼は勉強、夜はアルバム制作という、忙しいけれど充実した毎日を送っていた。
sky academyに言われたからでもあるけど、私が夢人のアルバム制作スタッフに選ばれたことは、家族以外には誰にも言ってない。
もちろん、学校の友達にも言ってない。
もし言ったら、あの子たちがどんな行動をとるか分からない。
同じ学年にも夢人のファンが大勢いる。そのなかでも、佐藤みなみはかなり苦手な存在だ。
彼女のグループは人数も多くて、その中にも苦手な子が多い。
しかも、相手側も私のことを嫌っているらしい。
でも、ひとみにだけは伝えておきたかった。ひとみになら言っても秘密にしてくれると思った。
いつものように、夕陽に照らされた帰り道で話を持ち出した。
実はさ…選ばれちゃったんだよね
夢人のアルバム制作スタッフ
「マジで!?」
やっぱり驚かないわけないよね、と思いながら、またケータイを打つ。
お父さんが勝手に送っててさ
興味なかったわけじゃなかったのと
両親の何でも経験させたい方針が一致したわけよ
「うらやましいな。仕事、大変?」
最初は大変どころじゃなかった
1カ月たって やっと慣れてきたって感じ
「ふぅーん。まあ、頑張ってよ。裕歌なら良いのできるよ。」
そう言って笑ってくれた。
ひとみが友達で良かった。いつでもひとみはそうやって応援してくれるから。
もっとも、そんなこと恥ずかしくて言えないけど。
それからお願いなんだけど
私が選ばれたこと 誰にも言わないで
あの子たちに知られたら 恐いし
「分かった。…ってか、そのつもりだよ。」
手話で“ありがとう”ってしたら、ひとみの照れ笑いが返ってきた。
こんな平凡だけど穏やかな毎日がずっと続けばいいのにな、と思った。
でも、そうはいかないのが人生だ。