こちら↑の記事に引き続いて、2024年オーストラリア児童図書賞高学年部門の優秀作品リストをご紹介します。



Nightbirds (Nightbirds #1)
by Kate J. Armstrong


血の中に魔法が流れる「大いなる家」の少女たちは「夜の鳥」と呼ばれ、その魔法をキスで他者に分け与えられるという特殊な力を持っている。魔法、ことに女性が使う魔法は違法で、もし見つかれば街の宗教家たちによって火刑にされてしまうだろう。でも「大いなる家」に守られていれば、夜の鳥たちはしっかり警護された宝物でいられる。
今年の「旬」には、マチルダ、アイサ、セイヤーは大金を払った顧客にその魔法を分け与える夜を過ごす。「旬」を過ぎれば、彼女たちは「大いなる家」の貴族と結婚して母になり、力を失う前に次の代の夜の鳥を産む。でも、3人には別の計画があった。

アメリカ生まれオーストラリア在住の元高校教師で新人作家ケイト・J・アームストロング(Kate J. Armstrong)のデビュー作品。シリーズ1作目。ちょっと「グレイス・イヤー」っぽいかな?

 

 

 

 

One Song: Sometimes a Song Presses Pause on the World
by A.J. Betts


作曲が好きでミュージシャン志望のエヴァはコンテストに3回落選したことで自信を失ってしまい、もう夢をあきらめて高校を卒業することに集中しようと気持ちの整理をつけた。でも音楽仲間で昔からの片思い相手クーパーに説得されて、助っ人とともにもう一度挑戦することに。
ではバンドを紹介しよう。メタルドラマーのメロウ、とんでもなく頑固なベースのルビー、カリスマロックギタリストのクーパー、そしてインディーズのフォークシンガー&ソングライターのエヴァだ。舞台裏にはドキュメンタリー作家の卵ミムがいて、リハを撮影する。
音楽以外は何も共通点のない5人は成功できるのか?

「ブレックファストクラブ」のようで音楽ドキュメンタリーのようで青春物語でもある作品だそうです。オーストラリアのYA作家A・J・ベッツ(A.J. Betts)の作品。面白そうですが日本Amazonにはないようです。著者の公式ウェブサイトを貼っておきます。

 

 

 

 

Picasso and the Greatest Show on Earth
by Anna Fienberg


フランシスは新しい土地の新しい家に住み新しい学校に通いはじめたが、たくさんの「新しい」が彼女の心が引きずる古い悲しい秘密をを忘れさせてくれることはない。自分で描いた詳細なバクテリアの絵も、柔らかい長い耳を持ちマトみたいなかわいい黒い丸がおなかにある子犬のピカソもだ。
そしてフランシスは、背が高くて2色の瞳を持つ少年キットに出会った。彼は本物の芸術家で、クロッキー帳は色鉛筆の絵でいっぱい。岩にも植物にも空にも魅惑的な驚異を見出せる。でもキットもまた自分の不安を抱えていて…

オーストラリアのYA&児童書作家アンナ・フィーンバーグ(Anna Fienberg)の作品。

 

 

 

 

Stuck Up & Stupid
by Angourie Rice & Kate Rice


静かな海辺の町ピッピ・ビーチはその夏、若手ハリウッドスターとインフルエンサーの一団がやってきて大揺れになった。地元住民の大半と一緒にリディアはわくわくしていたが、そのティーンの娘リリーは、ハリウッドの人間、中でもいちばん有名なドリアン・カーンが表層的で傲慢な奴だと気が付いた。
LAでの休日に家族の友人で野心家の俳優ウィルソンの家に滞在することになったリリーは、映画プロデューサーに紹介され、ドリアン・カーンにも再会する。

オーストラリアの小説家で劇作家ケイト・ライス(Kate Rice)とその娘で映画「スパイダーマン」(トム・ホランド版)シリーズなどに出演しているオーストラリアの女優アンゴーリー・ライスの共著によるYA小説。オースティンの古典「自負と偏見」を現代が舞台の青春物語にアレンジした作品のようです。

 

 

 

 

The Isles of the Gods (The Isles of the Gods #1)
by Amie Kaufman


サリーの身体には血のかわりに海水が流れている。だから父親にカークプールの港に置いていかれてしまうと、彼が北方の海を航海しているあいだの冬を乗り切れる気がしなかった。でも父を追いかけようという計画は、魔法使いのしるしを腕に持つ青年に船を乗っ取られて打ち砕かれた。彼はアリノール王国のレアンデール王子。誰にも知られずに三日月海を渡り、「神々の島」で儀式を行うという危険な任務の途中だった。

「イルミナエ・ファイル」のエイミー・カウフマンによるファンタジー作品。シリーズ1作目。

 

 

 

 

The Quiet and the Loud
by Helena Fox


ジョージの人生は騒がしいが、上の世界も下の世界もすべてが静まり返る水の上では、彼女は穏やかで静かになれる。でも疎遠だった父さんが話があるといってきて、ジョージの過去が目を覚まし、彼女の足首をとらえて水中に引きずり込もうとしはじめた。
沈んでいる暇はない。親友のテスはもうすぐティーンで母親になるし、友だちのラズは気候変動に絶望している。おじいちゃんはジョージがいないと入れ歯を置き忘れてしまうし、ふたりのママは家を騒ぎとおしゃべりで満たしている。

