はじめに

 みなさんこんにちは、本野鳥子です。今回は、前回に引き続き、十二国記の再読をしていきたいと思います。短編集「丕緒の鳥」に収録されている表題作、「丕緒の鳥」についてです。十二国記の再読の初回はこちらネタバレがありますので、未読の方はご注意ください。それでは、今回も十二国へ、旅をすることにいたしましょう!

 

「丕緒の鳥(「丕緒の鳥 十二国記 5」所収)」小野不由美(新潮文庫)

 儀式で使われる陶鵲を考える羅氏中の羅氏として、慶の王宮に務める丕緒。しかし、悧王の時代から百年以上羅氏を務めていた彼も、三代にわたる目まぐるしい女王の交代に倦んでいた。さらに、予王の横暴によって相棒のような存在であり、実際に陶鵲を作っていた羅人である蕭蘭を失う。それからは、官邸に閉じこもって無為な日々を送っていた。新王の即位により、再び陶鵲作りに手をつけるのだが……。

 

 予王の横暴が、ありありと分かる短編。今までは、間接的だったものが、この短編では間近に描かれる。姿を消した蕭蘭の、かつての意志を追い求める丕緒の姿に、胸が痛い。蕭蘭の弟子として工手を務めており、今では蕭蘭に代わって羅人となった青江の悲しげな様子が目に浮かぶようで、慶がいかに荒廃していたかが、手に取れるように伝わってきた。

 

 しかし、蕭蘭の心を追いかけるようになると、丕緒も陶鵲作りの喜びを取り戻す。青江と二人で頭を寄せ合いながら、美しい陶鵲をつくっていく様子は、ものづくりの楽しさを感じさせた。

 

 そして、ついに丕緒の陶鵲が、空に舞う。その繊細で儚く、綺麗な情景に、息を飲んだ。鵲に民を見た丕緒の意思は、新王にも伝わる。

 

 景王陽子。彼女の始まったばかりの治世に、丕緒が希望の光を見いだしたことが、嬉しかった。

 

おわりに

 というわけで、少し短いですが、「丕緒の鳥」についてでした。次回は、同じく短編集「丕緒の鳥」に収録されている、「落照の獄」です。お楽しみに。