はじめに
みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、ついに百鬼夜行シリーズ本編の最新刊「邪魅の雫」です。「姑獲鳥の夏」から始まったこのシリーズも、最後となってしまいましたが、どうぞお付き合いください。
「邪魅の雫」京極夏彦(講談社)
榎木津に持ち上がった縁談が、ことごとく先方から断られる、という相談を彼の親類から持ちかけられた益田は、榎木津に秘密で調査を始めることを決意する。その矢先に、次々と発見される毒殺死体。彼らの見えない関連とは。
読み終わった直後は、言葉を失ってしまった。それからしばらくは、口を開けば「百鬼夜行シリーズ面白かった……」しか出てこなかったほどである。それくらい、特に後半の巻の方には熱中してしまった。それこそ、百鬼夜行シリーズの魅力に取り憑かれてしまった、と言っても良いかもしれない。
今回は、とにかく榎木津が良かった。普段が変人すぎるので意識しないが、まともにしゃべるとこんなに好人物なのか、と目を開かれる思いだ。また、京極堂も関口の相談に乗ってやったり、最後の方の活躍だったりと、優しさがかいま見える。特に、最後の場面にはうならされた。京極堂、榎木津、そして関口と、口では不平を言いながらも、底には長年馴染んだ安心感が流れているのかもしれない。
ちなみに、どうも絶世の美貌はギリシア彫刻に例えられる傾向が強いようだが、私の人生に介入してきた場合は引っかき回される恐れが多すぎるので、早急にパルテノンかどこかの神殿にお帰り願いたいところである。だが、実際の人を見て「ギリシア彫刻並の美貌だ……」と思うことはテレビの向こうでも皆無なので、今のところその心配はない。その代わり、本の中でそうやって描写されている登場人物は、私の中でどんどん美化されているような気がする。
ここまで書いてきたが、面白すぎて思ったことを上手くまとめられないので、早急に手元に揃えてもう一度落ち着いてから再読したい。言語化ができなくなってしまった。初めて上橋菜穂子さんの「精霊の守り人」を読んだときの衝撃を思い出す。自分の好みを突き抜けた作品は、貧弱な私の語彙をことごとく奪っていってしまうようだ。
おわりに
この勢いのまま外伝に行きたいところですが、百鬼夜行シリーズを読むために他の図書館の本を置いてけぼりにしてしまい、返却期限が迫っているので、次回はそういう本の中から一冊選びたいと思います。次回もお楽しみに。最後までご覧くださりありがとうございました!