はじめに

 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、銀河英雄伝説の再読、7巻です。初回からご覧になる方はこちらから。ネタバレ避けておりますが、未読の方はご注意ください。それでは今回も、英雄たちの華々しい軌跡を追いかけましょう。

 

「銀河英雄伝説 7 怒濤篇」田中芳樹(創元SF文庫)

 穏やかに過ごせるはずだった退役生活は水泡のように消え、ヤンは再び銀河を巻き込む歴史の渦中に投げ出されることとなる。地球から帰還したユリアン一行や、政府の指令によって辺境に配属されていたムライたち、得られるはずだった高い地位を蹴ったキャゼルヌなど、元第十三艦隊の面々が勢揃い。「不正規隊」を結成し、滅亡の淵にある民主主義を守ろうと試みる。フェザーンの独立商人たちと手を結ぶためにも、イゼルローン攻略は不可欠なものとなっていた。

 

 ヤンの奇策は今回も華麗だ。本来は暗いはずの謀であるのに、一種の明朗ささえ兼ね備えており、読者は誰もがうきうきしてしまうに違いない。だが、相変わらずそんな策士の名に似合わず、よく言えば優しく、悪く言えばふらふらしているヤンには、好感を抱かずにはいられなかった。

 

 ラインハルトは最初の方が好きだったと思ってしまうのは私だけか。ジークフリード・キルヒアイスは、ここまで来てもまだ重くのしかかってくる。そうして、確実に銀河の歴史は動くのだ。

 

 身を隠したトリューニヒト。同じ策士でもヤンとは全く異なり、何やら企んでいる彼には、憎悪を禁じ得ない。物語の終盤に向け、どんどん作品の曲調は暗くなっているような、そんな感触さえ覚える。

 

 それにしても、銀河英雄伝説のファンの方々は、このように終盤に向け重苦しくなっていく銀英伝を、結末を知りながら何度も読む、あるいは見るという矛盾をどうやって打破しているのか。実は、みなさんも私のように、矛盾を打破し得ていないのかもしれない。己の中に矛盾を抱えたまま、それでもこの輝かしい作品にとりつかれて、何度も見ざるを得ないのかもしれないと思うと、銀英伝の魅力には抗いがたいものがあるといえよう。

 

 ところで、この作品の感想記事はもっと早く書こうと思えば書けたのだが、そうしなかった、いやできなかった。なぜかといったら、8巻を開くのをできるだけ先延ばしにしたかったのである。だが、この記事を書いた以上は、その時間も終わりにせねばならない。8巻だけは深夜に読むに限る、と私は以前の経験から学んだのだ。

 

おわりに

 というわけで、次回は銀河英雄伝説8巻です。最後までお読みいただきありがとうございました。