友情と家族と許しとトラウマと愛、そして絶望的で希望に満ちたこの世界についての物語。オーストラリアのYA作家ヘレナ・フォックス(Helena Fox)の作品。

 

 

 

 

The Sinister Booksellers of Bath (Left-Handed Booksellers of London #2)
by Garth Nix


ほんの少し現実世界とずれた1983年のロンドン。スーザン・アークショウは一度も会ったことがない父親を探している。犯罪組織のボス・フランク・スリングレイの手を借りることができたかもしれないが、スーザンが何か頼む間もなく、彼は魅惑的なマーリンによる銀の針の一刺しで塵に変えられてしまった。
マーリンは若き「左利き」の書肆。彼らは「右利き」の書肆たちとともに魔法使いの家族をつくり、書店を経営しながら魔法と伝説の世界「旧世界」が現代に食い込んでくるのを防いでいる。

「古王国記」のガース・ニクスによる戦う魔法の本屋さんさんが登場するパラレルワールド80年代イングランドが舞台のファンタジー。シリーズ2作目。(上のあらすじは1作目のものです)「左利き(レフトハンデッド)」の書肆は戦う書店員で、「右利き(ライトハンデッド)」の書肆は知性の書店員という設定のようです。

 

 

 

 

This Time It's Real
by Ann Liang


運命の恋人との出会いを綴った記事が思いがけずネット上でバズり、17歳のエリザ・リンの人生は一夜にして変わった。入学したばかりの北京のインターナショナルスクールではクラスメートに賞賛され、大好きな雑誌社へのインターンシップで将来のキャリアも見えてきた。それで隠さなければならない巨大な秘密ができた。
エリザの記事は創作。今まで誰とも付き合ったことはなく、恋とは縁がない。優れた創作とはすなわち嘘をつくことだ。
なにがなんでも真実を隠したいエリザは、同じクラスにいる有名俳優でイケメンで、でも冷たいカズ・ソンと取引をした。入試のための文章の書き方を教えるかわりに、カズに架空の彼氏のふりをしてもらう。

中国系オーストラリア人のYA作家アン・リャン(Ann Liang)の作品。

 

 

 

 

Two Can Play That Game
by Leanne Yong


サム・コーの人生の目標はひとつ。かっこいい自主制作ゲームを作ること。彼女はその夢を実現するためならなんでもするつもりだ。大学への奨学金をドブに捨てることも含めて。必要なものはたったひとつ、ゲームデザインのワークショップに行って自分のキャリアをスタートするための激レアチケットだけ。
だからジェイセン・チュアに汚い手段で最後のチケットを獲られると、サムにはもう選択肢がなかった。戦争だ。
マレーシア系コミュニティのゴシップ網の使い方を知っているサムは、ジェイセンに最後通牒を突きつけた。チケットを賭けて自分とクラシックなTVゲームでタイマン勝負をするか、不正をみんなに暴露されるか。

アジア系ゲーオタ少年少女の青春ロマンスコメディ。マレーシアとシンガポールにルーツを持つアジア系オーストラリア人の新人作家リアン・ヤン(Leanne Yong/楊麗賢)のデビュー作品。

 

 

 

 

We Could Be Something
by Will Kostakis


ハーヴェイのふたりのパパは破局しつつある。その可能性はしばらく前からあったが、それでも急な話だった。今はハーヴェイはシドニーで生活を再スタートしたところで、カフェの二階でよく知りもしない親戚のギリシャ人大家族と一緒に暮らしている。
ソティリスは17歳の新進気鋭の小説家で、すでに小説を出版するという夢を達成した。そのキャリアが躓いたときに、キュートで冗談好きの書店主ジェムに出会った。
ハーヴェイとソティリスの物語は、ダーリングハーストの同じ通りへと向かう。

オーストラリアのYA作家ウィル・コスタキス(Will Kostakis)の作品。

 

 

 

 

We Didn't Think It Through
by Gary Lonesborough


16歳のアボリジニの少年ジェイミー・ラングトンはダルトンベイにドーンおばさんとボビーおじさんと一緒に暮らしていて、暇な時間は友だちのダリーとレニーと一緒に遊ぶ。マーク・キャシディとその白人の仲間たちは、ジェイミーと友人たちをいじめるあらゆる機会を逃さない。
レニーがシドニーへ引っ越す前のこの町での最後の夜、また人種差別的ないじめを受けた後、3人は仕返しにマークの車を盗んで乱暴に乗り回して捨てた。
その結果、ジェイミーは少年司法制度の中で自分自身と、友人、家族、自分の将来との関係を修復することになる。

アボリジニのユーイン族(Yuin)のYA作家ゲイリー・ローンズボロウ(Gary Lonesborough)の作品。

 

 

 

 

以上です。
低学年部門についてはまた後日。