はじめに

 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、ヘロドトスの「歴史」についてです。ペルシアとギリシアの各都市国家の、長きにわたった争いを描いた作品です。紀元前のギリシアとペルシアへ、いざ参りましょう!

 

「歴史」ヘロドトス(岩波文庫)

 岡田英弘さんの「世界史の誕生」 「歴史とはなにか」や、塩野七生さんの「ギリシア人の物語」などで、名前が頻出することから気になって手にとった。さすがに長い。そして人名や地名などの固有名詞がカタカナで長くて読みにくい……と最初は眉をしかめて読んでいたが、さすがにクセルクセスの代まで来るとそれにも慣れて、なかなか面白く感じられるようになっていた。序盤に耐えて良かった、と読み終わった今では心から思う。古代の人々の価値観は、現代の私からすればなかなか受け入れがたかったり、逆に妙におかしかったりと、改めて価値観というものはいくらでも変わりうるものだということを突きつけられた。

 

 戦場の描写などを抜きにすれば、一番印象に残っているのは、エジプト人が世界で初めて生まれた民族を突きつけようとしてやったことだ。生まれたばかりの赤ん坊を山羊の中において、他の人間のしゃべる言葉に触れさせないまま育てる。その赤子が、最初に話した言葉によく似た言語を話す民族が、世界で一番古いとして、実際にやってみたらしい。妙に筋が通っているので、思わずくすりと笑ってしまった。確かに合っていないこともないが、現代では絶対通用しない理屈だ。

 

 マラトンの戦いや、サラミスの海戦、テルモピュレーなど、いくつか実際に戦っている描写もあるが、意外とさらりと済ませているのも面白い。そこに至るまでの経過が丁寧に書かれていて、ときには

余談にわたるが、本書は余談にわたることを目的としているので

 といったようなことわりまで入れてくるくらいだから、笑わずにはいられなかった。非常にヘロドトスという作者に好感が持てる。

 

 それから、クセルクセスのサラミス・テルモピュレーに挑む前の家来との問答も印象に残った。彼は、ギリシア人にむやみに攻撃をしかけることは身の破滅を招きかねない、として慎重論を唱える家臣を一顧だにしない。むしろ、臆病だと言ってろくに聴こうともしないのだ。もちろんヘロドトスはこの箇所をあえて挿入したのかもしれないが、それにしてもなかなか真実をついた描写ではないだろうか。マキアヴェリの「君主論」が思い出される。本当に優れた君主になり、そしてそれで居続けることの難しさを感じさせた。

 

 上中下巻に分かれていて、途中で何度も諦めようと思ったが、意地で読み通して良かった。他にもこのような一次史料を読んでみたい。

 

おわりに

 ということで、「歴史」についてでした。やはり自分の知識不足を痛感させられるところですね。さて、次回は、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」になることと思います。どうぞお楽しみに。それでは、最後までご覧くださり、ありがとうございました!