こちら↑の記事に引き続いて、2024年カーネギー賞のロングリストをご紹介します。


Wild Song
by Candy Gourlay


1904年。ルキはフィリピンの山地で部族の一員として暮らしていた。今や彼女は成長し、妻や母になることを望まれている。嫁ぐよう言われた相手は親友のサムカッド。彼のことは好きだが、ルキは戦士になるという夢をまだあきらめられないし、結婚はしたくない。だから部族に届いたセントルイス万博参加の打診を引き受けて、アメリカへ行くことにした。
でもアメリカでは真剣な儀式を見世物にされ、自分たちは対等な人間ではなく展示品として扱われていると気がついた。

イギリスで活動するフィリピンの作家キャンディ・グーレイ(Candy Gourlay)の作品。
2024年ネロ文学賞児童書部門ショートリスト作品。

 

 

 

 

Boy Like Me
by Simon James Green


1994年。セクション28(※自治体や教育現場が「同性愛を助長する」ことを禁じた当時のイギリスの法律)のおかげで、学校ではゲイの恋愛に言及できない時代。
でも学校の司書が図書館にある無害を装った小説「グレートブリテンの野の花」にジェイミーを導いてくれた。そこに書かれていたのはジェイミーが持つのととそっくり同じ、男子が男子に惹かれることへの戸惑い。そしてその本を借りているのはジェイミーだけではなかった。
ページの余白を使ってもうひとりの誰かとメッセージのやりとりをはじめたジェイミーは、自分はひとりじゃないし、愛を見つけられるかもしれないと信じられるようになっていく。ところが秘密の本が校長に見つかってしまい…

イングランドのYA作家サイモン・ジェイムズ・グリーン(Simon James Green)の作品。

 

 

 

 

Safiyyah’s War 
by Hiba Noor Khan


パリの街に戦火がやってきて、サフィヤの人生は変わってしまった。親友は家族と一緒に逃げ、サフィヤは空爆で自分が住むモスクを去らなければならないかもしれないと不安になった。秘密のレジスタンス活動をしていた父がナチスに連行されると、街での危険な任務はサフィヤに任されることになった。何百人ものユダヤ人が隠れ家を探してモスクに来たのは最近のことだ。サフィヤはパリの地下のカタコンベに入ってユダヤ人たちを安全に導く勇気を持てるか?

第二次世界大戦中に1600人のユダヤ人を匿ったパリの実在のモスク「グランド・モスケ・ド・パリ」の物語をもとに書かれた歴史フィクション。パキスタン系イギリス人の作家ヒバ・ヌール・カーン(Hiba Noor Khan)の小説デビュー作品。
現在2024年ブランフォード・ボウズ賞ロングリスト。

 

 

 

 

Steady for This 
by Nathanael Lessore


ショーン(またの名をMCグロウル)はラッパー志望の少年。親友シャンクスと一緒に最高のbarsとsmashをラップの大会「ラップトロジー」に持っていく準備ができている。そうしたら今度こそ片思い相手のタニーシャもチャンスをくれるはず。
ところが練習動画の配信をミスって、グロウルの汚い洗濯物が文字通り世界に公開されてしまった。ネットでバズるという夢をついに叶えたわけだ。良い意味ではなく。
今やタニーシャはこっちを見てもくれないし、学校のネタとなり、「ラップトロジー」に顔を出すのも無理だ。この危機から抜け出すことはできるのか?

イギリスの新人YA作家ナサニエル・レソール(Nathanael Lessore)のデビュー作品。barsとsmashはたぶんヒップホップ用語かと思うんですが、違ったらすみません。
現在2024年ブランフォード・ボウズ賞ロングリスト。

 

 

 

 

The Swifts: A Dictionary of Scoundrels (The Swifts #1)
by Beth Lincoln, Claire Powell (Illustrator)


スウィフト家の子どもたちは、生まれたその日に一族の神聖なる辞書の前に連れていかれ、そこから単語を選ばれて運命にふさわしい名前を与えられる。
親戚一同の集まりで、姉さんのフェノメナ(現象)とフェリシティ(至福)と一緒に古く大きなスウィフト館にやってきたシェナニガン(愚鈍、いたずら)・スウィフトは、ならず者の見本市のような親戚たちに会うのを楽しんでいた。ところがシャーデンフロイデ(悪意の喜び)おばさんが何者かに階段から突き落とされて死んでしまった。
仲良くなったいとこのエルフ(誤差関数)と姉さんたちと協力し、シェナニガンは犯人を見つけようとする。

珍名一族が登場する児童書ミステリのようです。イングランドの新人作家ベス・リンカーン(Beth Lincoln)のデビュー作品。シリーズ1作目。
2024年ネロ文学賞児童書部門受賞作品。現在2024年ブランフォード・ボウズ賞ロングリスト作品。

 

 

 

 

Dogs of the Deadlands
by Anthony McGowan
【死の森の犬たち/アンソニー・マゴーワン/尾崎愛子訳/岩波書店】


1986年、チョルノービリ(チェルノブイリ)。ナターシャの世界に終わりが来た。夜中に家から避難させられ、彼女はいつ戻れるかもわからないまま、飼い犬を置いて行かなければならなかった。
時が経ち、廃墟になった原発の影の中で成長した犬の兄弟ミーシャとブラタンは強く速く生きるすべを学ばなければならなかった。鋭い牙と爪、黄色い目を持った怪物たちが、生い茂った森の中に潜んでいて、彼ら兄弟のすべての行動を見ているのだ。

「荒野にヒバリをさがして」でカーネギー賞を受賞しているアンソニー・マゴーワンの新作。80年代、原発事故後のチョルノービリを舞台にした動物小説のようです。岩波書店から来月邦訳刊行予定です。

 

 

 



Tyger
by S.F. Said, Dave McKean(illustrator)


アダムはロンドンのごみ箱の中でとんでもないものを見つけた。謎めいて神話的な魔法の動物。虎だ。その虎は危険の只中にあった。アダムと友だちのゼイディーは虎を助けようと決めた。でも危機にあるのは虎の命だけではない。全世界に破滅の危機が迫っている。彼らは手遅れになる前に自分の能力を使うすべを学べるのか。

「バージャック」のS・F・サイードの作品。

 

 



Ravencave
by Marcus Sedgwick


ヨークシャーでの休日に、古い農場の廃墟をうろついていたジェイムズは、壁のあいだで響く奇妙な笑い声を耳にした。現れた少女の幽霊はジェイムズについてくるよう言ったが、最初は怖くて無理だった。
ふたたび彼女に出会ったときは、ジェイムズは彼女について行った。だが、彼女が見せる恐ろしい真実にジェイムズは向かい合うことができるのだろうか。

「エルフとレーブン」シリーズなどで知られる、昨年亡くなったイギリスの実力派YA作家マーカス・セジウィックの遺作のゴースト・ストーリー。

 

 



Greenwild (Greenwild #1)
by Pari Thomson


11歳のデイジーは逃亡中だ。大きな秘密を抱えていた母さんは失踪してしまった。彼女を探し出すのは自分しかいないとわかっていた。ただし、ロンドン中を探してデイジーを追い、彼女が真実を解き明かすのを止めようとしている何者かがいる。安全な逃げ場を求めて謎めいた隠し扉をくぐったデイジーは、ロンドンから緑の魔法が実在する異世界グリーンワイルドへ行ってしまう。

ペルシアとイギリスにルーツを持つイギリスの新人児童書作家パリ・トムソン(Pari Thomson)のデビュー作品。シリーズ1作目。
現在2024年ブランフォード・ボウズ賞ロングリスト。

 

 

 

以上です。