はじめに
みなさん、こんにちは。本野鳥子です。本日二回目の投稿となりますが、今回は「なんでもわかるキリスト教大事典」についてです。
以前、キリスト教方面の文学ということで、遠藤周作さんの「沈黙」とサリンジャーの手になる「フラニーとゾーイー」を読みましたが、そこでふと気づいたんですね。自分のキリスト教に関する知識が、偏っていることに。プロテスタントの一部である、カルヴァン派のプレスビテリアン・長老派については、それなりに知っているのですが、他の教派についてはほとんど分かっていませんでした。キリスト教に関する知識が得られる本を読みたいな、と思い、これを手に取ったわけです。
それでは、複雑なキリスト教の世界を、ちらっとのぞきこんでみましょう。
「なんでもわかるキリスト教大事典」八木谷涼子(朝日文庫)
欧米の歴史や文化に多大な影響を与えてきたキリスト教。それなしに、欧米を理解することはできない、と言われるほどである。そんな長い歴史を持つ宗教について、筆者が徹底的に解説する。
今、世界で一番信者数が多いのは、キリスト教である。日本に生きていると、一つの宗教としてキリスト教を見ることが多いが、実はその中には多様な教派がある。教派ごとの理解を深めることで、キリスト教全体の認識を改めることができる本だった。
一番印象的だったのは、救世軍である。軍隊式の序列があるというユニークな仕組みもそうだが、それによって行動力がある教派として名が挙がることも面白い。現実世界の軍といえば、あまりいい印象は抱けないが、このようにして活動しているのを見ると、一概に否定できないものであることも確かだと思った。宗教と軍隊という、一見相反しているようにすら感じられるものの融合というのは、発想になかったので、面白い。
キリスト教は、信徒の数を増やしていく中で、様々な分裂も経験してきている。中でも代表的なのは、ローマン・カトリックとギリシア正教の分裂、そしてローマン・カトリックの中で起こった宗教改革だろう。また、その宗教改革の中で生まれたプロテスタントの中にも様々な教派が存在する。これだけで頭もこんがらがってくるが、更に正教にもいろいろな考え方があり、その他にもカトリックとプロテスタントの中道を行く聖公会……などなどがくれば、もう分からない。これを読んで、ようやくそういうのがあるんだな、と認識できた程度である。
そもそも、人の考え方を統一することなど、可能なのだろうか、とすら思ってしまう。例えば、私が一番馴染みのあるプロテスタントを例に挙げてみよう。
「はじめに」で書いた、長老派がある。これは、カルヴァン派であり、宗教改革で生まれたプロテスタントの中の一つである。しかし、宗教改革で生まれたのはカルヴァン派だけではない。カルヴァンよりももっと有名なのは、ルターだと思う。マルティン・ルターだ。彼の思想に従った派を、ルター派という。この二つは、同じプロテスタントでありながら、この二つには違いが多々ある。
また、同じ教派に属していても、全く同じ価値観の人間などいない。聖書を読む目も、自然と変わってくるし、その結果解釈にもばらつきが出るのは仕方ないことだ。
つまり、人の見解を統合することなど、所詮不可能なのである。歩み寄りはできても、全く同じにすることなどできない。できるとしたら、それは歩み寄りの結果ではなく、支配だ。少なくとも私はそう思った。
おわりに
というわけで、なんだかまとまりのない文章になってしまいましたが、「なんでもわかるキリスト教大事典」についてでした。でも私、神話としては多神教の方が好きなんですよね。読み物として、そちらの方が圧倒的に面白いと思うのは私だけでしょうか。
さて、次回は、今読み進めている「馬・車輪・言語」という本についてです。言語学と考古学の研究結果を合わせる試みですね。それでは、またお会いしましょう。最後までご覧いただき、ありがとうございました!